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呪いをかけられ婚約破棄をされた伯爵令嬢は仕事に生きます!なのに運命がグイグイ来る。  作者: みなみのうさぎ


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54/63

54 食堂名物

「あのキリアンという男なんだけれど。俺そういえばアイツのこと知ってたわ」


 そういったのはトリスタンであった。


 オランジェリーでの捕物の後、キリアンと偽物騎士そしてアルフォンスを王宮の守衛たちに渡し、ダミアンことリリーとトリスタン、ジョージの三人は城下町の食堂へ来ていた。


 机の上には平べったいパンの上に細かくちぎった肉とチーズを載せ焼いたものがつまみも兼ねて木製の更に乗っている。


「あいつさ、家格はたいしたことないのにやたらとご令嬢に高いものを貢ぐって有名でさ」


「高いもの?」


「あぁどう考えてもやつの手に入るのはおかしい隣国の商品だったりな」


「まともではないことをしていたということか」


「でもアルフォンスとはどういう関係なんでしょうか?」


 地面に倒れていたアルフォンスは実際に殴られており昏倒していた事実はどうせ気絶したふりをしているのだろうと思っていた三人を驚かしたのだ。


「それがどうにもすっきりしないよな」


「ダミアンに婚約者をとられた腹いせならキリアンを巻き込まずにダミアンをもう一回ぶん殴るなりなんなり手はあるだろう?キリアンを巻き込んでわざわざ自分が怪我するような目に合わなくてもいいのにな」


 トリスタンとジョージは首をひねるが二人はキリアンがダミアンを始末しようとしていた本当の理由を知らないのだ。魔石の不正流通をもみ消すためにダミアンを始末しようとしていた、それは分かるがなぜアルフォンスを巻き込んでいたのかそれがリリーにもわからない。


「ま、いいや。さぁ冷める前に食べよう」


 トリスタンは素手で平たいパンを豪快にちぎり口に運んだ。うまいうまいとモシャモシャと平らげていく姿はとても貴族令息には見えずリリーは目を丸くしてみていた。


 そんな二人の様子が面白いのかジョージはかすかな笑みを浮かべている。


「ごめんなさい。遅くなったわ」


 給仕の中年女性が両手に陶器のジョッキを抱えてやってきた。


「これがぶどうでこっちがうちの自慢のりんご。かわいいお兄さんはりんごだったね」


 そう言ってジョッキを三つ置いて次のテーブルへ行ってしまう。


「さ、乾杯しよう。ダミアンの歓迎会というにはちょっと遅いけれど、これからもよろしくな」


「はい、よろしくおねがいします」


「今日みたいなことがあれば、俺たちで良ければ頼ってほしい」


「なんだかダミアンは妙なやつに絡まれやすいみたいだからな」


「そういわれると、面目ないです」


「ま、まだ若いからな。ジョージみたいに大きくなれば変なやつに絡まれることもなくなるさ。さ、そのためにもたくさん食べようぜ!!乾杯!!」


『乾杯』


 トリスタンの言葉にジョージとリリーがジョッキを持ち上げ目を合わせて乾杯をした。


「はい、おまたせ。串焼き肉と野菜」


 また給仕の女性が忙しく皿を置いていく。


 肉と野菜が交互に串に刺されたその料理はこの店の人気メニューらしく他の客のテーブルにも同じものがあるのが見える。緑の濃い野菜は肉のニオイ消しも兼ねており苦味が強いためリリーは苦手な野菜だった。


「肉はいいんだけど野菜がなぁ。どうにも見た目から苦手なんだよな」


「子供か?肉で巻いて野菜も口に入れろよ。混ざってしまえばごまかせるだろう」


 子供のような泣き言を言うトリスタンはいやいやながら肉と野菜を口に運んでいる。


 リリーも先輩を見習って肉と野菜を口に運んだが、やはり苦味がきつく口直しにりんご水を何度も口に運ぶことになった。そんなリリーの様子に給仕の女性がおかわりを持ってくる。リリーは礼を言い新しいジョッキに口をつけた。


 しかしトリスタンもジョージも平民たちに混じって食事をする様子が様になっている。本当に貴族の令息なんてまわりの人間はかけらも思っていないのではないだろうかとリリーは周りを見渡した。


 リリーは貴族令嬢なので初めて平民の使う食堂というものに来て、すべてが珍しく興味深く感じている。

 石造りの食堂はお世辞にも綺麗とはいえないがこざっぱりとした内装で4人がけ程度の円卓がいくつか置かれ、大きいものが手を伸ばせば天井の梁に手が届くほどの空間だ。


 男だらけ、しかも中年以上の男だらけの食堂に緊張したがそれも最初のうちだけだった。

 食事が進むにつれ徐々に口数が多くなったリリーは身振り手振りも大きくなりテーブルの上に半分乗りかかるようにしてトリスタンとジョージを見ている。


 そんな姿にジョージが首を傾げた。


「なぁダミアン。お前ひょっとして酒弱いんじゃないのか?」


「え?なんでですかぁジョージさん?お酒なんて飲んでませんよぉ」


「いや、おまえそれりんご酒だろ?さっきお姉さんがうちの名物のりんごにするか?と聞いていただろう?」


 トリスタンがそう言ってリリーのジョッキをとり匂いをかぐ。


「ふぅぇっく」


 その瞬間、リリーの口から奇妙なしゃっくりが飛び出たのだった。



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