↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
YEHI OR/イェヒ・オール  作者: 海風 野花
第一章:田園都市ユートピア
37/40

24 チェスト!!


 第四施設九州支部所長 氏家 兼光防衛大臣の死報ならびに国際テロ組織 ラスト・ジャッジメントによる急襲は全国の支部へ通達された。中でも第四施設九州支部 本部では、激震が走っていた。


 午前九時○○分。

 第四施設九州支部 本部、講義室───。

 階段毎に設置された横長のテーブル席には二〇名の隊員がまばらに着いていた。皆、席に着いている中、一人の男だけは席から立ち、彼の怒鳴り声が一室に響いていた。男が大声を上げるたび、彼の周辺に微細な電気が走った。


「だっから、なんべん言わんといけんとや!」


 坂本《さかもと》 和馬《かずま》 三十二歳

 ※第四施設九州支部 本部勤務

 坂本はテーブルの上を叩いて言った。


「おやっどんがやられちょっど‼︎」


「どげんしたって、認められんけん!」


 と講義室の壇上に設けられた席に座っていたスーツ姿の男が言った。名は、───木下《きのした》 勘十郎《かんじゅうろう》 五十七歳

 ※福岡県衆議院議員

 ※日出国保全党

 ※日本国啓示現象対策拠点全施設 役職:委員 他

 木下は続けて言った。


「各施設には緊急時に対処できるだけの人員ば配置しとるっちゃろ! 今、君たちば行かせてしもうたら、九州全域の防衛はどけんなるとね‼︎」


 坂本はクッと歯を食いしばった。


「だから言っちょっが! 明道《あけみち》さん一人おりゃ問題なかっど!」


 木下は隣の席に座っていた明道を見下ろした。


 早川《はやかわ》 明道 五十五歳

 ※ 第四施設九州支部 本部勤務

 早川はテーブルの上で両手を組み黙っていた。


(明道さんも、ひと言くらいなんか言うてくれんと困るとよ!)


 木下はそう思いながら仕方なしに言った。


「気持ちわかる! だが、そればどうこうできる話やなかと!」


「なんち言うとか! おはんに何がわかっちょっど‼︎───」


 と坂本は言い捨て説得するのをやめた。テーブル席から通路へ出て階段を上がった。


「もうよか‼︎ これ以上、話すだけ無駄じゃっど! おいは行く!」


 木下は彼を静止するようにして言った。


「待て! 処罰されても構わんとね⁉︎」


「そげか! そげか!」


 坂本は片手であしらうようにして言った。 


「おやっどんもおらん! お嬢もおらん! そげなところ、こっちから願い下げじゃっど!」


「おい待てっち言いよーと!」


 木下の呼び止めにも応じず、講義室のドアが勢いよく閉まった。木下は他に残った隊員たちを見て言った。


「君たちもそげん考えとうとね?」


「木下さん、───」


 と女性の声がした。

 立花《たちばな》 千花《ちか》 二十七歳

 ※第四施設九州支部 第ニ地区外側検問所 勤務


「うちらも同じ考えです」


「普通に見えるよるかもしれんが、───」


 と立花の隣に座っていた男が野太い声で言った。

 久野《くの》 清二郎《せいじろう》 三十四歳

 ※第四施設九州支部 第一地区外側検問所 勤務

 久野も席から立ち上がり、


「俺たち全員、腹ん中が煮えたぎっとるばい。木下さんには申し訳なかばってん、俺も行かせてもらいます」


 と言って会議室をあとにした。それに続くようにして、一人またひとりと部屋を出て行った。


「明道さん! 正気の沙汰やなかとですよ! ほんとに、これでよかとですか⁉︎」


 木下は耐えられなくなって隣に座っている明道に確かめた。


「あーだこーだ言うちょっても、しゃーなかが」


 明道はようやく重たい口を開いた。


「こういうときは、好きにさせちょけばよかとよ。九州は、私一人で守れるっちゃが。本当は、私も行きたい気持ちやっちゃがね」


「しっかし!」


「察してくれんね。こらもう仇討ちとかそげなもんじゃなかとよ。こっちも正気の沙汰じゃあやっちょれん」


「どうなっても知りませんよ……」


 木下はジャケットのボタンを外しながら席に腰を下ろした。明道は彼に身体の向きを合わせて言った。


「アンタも偉うなったもんやっちゃなあ」


 明道は木下のネクタイに触れて位置を正した。


「ほれ? 随分変わったがね。若いもんの責任は俺らが引き受けんといかんとよ」


「は……はい……」


 と木下は萎縮し俯いた。



 ◆



 第四施設九州支部 本部屋上 飛行場───。


「もうすっど! もうちっどじゃって……」


 坂本は戦闘服に着替えたあと、屋上でパイロットに待つよう説得していた。


「───おお、来たっか! まっちったど!」


 講義室の面子が戦闘服に着替え勢揃いになってやって来た。坂本は面々の険しい顔を見て奇声を上げた。


「い"い"ぃあ"あ"ぁああ! チェァ──ストォ──‼︎」


 と坂本が言い終える。皆、互いの顔色を見て笑い合った。中には涙しながら笑う者までいた。坂本は満面の笑みを浮かべて言った。


「良か顔つきになった! ほいじゃあ、行こっど!」


 坂本たちは鬼の形相でC-2輸送機の後部乗口から入って行った。皆、心の内に秘めた激情があった。


((チェスト! チェスト! チェスト! チェスト! チェスト! ───))

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。