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1/11

地中海の小国へ

■1


三月末。


藤原理沙は、羽田からイスタンブールへ飛んだ。


そこからさらに飛行機を乗り継ぎ、地中海の小国――セレニア王国へ向かう。


窓の下には、どこまでも青い海が広がっていた。


やがて、その海の中に島が見えてくる。


白い建物が並ぶ海岸線。


ヨットの浮かぶ港。


海沿いには、大きなホテルがいくつも建っている。


少し内陸へ目を向ければ、丘の上に古い石造りの城塞が見えた。


「……あれが、セレニア」


理沙は窓に頬杖をついた。


人口、およそ百二十万人。


面積、約九千平方キロメートル。


古代ギリシア時代の遺跡が残る、地中海の島国。


十字軍時代から800年以上続く、君主制国家。


飛行機は、セレニア国際空港へ着陸した。


ターミナルへ入る。


最初に目についたのは、壁に掲げられた大きな紋章だった。


青地に、金色の獅子。


その足元には、銀色の波。


獅子の上には、王冠と十字架。


セレニア王国の紋章である。


「……本当に来ちゃった」


■2


理沙はスーツケースを引きながら、入国審査へ向かった。


日本を出ると決めてから、ここまで妙に早かった。


母を亡くしたのが、三か月前。


大学を辞めたのが、つい数日前。


そして今、自分は地中海の王国にいる。


人生というものは、動くときには一気に動くらしい。


入国審査を終え、到着ロビーへ出る。


そこで理沙は足を止めた。


妙に人が多い。


いや。


人が多いというより、一か所に人だかりができていた。


若い女性たちがスマートフォンを向けている。


観光客らしい夫婦も、何事かとそちらを見ている。


空港職員まで、少し離れたところから様子をうかがっていた。


(まあ、観光地だもの、セレブの1人や2人ぐらい来るわよね。)


