エピローグ
真っ黒の闇の中、たくさんの腕が自分に向かって伸びてくる。
摑まれそうになって、泣き叫んだ。
『おかあさま!』
一人っきりですんすんと泣いていたら、そっと頭に手を置かれた。
優しい温かい手。慈しむように、撫でてくれる。
『どうしたの?』
「かーしゃまぁ……」
『また、怖い夢を見たのね? いらっしゃい』
温かい腕の中に囲い込まれる。
とくとくと、安心する心音に包まれると、眠るのも怖かったのに、もう大丈夫だと思えた。
安心するぬくもりと音に包まれてうとうととしていると、背中から低い男の人の声がした。
『最近、眠りが浅いのかな?』
大きくて優しい手が、髪を梳いてくれた。
『怖い夢を見たみたい。今度ドリトラに頼んでみようかしら?』
『そうだね、久しぶりに三人でこの子の夢の中に入って、遊んであげようか』
『ふふふ、楽しそうね!』
『さあ、また寝よう。エレン、君も寝不足だろう?』
『ありがとう、ガディエル』
衣擦れの音がしたけれど、抱いてくれる温もりが離れることはない。
うとうととしながら、呟いた。
「かーしゃま……しょばにいりゅ……?」
『いるわ。約束したでしょう?』
『ああ。ずっと一緒だ』
『おやすみ、アミュエル』
保護の名を貰った、小さな小さな女神の名前。
『父は英雄、母は精霊、娘の私は転生者。』完