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✧ ロスティ学院 ✧

「——ぅ、わ……」


 俺は、真っ白で大きな()()——ロスティ学院を見上げ、そう声を漏らした。


 ぞろぞろと新入生が保護者に連れ立って、期待と不安に頬を赤らめさせながら校門をくぐっていく。


「ふふっ、おっきいでしょ? 見た目と同じく、中も本当に広いわよ」


 ぱっと見上げると、ルセルが優しい微笑みを浮かべていた。


 彼女は俺の付き添いで、保護者ということになっている。ロスティ学院の3年生で、俺の4歳上の16歳らしい。初めて知った。


「リシェって12歳だったのね……見えないわー」

「え、何それどゆこと? 見た目幼いって言ってる?」


 俺が非難じみた目線でルセルをじとっとにらむと、彼女は慌てたようにぶんぶんと手を振った。


「違う違う! 大人びてるし落ち着いてるから、もっと上かと思ってたの……! ……まあ、見た目は7,8歳に見えるけど……」

「ルセル?」

「ぅひっ、な、何も言ってませんよ……っ!」


 俺が冷たい笑みを浮かべると、ルセルは変な声を出してすっと俺から目を逸らした。……確信犯。


「俺ってそんなに小さい?」


 ことんと首を傾げながら疑問を口にすると、ルセルがさらりと頷いた。


「同年代の子たちに比べたら、結構ちっちゃいよ。まあ、性格が私より……いや、お父様よりも大人びてて落ち着いてるからだいじょぶだいじょぶ」

「何が大丈夫?」


 能天気なルセルに俺が呆れて突っ込むと、ルセルはからりと笑った。


「大丈夫!」

「だから」


 以下略。




「第147回、ロスティ学院入学式を始めます。一同、ご起立ください」


 司会の指示に従い、皆がざっと立つ。


 俺は少し圧倒されながら、ぎこちなくお辞儀をした。


「では、学院長先生の——」


 そのままつつがなく入学式は進行し、俺がふぅと溜め息を吐いた、その時——


「学院入試、首席——リシェ・ヴェント。前へ」

「えっ」


 思わず声を漏らしてしまい、俺は慌てて口を押さえる。


 ……って、え?


 俺が……学院入試、首席?


 俺は理解が追い付かないまま、司会に言われた通り前に進む。


 ……俺って一瞬不合格にされかけなかったっけ……?


「筆記試験と実技試験、両方で首席を獲得した彼に、学院長からお言葉がございます。学院長、よろしくお願いいたします」


 おもむろに40代くらいの男性が出て来て、鋭い眼光を光らせながら演台に立つ。


 そして、ゆっくりと口を開いた。


「リシェ・ヴェント殿。首席、おめでとう。ですが、忘れないでください。あなたがここに立てたのは、あなた一人の力ではないということを。

 これから、その力を誰のために使うのか。それを学ぶところが、このロスティ学院です。新入生諸君も、自分の力を何のために、誰のために使うのかを、この学院で見つけてくださいね」


 ふっと凛とした笑顔を浮かべて、学院長はそう俺たちに言葉を授けた。


 ……誰のために。何のために。


 大丈夫。


 それはもう、決まっているから。


 そのために、俺はこの学院に来たのだから。

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