特に興味はない。


理沙は人だかりを避けて、その横を通ろうとした。


「藤原先生!」


自分の名前を呼ばれた。


理沙は振り返る。


人だかりの中心にいた青年が、こちらへ手を上げていた。


「あ」


見覚えがある。


WEB面接で、一度だけ顔を合わせた青年。


ルカ・ボーモント。


金髪。


青い瞳。


すらりとした長身。


画面越しに見たときにも思ったが、ずいぶん分かりやすい顔をしている。


いわゆる、おとぎ話に出てくるような王子様だ。


そして実際に、王子だった。


■3


セレニア王国第二王子。


ルカ・ボーモント。


ネットの情報によると23歳。


理沙は、彼の周囲にできた人だかりを見る。


もう一度、ルカを見る。


「……王子様自ら、お出迎えですか?」


「はい」


ルカは当然のように答えた。


「僕が採用した先生ですから」


「そういうものなんですか?」


「少なくとも、僕はそうしています」


ルカは理沙の前まで来ると、その手からスーツケースを受け取った。


「あ、いい大丈夫です。自分で持てますから」


「知っています」


「じゃあ……」


「でも、僕が持った方が早いので」


「……そう」


気づけば持っていかれていた。


周囲から、一斉にスマートフォンが向けられる。


理沙は小声で言った。


「殿下。これ、私まで撮られてません?」


「撮られてますね」


「大丈夫なんですか?」


「明日には、たぶん大学の新任教授だと報道されています」


「………」


ルカは楽しそうに笑った。


■4


「車はこちらです」


二人は到着ロビーを抜け、空港の外へ出た。


春とは思えないほど、日差しが明るい。


駐車場へ向かいながら、理沙は尋ねた。


「迎えの方は?」


「僕です」


「それは分かるんですけど。運転はどなたが?」


「僕ですよ」


理沙は横を歩く青年を見る。


「殿下が?運転?」


「ええ」


「王子様って、もっとこう……後部座席に座ってるものじゃないんですか?」


ルカは少し考えた。


「兄もドライブは好きですよ」


「そうなの?」


「なんか毎回、違う女性が助手席にいますけど」


「……ずいぶん自由なお兄様なんですね」


「僕はソロ派ですね」


「へえ」


「この車の助手席に人間を乗せるのは、先生が初めてかな」


「人間?」


理沙は眉をひそめた。


ルカが一台の車の前で立ち止まる。


助手席のドアを開けた。


そこには、一匹の犬が座っていた。


ルカは犬へ言った。


「フィン。お客様が来たから、後ろの席に移動して」


犬はルカを見上げて、そそくさと後部座席に移動した。


シートベルトを締めると、ルカがエンジンをかけた。


「さて」


先ほどまでより、少しだけ真面目な声になる。


「いろいろと質問もあると思いますので、お話は車の中にしましょうか」


■5


数か月前


セレニア王宮、第二王子執務室。


白い石壁の一面には、青地に銀の波、その上に鎮座する金色の獅子――セレニア王国の紋章が掲げられていた。


大きな執務机の上には、応募者の履歴書と事前課題が積まれている。


ルカ・ボーモントは、机上のノートパソコンを見つめていた。


「ありがとうございました」


モニターの向こうで、白髪の男性教授が頭を下げる。


通信が切れた。


ルカは椅子の背にもたれた。


「うーん」


執務机の脇に控えていた大学設立準備室の職員が尋ねる。


「いかがでしたか、殿下」


「優秀な方ですよね」


「はい。世界でも有数の大学で二十年以上教鞭を執られている教授です」


「ええ。論文も読みました。事前課題も素晴らしい」


ルカは、印刷されたレポートをぱらぱらとめくった。


「でも、ちょっと違うんですよねえ」


「違う、とは?」


「なんというか……僕のミッションに答えてくれる感じがしない」


ルカはレポートを机へ戻した。


「次の方は?」


「日本の藤原理沙准教授です。この方が最後の応募者です」


職員が資料を差し出した。


「百九十八名の面接、お疲れさまでした」


「どうも」


「殿下。お疲れではありませんか?」


ルカは資料を受け取りながら首を振った。


「まあ、ちょっとは」


そして表紙を見る。


「ああ、はいはい。この人ね」


「ご記憶でしたか」


「事前課題、全部読んでますから」


ルカは資料を受け取る。


「この人、事前課題がすごく良かったんですよね」


■6


ルカは履歴書をめくる。


内容も、すでに頭に入っている。


「日本の……東都帝国大学法学部。在学中に司法試験合格」


「はい」


「この大学は知っています。日本のトップクラスですね」


さらに指を下へ滑らせる。


