真犯人
『速報です。本日の午後二時ごろ、第九学区にて高西魔導研究所が爆発。調べによりますと、研究所には黒フードの男が侵入する様子が確認されており、男は研究所の資料を奪った後逃走。同時に施設の爆破を行った、とのこと。魔導警察はこれを受け、先日第五学区で起きたテロリストと同一犯だとしてその行方を追っています。それでは、ここで現場と中継が…』
……は?
目の前で報道されているニュースの内容が、一瞬、理解できなかった。
第六学区の調査(という名の散策)を終え、再び学区間の壁を越えて戻ってきた俺であったが、根城にしている公園へと戻る途中に見かけた街頭テレビを見て足を止めた。
前回のあれは、不幸な事故だったと申し上げたいのだが、そんな話が通るわけがなく、更には言ったところで俺がつかまるのが目に見えている。
……いや、問題はそこじゃない。
「また、テロ?」
当然ながら、俺は今日第六学区にいたのだ。そんな俺が第九学区で騒ぎを起こせるわけがない。というか、そもそもの話起こそうとは思わない。何度もいうが、あれは事故なのだ。
ならば、この事件は俺以外の誰かが起こしたことに他ならないわけで。でもってその事件の犯人が前回の犯人と同一人物だと思われている、と。
「完全にとばっちりじゃねぇか!?」
街中であるにも関わらずに、思わずテレビに向かって叫んでしまった。
幸い、人が少なかったためにそこまで注目を集めたわけではなかったのだが、それでも何人かには訝しげな視線を向けられていたため、逃げるようにして公園へと向かう。
自然と足が速くなる。
「ルシア、聞こえるか」
『聞こえておるよ。さっきの声で目が覚めた。…して、どうしたんじゃ?』
ボソリ、と周りに聞こえないように呟くと、はっきりとした声が頭のなかに響いた。どうやら、先程の叫び声で起きてしまったようで、寝ぼけている様子はない。
『起こして悪いな。ちょっと事態がややこしいことになってる』
『また何かやらかしたのかえ?』
『ちょっと、俺がいつも何か仕出かしてるような言い方止めてもらえません?』
そうじゃなくて、と俺は先程ニュースで流れていたテロについてルシアに話す。
『……なるほどのぉ』
全て聞き終えたルシアはそんな声を漏らして黙り込んでしまった。
何かを考えているのか、何も話さないまま時間だけが過ぎていく。
いつのまにか根城の公園に到着し、俺は慣れたようにいつもの木の上に飛び乗ると、そのまま寝転ぶ。
『…妾達がこの世界に来た時の爆発。あれももしかしたら、そのテロリストとやらが関わっているのかもしれんの』
『やっぱ、そう考えるよな…』
どうやら、ルシアもその考えに行き着いたようだ。
俺も考えてはいたのだが、多分その可能性はかなり高いと考えている。
そもそもな話、あの日あの魔導警察とやらは俺のことをテロリストと呼んだんだ。つまるところ、テロだと思われるようなことがあったわけで、それがあの爆発だったんだろう。
ニュースでもあの建物は研究所だったようだし、狙いは研究所の破壊だったのだろう。あと予想できるのは資料の強奪。
研究所であるのなら、有用なものもあったかもしれないからな。
で、そんな真犯人達が逃げた直後にあの建物に出てきたのが俺であって、あの学生二人はそんな俺を爆発の犯人だと思った、と。
『……ほんとに俺、悪いところないよな、これ』
いや、まぁ確かに黒ローブにフードして、大きな鉈を持ってた俺も悪いっちゃ悪いんだけども。
でも、明らかにこれ巻き込まれたよね、俺。
『そうじゃな。まぁ、運がなかったと諦めるしかないの。何を言っても今さらじゃ』
ルシアのその言葉に、そうだよなぁ、とため息を吐いた。
だが、それでそのテロリスト達に腹が立たないのかと聞かれれば答えはノーだ。
だって、そもそもあの事件がなければ、俺は誰に知られることもなくこの街のことを知って行動に移せたわけで。
つまり、今こうして木の上で過ごすという猿みたいな生活を送っているのはテロリストのせいなんだ!
『要するに、濡れ衣を着せられたのが気に入らないんじゃな』
『そうともいう』
19歳であるが、正直気に入らないものは気に入らないのだ。というか、犯人が別にいるのに、全く無実の自分が犯人にされるとか誰でも気分はよくないはずだ。
『……まぁ妾も、気分は悪いの』
『だろ?』
『妾なら、研究所などよりも国そのものを消滅させるのじゃ』
『それ、今はやめろよ? マジで。お前の世界に行ってからな』
発言が大変魔王らしくて結構なことだ。
とにかく、俺たちの今後の方針はいつも通りこの学園都市の調査をしつつ、テロリストどもを見つけることだ。
後者については、焦る必要はない。どうせまたどこかで事を起こすだろう。
まぁ、善と悪の立場がテロリストと研究者とで逆の可能性も無きにしもあらずなのだが、その時はその時で考えればいい。
とにかく、今はやるべきことがある
『寝る』
『じゃな』




