11 令嬢は聞き耳をたてる
「バカなんですか?レオ様は」
誰かが怒っている気配にリリーは目を覚ました。
だが眠くて眠くて身体がまだ鉛のように重くて指先はおろかまぶたですら動かせない。
リリーはあっさりと目をさますのを諦めた。どこかはわからないけれどレオがそばにいるなら変な場所ではないだろう。とまどろみに任せる。
(無理をしすぎたのかしら)
ぐるりと目の回るような気持ちの悪さは相変わらずある。動かないほうが懸命だろうと判断した。
「だってどうしたらいいかわからなかったんだ」
(なんだか子供みたい)
「だからって気を失ったご令嬢を自室に引きずり込むってありえないでしょう」
「だってヨハン」
「元いた場所に返してらっしゃい」
捨てられていた猫の子を拾って帰ったかのような言い草がおかしいとリリーは思った。
どうやらここにいるのはレオとヨハンのようだ。
以前見かけたときもそうだったがヨハンはレオの侍従というよりも保護者のようなものいいだ。
「プロポーズだってしたんだから問題ないはずだ!!」
「アデノフォラ家の了承も得ずに男女が二人きりで会っていたということだけでも大問題なのに。それに……」
「なんだ」
「お返事頂いてないんでしょう?」
「ぐっ……」
「だったら問題ないわけないでしょうが!!誘拐だって騒がれたらどうするんですか」
「だって」
「アレク様にしかっていただきましょう」
(アレクってアレクサンダー様?やっぱり親しい間柄なのね)
そっくりな顔をしているのだそうだろうと思ってはいたが自分の推測が正しかったことにリリーはかすかな喜びをおぼえた。しかし眠気がリリーをまた暗闇にひきずりこもうとする。
「……それは、いやだ」
「じゃあ……さと返して……さい」
「リリーが運命……もう私は呪い……んだ」
(呪い?)
「それ……ては反対をして……ではありません」
「じゃあいい…差」
「今はまだ……いから私がお止めしてるん……わかっているでしょう。後から嫌われても……よ」
「……」
「だれも死なないようにするのが私の役目です……」
(死?)
物騒な言葉にリリーは必死に聞き耳を立てようとした。
「そんなこと起こさない」
「3年前にも誰もこんなことになるとは思っていなかったでしょう?」
「……」
「返してらっしゃい」
リリーは不満気な気配がそばに来て抱え上げられたのを感じたが、ここで目をさますのは聞き耳をたてていましたと言わんばかりだろうと判断した。
「ごめん」
レオの謝罪が何についてかわからないままリリーは眠ったふりを続けた。




