重い
「はぁ…疲れた。」
高嶺は支部に戻り、情報の整理をしていた。夜は遅い。
「おつかれ、大変だな。」
弘中が高嶺の後ろからコーヒーを渡す。
「あぁ、ありがとう。おまえも支部長になって大変だろう。」
「あぁ、でも、書類に目を通すだけみたいになってしまってるからなぁ…やりがいがないな。」
「贅沢言うなよ。こっちは普通の仕事やりながら、色んな情報集めてんだぞ。」
「というか、なんで俺なんだ?他にも色々選択肢はあったと思うけどなぁ…支部長なんて。」
「はは、実力主義だからな、おまえが一番成績良かったからだろ。」
「そういや、栄がベルマって子を推薦しにきたぞ。」
「ベルマを?先輩が?」
「あぁ、なぁ、前々から思ってたんだけど、聞いていいか?」
「何?」
「なんで先輩呼びなんだ?おまえプライベートでは茜ちゃんって呼んでるだろ。」
「あぁ、それか。まぁ、仕事上馴れ馴れしいのはいけないってのと、先輩自体がもう誰にも茜という名前を知られたくないらしい。」
「なんでだ?」
「なんでも、サイボーグになる前の私を知らないのに茜なんて呼ばれても腹立つだけだって。」
「そうか…てかおまえ、プライベートでガンガン言ってるから、隠す意味ないだろ。」
「その辺は最初の方に注意されたけど、もう諦めてるよ。」
「へー、まぁいい。とにかくベルマって子が明日から来るから、面倒みてやってくれ。」
「は?ベルマだろ?研究開発部じゃないのか?」
「いや、最初は色々なところを体験させてやろうと思ってな。その方が何のために今の研究に力を入れてるかが分かるだろう。」
「そうだなぁ…まぁ、いいけど。じゃあ…俺は帰るわ。」
「そうだ、早く帰れ。全員帰らないと俺が帰れないからな。」
「はは、大変だなぁ、おまえも。」
その夜は各々の色んな思いを巡らせながら、眠りについた。
そして朝
「お義姉さん、ホントに大丈夫?」
「ベルマ…おまえは私の保護者か?むしろ立場逆だろ。」
「でも、お義姉さん、料理下手だし、家事もそこまで得意そうじゃないし…」
「はは、随分だな。まぁ、なんにせよ、楽しんでこい!」
栄はベルマの背中を押した。
「……行ってきます。」
「はーい、いってらっしゃい。」
「キ、キ、キ、キ、キ、キ。」
「ん?おまえらも応援か?…良いことだよ。」
「キ、キ、キ、キ、キ。」
「さて、私もボランティア巡回でもするかなぁ…何も情報がないんじゃ闇雲に歩くしかないしな。」
栄は手ぶらで家から出た。ブロッカーたちは後を追う。
「やぁ、ベルマ。おはよう。」
「おはようございます。峰さん。」
「ごめんな。今日は研究じゃなくて、建物案内だ。」
「え?なぜですか?」
「支部長がその方が研究に役立つ情報が得られるだろうとの判断だよ。」
「分かりました。」
「じゃあ、ここ一階から。この一階は一般の人たち向けに実験器具を体験させるところ。民間ラボって言われてるよ。結構古い機械が多かったりするけど、盗まれても害はないし、まぁ、セキュリティ的にはガバガバだな。」
「ほぇー。」
「次二階、ここはこの支部の受付。ここからは厳重なセキュリティがあるから生半可な技術とかでは侵入もできない。その最初の関門があの受付嬢さん。」
「受付のお姉さん、めっちゃかわいい…」
「……あの受付嬢さんは実はサイボーグでいわゆる新型の子かな?君の作った技術の子だよ。」
「う……」
受付嬢さんは笑顔で手を振っている。
「話を聞こうか。」
高嶺はベルマを受付嬢ところは連れて行った。
「おはよう、佐伯さん。」
「おはようございます、高嶺さん。そちらの子が今日から新しくきたベルマ・ベータさんですね。」
佐伯はニコニコしている。ベルマはそれが逆に怖い。
「あ、あの、お、お姉さん?」
「なんでしょう?」
「わ、私のことをさ、に、憎んだりしてない?殺したいとか思ってない?わ、私は死ねないから、殺すこと以外ならなんでも言うこと聞くからさ、その、なんでも言って?」
(ベルマ?どうしたんだ?)
佐伯はクスクスと笑う。
「な、何?」
「いえ…ベルマさん…大丈夫よ。私は別に憎いなんて思ってないわ。」
「え?なんで?」
「私のことを改造したのはあなた本人なのは覚えているの?」
「え……………ごめんなさい。」
「ほら、覚えてないでしょう。あなたが今口に出したのは、あなたの開発した技術が私たちを苦しめているのでないかという勝手な思い込みから来てるわよね?その技術を開発したことに関しては何も思っていないもの。」
「………」
(じゃあ、やっぱり、改造したことは恨まれてるんだ……)
「なんでも言うこと聞くって言ったけど…本当になんでも良いの?」
ベルマはうなずいた。高嶺は横で首を振る。
佐伯は高嶺に静かにするようにジェスチャーした。
「じゃあ、今ここで、あなたの秘密を教えてくれるなら許しても良いわよ?」
「秘密?」
「そうねー、好きな人とかいないの?」
「いない…」
「へー、じゃあ…今は誰かと住んでるの?それとも一人暮らし?」
「栄さんと住んでます…」
「そう、栄さんと…じゃあ、夜の営みとかどうしてるの?栄さんと?」
「あ、いや、それは、」
佐伯は高嶺を出て行けとジェスチャーし、高嶺はやれやれ顔でどこかに行く。
「なんでも…よね?」
「うぅ、ひ、ひとりでしてます…」
「人の部屋で罪悪感とかはないの?」
「……あります……」
「じゃあ、なんでするの?」
「それは、我慢できなくなって…」
「ふーん、誰かとしたことはあるの?」
「……ないです……」
「へー、じゃあ、服脱いで?」
「え?ここでですか?」
「早く。」
ベルマはゆっくりと恥ずかしそうに服を脱いだ。顔が真っ赤に染まる。
「ふーん、いいよ。服着て。」
ベルマは急いで服を着た。
「んー、じゃあさ、今日一緒に寝ましょうか?」
「寝るんですか?」
「簡単なことじゃない?」
「いえ、でも…」
「いいじゃない…私最近ご無沙汰なのよ。女の子でもいいから…声、聴きたいな。」
「いや、でも…」
「なんでもするって?」
「うぅ、分かったよ…」
「よし、でもその前に、口約束だけじゃ不安よね?」
「え?」
「ここで自分でやって見せて。」
「え?そんな…」
「なんでも?」
「……やります…」
「あ、服は着たままね。」
「……はい…」
ベルマは自分の敏感なところを触り始めた。
(本当になんでもやるのね…相当責任感じてるわ…栄が気にするわけね。)
「ん、ん、あ、ん、」
「はい、ストップ。」
「え?」
「ごめんなさいね、どこまで本気か試したくて…別に私は恨んでないわよ、あなたのこと。喉元過ぎれば熱さを忘れるってやつよ。もう、過去のことだからね。引きずっても仕方ないもの。」
「ごめんなさい。」
「あははー、栄の言った通り。時間かかりそうね。でも、まぁ、まずは建物案内再開ね。」
佐伯は辺りを見渡した。
「高嶺さんがいない…どこ行ったのかしら?」
ベルマは突っ立っている。
「ベルマさん、こっちおいで。」
ベルマは佐伯のそばに寄った。