「卒業後は……高瀬塾 司法試験科専任講師?」


「司法試験などの受験指導を行う学校です」


「ああ、なるほど」


ルカは少し笑った。


「だからあのレポート、妙に実務的だったんですね」


さらに読む。


「それにしても、東都帝国大在学中に司法試験まで受かってるのに、法律事務所には行かなかったんですね」


「そのようです」


「四大とかあるでしょう、日本にも。大手の」


「あります」


「行けなかった?」


「経歴を見る限り、それは考えにくいかと」


「じゃあ、行かなかったんだ」


ルカは特に気にするでもなく、次へ進んだ。


「その後、大学教員。現在は……北奥大学?」


首を傾げる。


「これは知らないな」


「日本の地方私立大学です」


「どんな大学なんです?」


職員が一瞬、答えに困った。


「率直に申し上げますと……定員割れしています」


「定員割れ?」


「募集定員よりも、志願者が少ない大学です」


ルカが履歴書から顔を上げる。


「大学なのに?」


「はい」


「じゃあ、入りたいと言えば、入れちゃう?」


「まあ……そうですね」


ルカはしばらく黙った。


そして、藤原理沙の事前課題をもう一度手に取った。


数ページめくる。


「へえ……」


「何か?」


「こんな素晴らしいレポートを書ける先生が、定員割れの大学にいるんですね」


ルカは感心したように笑った。


「日本って、ずいぶん贅沢な国なんですね」


そのとき、モニターに接続待機の表示が出た。


RISA FUJIWARA


ルカは椅子を引き寄せた。


「さて」


画面を見る。


「実物は、どんな先生でしょうね」


■7


面接は、予定していた三十分を少し過ぎたところで終わりに近づいた。


ルカは机の上の資料を閉じる。


「藤原先生から、ほかに質問とかない感じですかね?」


画面の向こうで、理沙が少し考えた。


「そうですね……今のところは」


「すみません。国家プロジェクトなので、オンラインではまだお答えできないことも多くて」


「それは分かっています」


ルカは頷いた。


「じゃあ、最後に僕からいくつか」


「はい」


「今、ほかの就職先って受けてます?」


理沙は少し意外そうな顔をした。


「いえ。特には」


「じゃあ」


ルカは身を乗り出した。


「うちからオファーを出したら、受けてくださる感じですかね?」


「ええ、まあ……」


「他にやりたいことも特にないですし……」


「前職の引継ぎとかもあるでしょうし、こちらに来れるとしたら、いつぐらいなりますか?」


「三月末で退職可能です。四月一日からなら」


「分かりました」


「じゃあ、今この場でオファーを出します」


「えっ?」


■8


「じゃあ、今この場でオファーを出します」


「えっ?」


理沙は思わず聞き返した。


「ちょ、ちょっと待ってください」


「はい?」


「そういうのって、ほかの候補者の方と比較検討して、それから決めるものじゃないんですか?」


「ああ」


ルカは笑った。


「もう全員とお会いしましたよ」


「全員?」


「百九十八名」


理沙は一瞬、黙った。


「……全員?」


「はい。その上で、藤原先生が一番よかった」


あまりにもあっさり言うので、理沙の方が困ってしまう。


「でも、理事会とか……」


「大丈夫です」


ルカは即答した。


「僕、王子なんで」


「……それで通るんですか?」


「今回は通ります。僕がこのプロジェクトの責任者なので」


「じゃあ、就労ビザとかは?」


「それも大丈夫です」


「どうやって?」


「僕、王子なんで」


「王子様って便利なんですね……」


「便利ですよ」


ルカは満足そうに頷いた。


「あとは渡航手続きですね。パスポートは――」


そこで言葉を止める。


「ああ」


少し考えた。


「さすがにパスポートは、僕じゃどうしようもないな」


「でしょうね」


「お持ちですよね?」


「ええ、まあ」


「よかった」


ルカは笑った。


「じゃあ、正式なオファーレターは今日中に送らせます」


「今日中?」


「早い方がいいでしょう?」


「まあ……そうですけど」


「藤原先生は、お引越しの準備を進めておいてください」


「住居はこちらで手配しておきますし、家具も一通り揃っています」


「じゃあ、日本から家具を送る必要はない?」


「ないですね。必要なものだけ持ってきてください」


「本とか結構あるんですけど」


「輸送費もこちらで出しますよ」


「どれくらいまで?」


「多めに送金します。足りなかったら言ってください」


「……余ったら?」


「セレニアで使ってください」


