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希望の門
西田に再会して二年が経った。俺は三十歳になっていた。
俺は母校の大学院修士課程を受験して、合格通知を受け取っていた。
春からは中学校を休職して大学院生となり、科学史と理科教育を学ぶ。
「頑張ってね。教員免許が専修免許に変わるんだっけ。私もそのうち行こうかな」
同僚の斉藤が応援してくれる。その真っ直ぐな目が眩しかった。
「先生は春から大学院に行くことになった。精一杯学んでくる。そして、おまえたちの後輩に学んだことを伝えたいと思う」
「先生、頑張れよ」
「俺たちも来年の受験頑張るから」
寂しいと泣き出す生徒もいた。思った以上に慕われていたようで嬉しかった。
終業式では寄せ書きと花をもらった。不覚にも泣いてしまいそうになる。
近くに考える人の像が鎮座した門を出る。ここは地獄ではない。希望を捨てさせてはいけない。
大学の門を再びくぐる。散り始めた桜の花びらが風に舞っている。
ここにも希望が溢れている。