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頼られない副団長


「内に眠る未知の可能性に命ず」


集中、魔力を体内から消費、大気中のマナが呼応、ここで力を込めて完成をイメージ。

そうすることで体の中心に白く光る冷たい球体を現れる。

後はこれを攻撃に転用すれば…


「我に仇する全ての愚者を凍てつか…」


不意にフラッシュバックするのはオルトノの姿。

それはスノウにとって失敗のイメージとなり、球体は安定を失い破裂した。


「きゃぁっ!」


球体の内部にはかなり高密度の魔力が詰まっているため破裂と同時に尻餅をついた。


「まだ何回か練習できる。絶対モノにしないと…」


「おい、交代の時間だぞ」


再び発動体制に入ろうとするがここで声掛けが入り全身の力を一度抜く。


「バル…」


夜間の見張り交代を告げにバルが呼び起こしなしで自ら荷車から降りてきたのだ。


「もう少しだけやらせて。あともうちょっとで何かが掴める気がするの」


最近アテラが夜の見張り中に作ったという椅子にバルが腰をかけてスノウに言った。


「それは構わねえが…お前、何を焦ってる?」


一瞬スノウが固まる。


核心を突かれたからだ。


「…リントと旅に出てからあいつは何回も戦ったわ。シンヘルキでレカルネラと、ナフィコであんた(バル)と、ミガレユノでオルトノと、地球でアヴェダレオの魔王と対峙したこともあった」


「そいつぁ結構な事で。どんどん強くなるなアイツは。で?」


「私は一回もリントから強敵を任せて貰ったことがない。シンヘルキではレカルネラじゃなくて他の事。ミガレユノはシフラとの合せ技。ナフィコや魔王との対峙はただ震えていただけ。だけど一番心に来たのはオルトノが羽化した時」


『…スノウ、アヤネ達を連れて今すぐ逃げろ。生き残ることだけ考えて動け』


『俺も手伝ってやるよ』

『…死んだらどうする?』

『そうだな…死後の世界にも魔獣がいたらいいな』

『ははっ。それ最高』


「リントは自分の命をかけた時に私やアヤネ達が生き残る可能性を選んだ。そしてあんたがリントの道連れになろうとした時…あいつは反対しなかった」


「……」


遮ること無くスノウの泣き言を耳に入れ続ける。


「今の私はリントにとって守るべき対象。それに比べてあんたは肩を並べて戦える戦友って所かしら」


出てくる言葉に不甲斐なさを感じさせる震えが混ざり始めた。


「出会った時間も過ごした時間も私のほうが長いのにリントは私よりあんたを頼っているの。スノウドロップの呼び名も、ユーレア学院を飛び級で卒業してセンタレアの魔法士団に入団した天才の肩書も外の世界じゃ意味をなさないしそんなものを連ねても強くなるわけじゃない」


腕を組みつつ下を向き話を聴き続ける。


「私が扱えるの技術は所詮は机上の知識と枠にはまっただけの魔法。今のままじゃきっと私はすぐに頭打ちになる。もしそうなったらリントの側で戦うことなんて…」


だがここでバルが大きなため息をついた。

まるでもう聴いてらんねえと言わんばかりに。


「さっきから聴いてりゃぁ、うじうじいじいじ私頑張ってますアピールかよ。これだから女って生きもんは面倒くせえ」


「…は?」


「聞こうとした俺がバカだったぜ。要するに自分が弱くて惚れた男に頼ってもらえないって話だろ。たったそんだけでよくもまあ、そんなつらつらと話せるな」


椅子から立ち上がり固まった体を伸ばしてほぐし始める。

これから何が起こるか既に察している故の準備だ。


このギルド(昇る太陽)で一番強えのは大着火(イグナイト・ロアー)発動したリントなのは間違いねえが…ま、長く続かねえからこれは例外だな。順当に考えればでリントか(バル)のどっちかが1番でどっちかが2番だ。俺もリントもお前(スノウ)には負けねえだろう__」