「経費ってそういうものではないのでは?」


「そうなんですか?」


■9


車は、空港を離れて海沿いの道路へ入った。


右手には、青い地中海。


左手には、白いホテルやレストランが並んでいる。


理沙は助手席から景色を眺めながら尋ねた。


「それで殿下。王立法科大学って、学生は何人くらいいるんです?」


ルカがハンドルを握ったまま、右手の指を二本立てた。


ピースサイン。


理沙は一瞬、それを見る。


「二クラス?」


「いいえ」


「……二十人?」


「二人です」


「学生が?」


「はい」


理沙は運転席を見る。


「王立大学ですよね?」


「王立大学です」


「学生が二人?」


「今年は」


「今年は、って……」


ルカは笑った。


「まあ、見てもらった方が早いですね」


信号で車が止まる。


ルカはセンターコンソールから二冊の薄いファイルを取り出した。


■10


「先生に担当していただく学生のプロファイルです」


理沙は一冊目を開く。


写真付きの書類だった。


ミア・カルド。二十一歳。


「女性。母子家庭」


ルカが説明する。


「お母さんと一緒に、セレニア・ロイヤルホテルで働いていました。ベッドメイキングですね」


「二十一歳で?」


「高校を途中で辞めています」


理沙は顔を上げた。


「高校中退?」


「ええ」


「大学は?」


「もちろん行ってません」


「……王立法科大学ですよね?」


「そうですよ」


理沙はもう一度プロフィールを見る。


二冊目。


ニコ・マレン。二十二歳。


「こちらは父子家庭です」


「仕事は?」


「お父さんと港で、外国人向けのクルーズフィッシングをしています」


「クルーズフィッシング?」


「観光客を船に乗せて釣りをさせるんです。ニコは予約、会計、通訳もやってます」


「この子も高校中退?」


「はい」


理沙は二冊を膝の上に置いた。


「ちょっと待って」


「はい」


「高校も卒業してない二人を、王立法科大学に入れた?」


「卒業してない……」


ルカが少し考える。


「ああ。正確には、昨日までです」


「昨日?」


「昨日、僕の責任で高校卒業相当資格を認定しました」


理沙は黙った。


「……そういうのも王子様ができるの?」


「まあ、王子ですから」


「便利ですね」


「便利ですよ」


ルカは少し笑った。


「もちろん、適当に認定したわけじゃありません」


■11


次の信号で止まる。


ルカが別のファイルを理沙へ渡した。


「二人の試験結果です」


理沙はページをめくる。


「A-levelですね。イギリスの大学進学に使うやつ」


「はい」


理沙は成績表を見る。


「数学A、歴史A、政治A……?」


「優秀でしょう?」


「英語も……」


「二人とも問題ありません」


「TOEIC九百九十?」


「まあ、英語は母語ですから。満点で当たり前ですけどね」


「いや、英語ネイティブでも満点は普通はできな……」


さらにページをめくる。


今度は、法律に関するレポートが何本か綴じられていた。


「これは?」


「僕の母校、キングスブリッジ大学が無料公開している講義を見てもらいました」


「そのあと二人にレポートを書いてもらったものです」


理沙は読み始める。


一枚。


二枚。


ページをめくる速度が、少しずつ遅くなった。


「……これ、本当に本人たちが?」


「書きました」


「添削は?」


「してません。僕じゃ専門外なので」


さらに読む。


「……へえ」


「どうです?いいかんじじゃないですか?」


「普通に頭いいですね、この二人」


ルカが嬉しそうに笑った。


「でしょう?」


■12


理沙はファイルを閉じた。


「この成績なら、大学には行けたでしょう?」


「日本なら、そうかもしれませんね」


「?」


「この国には、まともな法学教育を受けられる大学がありません」


「海外留学は?」


「国費枠があります。でも、ごく少数です」


「この二人じゃ無理だった?」


「能力だけなら、全国で三十番目くらいでしょうね」


「十分優秀ですよね」


「でも、国費奨学生は十人です」


「富裕層は私費で留学させますけどね」


「……なるほど」


「それ以前に、二人とも高校を途中で辞めていますから、応募資格もありませんでした」


車が再び走り出す。


「だから、僕の私費奨学金で二人を集めました」


「私費?」


「ポケットマネーです」


「学費と生活費くらいですけどね」


ルカは気にする様子もなく続ける。


「今は王立法科大学の寮に入れてあります。もう働かなくていい。勉強だけしてもらいます」


