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✧ 入試 ✧

「——始めっ」


 試験官の号令に合わせ、ぺらりと答案用紙をめくる。


 そしてとぷんと筆を墨につけ、流れるように名前を書き、テストを解き始めた。




「っふぅー……」


 長く息を吐き、んんっと伸びをする。


 終わったぁー……。


 今俺が行っていたのは、ロスティ学院の筆記試験。つまり、入試。


 後日、実技試験も行われるらしい。実技は……確か、魔術を見るのだったか。


 まあそれはそれとして、やっと筆記試験終わったぁー……!


 背もたれにふぅともたれかかると、ぎしりと椅子が悲鳴を上げた。


 ……明日もあるのかー。


 少し憂鬱な気持ちになりながら、俺は気持ちを切り替え、見直し始めた。




 翌日。


 予定通り、実技試験が開催された。


「リシェ・ヴェント。前へ」

「はい」


 名前が呼ばれたため、俺は緊張に高鳴る心臓を押さえながら前に出る。


 俺の前には的があり、そこに魔術をぴったり当てる試験のようだ。……え、これって的を壊せばいいの?


 試験官に聞こうとするも周りにいなかったため、俺はまあ壊せばいっかと思って準備をする。


 しかし、何を使って的を壊すかを考えた時、俺の手はぴたりと止まった。


 魔眼か空魔法、どっち使おう……。


「“魔術試験”……だからなぁ……」


 空魔法、の方がいいか。


 部分的に天気を変えることもできるから、これにはぴったりかな。


「よし」


 俺はふぅっと息を吐き、心を静める。


 そして、俺は体の中で血液と共に循環している魔力を、一気に手の平に集めていく。


 ふわりと熱が体の中を駆け巡って、その熱が手の平に集中する。


 その熱とは対照的に、頭の中は極限まで冷えていた。


 魔力を集めた手の平を的に向ける。的をしんと見据えて、ぴたりと狙いを定めて。


 針のように。糸のように。細く細く、的を撃ち抜け。


「——〈稲妻〉」


 ずどぉぉぉんっ‼


 音よりも早く走った光の一閃が、轟音と共に的を撃ち抜いた。


「「「「……え、」」」」


 遅れて、的ががらがらと崩れ落ちる。それをを背にしながら、俺が試験官の方を見ると、彼らはなぜかぽかんと口を丸く開けていた。


「……ん……?」

「えぇと……リシェ・ヴェントくん。今のは……もしかして、空魔法?」


 試験官の一人が言いにくそうに言った言葉に、周りはざわりと声のさざ波を作る。


 ……あぁ、そっか。


 そういえば、空魔法の5人って。


 俺以外の4人は見つかってるけど。あと一人——つまり俺だけ、見つかっていなかったな。


「……空魔法使うんじゃなかったかな……」


 ぽそりと囁くと、試験官が俺の肩にぽんと手を置いた。


「リシェ・ヴェント。別室に来てくれ」




「——リシェ・ヴェント。君は、空魔法の使い手……なのか?」


 そう聞かれ、俺は嘆息したい気持ちになりながら頷く。


「はい」


 俺がそう答えると、ざわっと周囲が騒がしくなった。


 俺に質問をしている試験官がぱんぱんと手を叩き、周りも押し黙る。


「君は……もしかして、魔眼も持っているかい?」

「はい」

「それは、なんという……」

「……」


 口を開きかけ、俺はまた口を噤む。


 また恐れられるのは、ごめんだ。


 また、遠ざけられるのは。


 もう、嫌なんだ。


 俺が押し黙っていると、俺の気持ちを汲んだのか違う質問をしてきてくれた。


「君が空魔法の使い手だということを知っている者は、誰がいる?」

「えぇと……ロビエ村の、村長のみです。それ以外は俺の魔法の詳細は知りませんが、恐れられてますね」


 俺が淡々と言うと、試験官たちはふっと目を見開いた。


 ……ロビエ村出身ということで、不合格になることはあるのだろうか。


「ロビエ村の……出身、ということか?」

「はい」


 俺が答えると、試験官たちは顔を突き合わせて話し合い始めた。


「これほどの人材を逃すのは……」

「空魔法の使い手ですもの、学院長たちが黙っていませんよ。首席入学させるべきです。筆記でも首席だったのでしょう?」

「何をおっしゃっているのです! ロビエ村の者を、この由緒正しきロスティ学院に入れるわけにはいきません! 不合格にいたしましょう!」

「ロビエ村の者をロスティ学院に入れるだなんて……ロスティ学院の品位が損なわれますわ!」

「いやいや、空魔法の使い手であるぞ⁉ 世界にたった5人の、しかも今まで見つかっていなかった最後の1人……! 違う学院に取られてしまう前に、入学させなければ……!」


 ……。なんか……俺を置いて、すっごい暑い議論になってる。


 しばらくして話がまとまったようで、試験官たちは俺に向き直った。


「すまないな、待たせてしまい」

「……いえ」


 俺がわずかに首を振ると、試験官はふぅーっと深呼吸をし、口を開いた。


「リシェ・ヴェント。君を——」


「合格とする」

あまたの作品の中からこの作品を見つけ出して読んで下さりありがとうございます!

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