よ、と言い終わる前に高速で一本の氷柱が頬の横を通り過ぎる。

首を少し傾げなければ傷がついていただろう。


「試してみるか?」


「そうね。あなたより強いって証明すれば少しくらいリントも私を頼ってくれるかしら」


ピリッと弾ける空気とひりつくような冷たい空気が入り混じった緊迫感のある空気が辺りを支配。

昇る太陽が結成されて以来、最初の衝突が始まった。




一方その頃、地球にいる凜斗は潜伏していたアヴェダレオのリィゼとヘルルの強襲を受けていた。


空間操作(セパス)によって姿を眩ませては四方八方から出現して翻弄するリィゼに直閃(ストレイツ)によって槍を持ち高速で突撃するヘルルに防戦一方だ。


「…ここッ!」


リィゼが出現したタイミングを感じ取った凜斗が右裏拳を顔にぶつける。


「いぎゃっ!」

直閃(ストレイツ)


間髪入れずにヘルルが急接近。

それに対して凜斗の放った手は最接近タイミングで体の側面に向けての肘打ち。


「ぐっ!」


「やっぱ直線は横の力に弱ぇな!マンガ読んでてよかった!」


連撃は凜斗の二撃によって終わりを告げた。


(俺の直閃(ストレイツ)に正確な攻撃を与えられるならただの肘打ちじゃなくてお得意の魔拳で多くのダメージを与えられたはず…何故だ?)


「センパーイ。このままじゃジリ貧ですよー。それに着々と対応されてきてるし長引けば長引くほど負け筋できちゃいますー」


(それだけじゃない。あいつが俺達に攻撃するのも基本的な身体能力を使用してのシンプルな攻撃…まさか力を蓄えてるのか!)


「…最大瞬速だ。あいつが俺達を認識することもできない速さでぶち抜く」


「待ってました!」


全力を出すために姿勢を整える。

だが不敵に凜斗は笑った。


「やめたほうがいいと思うぜ。()()()()が確実になるだけだぞ」


「虚勢だな。仮にお前が瞬きしようものなら、もうその目を使うことはない」


更に凜斗は構えを解きかかってこいと挑発。


「っ!警戒すらしないだと!…行くぞリィゼ。ヤツを徹底的にだ!超直閃(ストレイツ・ネオ)


「あいあいさー!空間操作(セパス)


ヘルルが踏み込む。

リィゼが視線を自分が行きたい方向に合わせる。




「ばーか」


戦況が、崩壊。


(何だこれは…!体が重い…いや、それだけじゃない…!)


「あ、あた…ま、いた……」


ヘルルは進めず前方に倒れ、リィゼは動けずに頭を覆いその場で蹲った。


「お前たちの本来の力は初撃の時、でもその後の願いがどうたらこうたらって言った時から急に強くなった。多分アヴェダレオ側の変な仕掛けか何かだと思うけど…ここは()()だぞ?」


「マナ濃度…!」


「せーかい。マナ濃度が違うから同じ魔法でもハーモラルで使うのとはワケが違う。地球じゃより大量の魔力を消費しないとハーモラルと同じ威力、効果は得られない。お前らの敗因はそこんとこの履き違えだ。俺が着火(イグナイテッド)だけ使って魔拳とか使わなかったのは魔力の温存。てか今の俺なら使わなくても勝てる…と思ったけど急に強くなったのは誤算だったけど嬉しい誤算だったぜ」


(魔力消費の上昇に伴う魔力切れに環境への不完全な適応…ここから逆転する手は…無い…)


実際、ヘルルの体には立ち上がる気力も、戦うための魔力も残っていない。


完敗を喫したのだ。


「さてと、まずは人通りを戻してもらおうか。どうせ結界かなんかだろうけど……待てよ」


(なんでこの2人が魔力切れになっても人通りは戻らないんだ?そもそも結界を維持するんだったら()()()()()()()()()があるはずだ。うちのばあちゃんみたいによっぽど人外染みた例外はあるけどそのクラスの人材がずっと隠れている訳無い)


