第一楽章 チーム「リコルダ」
──────とある事務所で──────
暗い、薄汚れた事務所。そこに、二人の男が立っていた。
「………わかって、いたんだね。正直、ボクも隠すことに限界を感じていたんだよ………。」
小柄な方の男がそう溢すと、彼の体が変質を始めた。肉が裂け、内側から骨が露出し、大きく成長していく。
「そう、でしたか。」
そして、もう片方の男もまた、体に炎を纏った。ゆらめく陽炎が泣いている。
黒い鉤爪と炎の刃が、ぶつかり合った。
──────時は遡り、リコルダのオフィスで──────
「……ふぅ〜、疲れた。いや〜、全身が痛いよ。」
暖かい日差しを浴びながら、大きな伸びをする。全身から、ぺき、という音がなる。
コーヒーの匂い漂うリコルダのオフィスで、山吹色髪の青年は愚痴を言った。
「ね〜ね〜テノル〜、休憩にしない?シャープ②を三体も倒した後で、もう事務作業なんてできやしないよ。」
それを聞いて、白髪で眼鏡をかけた青年はため息をついた。
「……何を言っているんですか。早ければ早いほどいいじゃないですか。まあ、あのデカい惨殺狂の怪物を討伐した後だと、疲れはしますが。」」
その青年、テノルはパソコンを叩きながら、コーヒーを口に運んだ。彼のかけているメガネが、きらりと光る。
「それに、明日は久々の休みなんだから、仕事を持ち込みたくないじゃない。今日ぜ〜んぶ終わらせちゃおうよ。」
それに続き、淡い水色でおさげ髪の少女もまた、テノルに同調した。資料とにらめっこしつつ、着実に仕事を片付けていっている。
「まあ、アルトの言う通り、休憩を取るという案自体は悪くない。机に向かいっぱなしだと、効率は落ちるからな。」
電話対応を終えた、高身長の青年がアルトの近くへ歩み寄った。短いため息をついた後、デスク上のティーカップに紅茶を淹れた。
「たまにはいいこと言うじゃん、バース。じゃあちょっとボクは休みま──」
「い〜や、全員でだ。テノル、ソプラ、一旦仕事を切り上げて、休憩に入るぞ。」
バースがアルトの頭をぺしっと叩いた。あまりにもいい音がしたので、仕事を続けていた二人も小さな笑いをこぼした。
「………まあ、そう言うことなら。休憩も仕事の能率を上げるには必要ですからね。そのぶん、しっかりと休ませますからね。何事も全力で。」
「頭使ったから、糖分が取りたいな。バース、あの棚から何か取ってきてもらえる?」
この四人チーム、リコルダのオフィスに夕焼けが差し込んでいた。窓は空いていたから、風にカーテンが揺れた。どこか遠くから、草の匂いが漂ってきていた。
「わかった。俺のとっておきを持ってこよう。」
「とっておき?」
「激辛ハバネロポテトチップスと、ホット酢だ。」
「待ちやがれくださいこの性悪黒魔術師。」
「やっぱりバースって味覚おかしいよね!自覚して!」
今日もまた、笑い声が響く。ほんの少しだけ、世界は太陽の輝きを受け入れたのかもしれない。




