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オタクなギルド受付嬢は、 魔獣にしか興味が無いはずだったのに  作者: 都鳥


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2/6

解体場にて~正直こっちの方が居心地はいい~

「お疲れさまです。こちらの鑑定と解体をお願いします」

 冒険者ギルドの奥側にある解体場に入ると、いつものように声をかける。

 チーフ解体士のハリーさんが、こっちを見てニヤリと笑った。


「おっ、またフリーダか。で、今度はどんな魔獣だ?」

「ワイルドボアです」

 そう言って、解体台の上にマジックバッグから出したボアを置いた。

「こいつがワイルドボアだってことは見りゃあ分かるさ。で、どうなんだ?」

 ハリーさんはわざとらしく聞き直す。これもいつものやり取りだ。


「見た感じ毛並みも綺麗ですし、脂ものっていそうです。この時期のワイルドボアは肉質も良いものが多いですよね。倒し方も無駄がなくて傷も少ない。結構良いお値段がつくんじゃないですか?」

「ふむふむ、どれどれ」


 ハリーさんはギルドに一つだけある『鑑定の魔道具』を取り出してボアに向ける。

 魔道具から浮かび上がった文字を確認すると、今度はボアの遺骸を一通り確認してから、こちらを向いた。

「さすがだな、フリーダ。確かにこいつは、なかなか良い値が付きそうだ。お前さんの言う通り余計な傷もない」


 そう言いながら、助手の解体士たちに解体の指示をだすと、ハリーさんは手元の報告書に鑑定結果を書き込んでいく。

「よっしゃ、こいつを持ってってやんな」

 そう言って、報告書をこちらに寄越した。


 先輩の受付嬢に比べて、私は地味でぱっとしない。素も良くなければ、化粧も上手くない。

 濡れた枯葉のような濃い茶色の髪も特別な手入れはしていないし、伸ばしているのは三つ編みにすれば楽に纏めておけるからだ。

 決定的なのはこの分厚い眼鏡。

 不格好だとよく馬鹿にされる。不格好なのは承知の上だ。この眼鏡に度は入っていない。

 これは目付きの悪さを隠す為と、少しでも視線の先を探られない為にかけている。


 私は魔獣が好きだ。と言っても、格好良いだとかかわいいだとか言って魔獣を愛でるような、そんな「好き」ではない。


 魔獣そのものが好きなのだ。

 姿かたちももちろん、習性だとか生態だとか。それから素材も。

 ボアの大きな牙とか、ホーンラビットの角とかを、見ているだけでも楽しい。

 その魔獣がどんな生態をしているのか、その角や牙をどんな風に使っているんだろうか。想像するだけでもわくわくする。


 なんて話をすると、大抵……いや、確実に変な人に思われる。

 魔獣の遺骸や素材を、まじまじと、時にはうっとりと眺めていることなんて、知られない方がいい。


 私が冒険者ギルドの受付嬢になったのも、色々な魔獣が見られるからだ。

 生きている魔獣を相手にできるような強さはなくても、ここに居れば色々な魔獣を見ることができる。


 だからこんな風に、討伐した魔獣の処理を押し付けられることは、私にとって嫌なことではない。逆に役得なのだ。

 むしろ依頼の説明や諸手続き業務をしなくてラッキーだと思っている。

 先輩方のように愛想を振りまきながら荒っぽい冒険者たちの相手をするのも苦手だし。

 こうして毎日受付と解体場を往復している方が、私には嬉しい。


 * * *


「ふぅ~~」

 ため息を吐きながら、ギルドの裏口の鍵を閉める。結局今日も帰るのが一番最後になってしまった。


 稼ぎのいい上級冒険者たちとの出会いを狙う先輩受付嬢たちは、冒険者たちがプライベートタイムに入る時間を狙ってさっさと帰ってしまう。残業をする受付嬢なんて、私くらいだ。


 でも私にとってはその方が都合がいい。

 だって、一人で存分に魔獣の素材を堪能……いや、観察できるのだ。しかも残業手当までもらえる。


 今日はBランク冒険者さんが狩ってきたグリフォンの素材を存分に観察できた。

 ついつい、うっとりと眺め……いや、しっかりと確認していたら、時間はあっという間に過ぎていた。


 もうとっくに日は落ちていて、裏口の脇に一個だけ据えられた魔力灯が、ようやく歩ける程度にぼんやりと辺りを照らしてくれている。

 馴染みの定食屋で夕飯を食べて帰ろう。

 ギルドの裏手から路地を通って表に回ろうとした時、ふと視界の端できらりと何かが光った。


 あれ、なんだろう?

 道端の草むらに近づいて、そのきらきらにそっと手を伸ばす。固いものが手に触れたので、そのまま摘まんで拾い上げた。


「これ、魔獣の鱗だ」

 でも、何の魔獣の鱗だろう? 今まで見たことがない。

 ワイバーンの鱗に似ているようで、でもちょっと違う。ワイバーンの鱗は全体的にざらざらとしている。これにはワイバーンの鱗のようなざらつきが無い。

 角度を変えて見ると、魔力灯のわずかな光をうけてきらりと光る。全体的に光沢を帯びたような色をしている。ああ、だから光って見えたのか。


 冒険者ギルドでしょっちゅう魔獣の素材を見ている私でも見たことが無いってことは、余程珍しい魔獣の素材なのか、それともこの国にはいない魔獣だろうか。

 なんでそんな物が、こんな所に落ちているんだろう?


「本当に綺麗……」

 手の平にのせた鱗を見つめる。とても綺麗で、いつまでも見ていられる。


 試しに、じっと目を凝らしてみると、いつものように鱗の前に半透明の文字が浮かんできた。

 が、魔獣の名前の部分が読みとれない。鱗なことは間違いないみたいだ。


「なんだろう? これ……」

 もう一度、目を凝らして見てみても結果は変わらない。

 魔獣の名前にあたる部分が何かで隠されているようになっている。


 もしかして、私の知らない魔獣だから読めないのかな。

 うん、多分そうだろう。


 諦めて、手の中の鱗を腰のポシェットにしまった。

お読みくださりありがとうございます(*^-^*)


次回の更新は明日の夕方~夜の予定です。

引き続き宜しくお願いします。

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