「っひっひ…遅いよばーか」


「…まさか!」


凜斗の気付きと同時に背面のアスファルトにある凜斗の影より暗い闇で構成された穴が現出する。

その穴は完全に気配を消しておりそこからは一本の剣が飛び出し、凜斗は深くにも遅れを取ってしまった。


「死んじゃえェッ!!」


リィゼの憎しみ籠もる恨み言が放たれ歪な笑顔で幸せを噛み締める。




次の瞬間、響いたのは金属同士の衝突音とその1秒後に地面に落ちる音。


「あっぶなーい。危機一髪だったね」


空から華麗に着地したのは中切綾音。

その手にはお得意のクナイが握られており、それで凜斗に向かっていた剣を撃ち落としたのだ。


「助かったぜ。ありがとう綾音」


「どーいたしまして。奥田さんから聞いてびっくりしたよ。なんかお昼過ぎくらいから駅の方行きたくないなぁって思ってたんだけど…この人たちが悪いの?」


「ああ。前にスノウとじいちゃんばあちゃんで痛めつけたからアヴェダレオに帰ったかと思ったんだけどな。外の人は大丈夫だったか?」


「うん。ちゃんと人はいたんだけどなんかここに来る時に…何ていうんだろ。カーテンとか暖簾をくぐった感覚を感じたら急に人がいなくなっちゃって…」


「人払いと…ちょっと訳わからん効果が合わさった結界ってわけか。ばあちゃんに後で聞くとして…」


「撤退。勝ち目なし」


先程の剣が射出された穴が消えたかと思えば這い蹲って倒れているヘルルの下に現れてそこから女の声が聞こえた。


「ぐっ…!了解…!」


「待て!」


駆け出すもヘルルは穴に飲まれ間に合わず、すぐにリィゼの方向を見るもヘルル同様に地面の黒い影へと消えていった。


「闇の魔法ならっ!」


綾音も影溶(ようよう)を使用し地面の影から影の世界に潜る。




自分以外で影溶(ようよう)の様な陰に潜り地上から姿を消す相手には初めて出会う。

いつもは半重力で薄暗く地上の景色を上下左右反転させたような場所を一人で彷徨う不思議な感覚だが今は違う。


「いた!けど…」


(速すぎる!2人も抱えて何であんなに!?)


追いかけよう足を動かした刹那、すぐ近くの電信柱に黒い穴が開く。

咄嗟に嫌な予感が体に注意を促す。


「うわっ!?」


穴から棘が急激に伸びて頬を貫通しかけるが間一髪で回避。


「…まじっ!?」


今度は足元、ガードレール、そしてまた電信柱から同じ多数の黒い穴。

どんなに体勢を捻ろうが人間辞めなきゃかわせない量だ。


「無理だこれっ」


影溶(ようよう)を急いで解くと急激に体が下に引きずり込まれて地面に飲まれて影の世界から帰還する事ができた。


「ぷはっ…ふあぁー!」


「綾音!どうなった!?」


「ごめん逃げられた!罠に引っかかっちゃった!」


「大丈夫だったのかそれ?」


「私は大丈夫。なんとかねー」


綾音は手を差し伸べられた手に捕まり立ち上がって尻についた砂埃を払った。


「人通り…戻ってきたね」


「お、ほんとだ。そういや奥田は無事に俺の家までたどり着けたかな」


結果的に凜斗単独でこの場をやり過ごしたので奈央は安全な場所へ逃がすことができたものの祖父や祖母が飛んでこないのは少し疑問だ。


こっちの状況を把握できない状況あったのか、他に対応するべき事件が起こったのか。


ありえないとは思うが他のアヴェダレオ人によって闇討ちされた可能性だってありえなくはない。

ありえないと思うが。


実際に以前地球で見かけたリィゼとヘルル以外にも今回は一人増えていたため増援が来ているかもしれない。


「綾音、俺の家に急ごう。もしかしたらじいちゃん達になにかあったかもしれない…!」


この予感、果たしてどうなるか…

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