「……ずいぶん思い切ったことするのね」


「必要なので」


ルカは前を向いたまま言った。


「この国のすべての人に、同じようにチャンスを与える」


「……」


「それが僕のミッションです」


「ミッション?」


「ええ」


ルカは当然のように続けた。


「それを与えるのが、王家の役割でしょう」


■13


車は、白い石造りの建物の前で止まった。


正面には、金色の文字が掲げられている。


セレニア王立法科大学。


理沙は車を降りた。


三階建て。


新しい建物ではあるが、いわゆる巨大なキャンパスではない。


理沙は少し見上げる。


「……北奥大学と同じくらいね」


「前の勤務先ですか?」


「ええ」


ルカも運転席から降りた。


後部座席では、フィンが窓から顔を出している。


理沙は校舎を眺めながら言った。


「でも、ずいぶん思い切りましたね」


「何がです?」


「普通、こういう新しいプロジェクトって」


理沙は校舎を指した。


「最初は既存施設の一部を借りるとかして、小さく始めるものじゃないですか?」


「なるほど」


「うまくいくか分からないでしょう?」


ルカは少し不思議そうな顔をした。


「ああ、大丈夫です」


「何が?」


「失敗しませんから」


理沙はルカを見る。


「……ずいぶん自信あるんですね」


「ありますよ」


ルカは笑った。


「だって、藤原先生がいるんですから」


「……」


赴任初日に、ずいぶん重いものを背負わされた気がする。


「百九十八人の候補者から選んだんですよ?」


「それ、私にプレッシャーかけてます?」


「褒めてるんです」


「そう」


理沙はため息をついた。


ルカは大学の入口へ向かいかける。


そして、ふと足を止めた。


「藤原先生」


「はい?」


先ほどまでより、少しだけ声が低くなった。


「中に入る前に、ひとつ」


ルカは周囲を見る。


大学の前にいるのは、二人だけだった。


■14


「ここから先は、求人票には書けなかった話です」


理沙の表情も変わる。


「国家プロジェクトだから?」


「はい」


ルカは大学を見上げた。


「この国の王位継承については、ご存じですよね」


「一応は」


「父から、兄と僕に課題が出されています」


「課題?」


「それぞれ一つ、この国の未来につながる国家プロジェクトを実行することです」


「第一王子は?」


「兄は観光産業です」


「この国らしいわね」


「ええ。新しい高級ホテル、港湾の拡張、マリーナの整備。富裕層をもっと呼び込む計画です」


「ずいぶん大きいわね」


「兄は商売が得意ですから。今のところ、かなり順調ですよ」


理沙は目の前の校舎を見る。


「じゃあ、殿下は?」


ルカも同じ方向を見た。


「これです」


「これ?」


「セレニア王立法科大学」


理沙は改めて校舎を見上げた。


「……大学そのものが、王位継承戦のプロジェクトなの?」


「はい」


「で、その成果を比べて次の王様を決める?」


「簡単に言えば、そうです」


■15


「具体的には、何をもって成果とするんです?」


理沙が尋ねた。


「お兄様なら、ホテルの稼働率とか、観光客数とか、港の利用実績とかですよね?」


「まあ、そうですね」


「じゃあ、殿下は?」


ルカは少し笑った。


「そこが、先生にお願いしたいところです」


「………」


「手始めに、ひとつ」


ルカは、理沙が持っているミアとニコのファイルを指さした。


「この二人を、SQE1に合格させてください」


理沙は数秒、黙った。


「SQE1………ようするに英国の司法試験。イングランド・ウェールズのソリシター資格試験……」


「はい」


「ちょ、ちょっと待って。継承戦って4か月後ですよね?」


「はい」


「つまり、4か月で?」


理沙はミアとニコのファイルを見る。


「昨日、優秀とはいえ、高校を卒業したばかりの2人をSQE1に?」


「……本気ですか?」


「僕は本気ですよ」


ルカは少しだけ声を落とした。


「僕にできることがあったら、何でも言ってください」


「何でも?」


「教材でも、人でも、予算でも」


「本当に?」


「はい」


ルカは笑った。


「僕、王子なんで」


「……便利ですね、やっぱり」


理沙は小さく息を吐いた。


「小国なんで限界はありますけどね」


青い瞳が、まっすぐ理沙を見る。


「その二人を合格させて」


ルカ・ボーモントは、何でもないことのように言った。


「僕は、この国の王になります」



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