第十七話「ダンジョン突入!」②
……こないだ見た『天翔雷光剣』の移動特化改良版?
電磁加速でも応用してるのか、尋常じゃない速度で飛んでいくのだけど、壁に近づくと壁を蹴って、更に加速。
まるでピンボールのように、10m程度の幅の通路をキンコンカンと飛びながら突き進んでいく。
通路に隠れてた魔物が立ちはだかるんだけど、もう一撃で粉々になってる。
「……な、なんだありゃ!」
「うん? 彼女の独自技だね……。あんなの普通の人間は真似なんて出来ないさ。さぁ、ボクらも前進だ! あの子、道は完璧とか言ってたけど、初見のダンジョンであんなペースで、間違えないはずがないからね。全員、なんとか見失わない程度には追いつくとしよう。エミリーさん達もすまないけど、こっちも先行せざるを得ない。けど、そっちは焦らずに確実に殲滅をお願いする」
「はい! 後続は私が取りまとめますので、皆様は前に進むことだけを考えて下さいっ! 全隊ススメーっ!」
小人族用のフルプレートを着込んで、大盾持って、モーニングスターなんて凶悪な武器で武装したエミリーたんが応える。
……なんと言うか、無駄に頼もしい。
彼女も元冒険者で、重戦士……いわゆるタンクやってたって言うから、凄い。
まさに、豆タンクっ!
「解った! すまないけど、皆飛ばすよ! ユリアちゃんは確かに強いけど、経験が甘いからね。誰かがフォローしないと危うい所がある。クロイノ君も行くよッ!」
「おうともさっ! 皆、行くぜっ!」
ミレニアムちゃんの号令一下、その場に居た全員で吶喊っ!
後続チームも徐々に脇道へそれて行って、退路確保を始めてくれているようで、後ろから響く足音がだんだん少なくなっていく。
俺は……もう4つ足で必死でミレニアムちゃんに追いすがってる。
と言うか、時々マントにしがみついて、なんとか付いていけてるって感じ。
ユリアちゃんはとんでもない勢いでどんどん先に行ってるもんで、ミレニアムちゃんも先に進まざるを得ないって感じでどんどん、先に進んでいく。
道はミレニアムちゃんも解ってるみたいだし、ユリアちゃんが進んだ道は壁がところどころ焦げてたり、魔物の残骸……魔石の欠片が転がってるから、目印になってる。
敵については、もう文字通り薙ぎ払われてるようで、全然出くわさない。
「……あちゃあ、後続はもうボクとクロイノ君だけじゃないか。でもまぁ、ユリアちゃんもここで道間違えたみたいだから、そのうち引き返してくると思うけどね。ちょっとここで後続待ちとしようか」
かなり進んだ先の分かれ道でやっと止まってくれたんだけど。
……どうもそう言うことらしい。
T字路になってる突き当り。
本来は左に進むべきところをユリアちゃんは、右に行った形跡が残ってる。
確かに、曲がる道を間違えてる。
右の道の方が若干広くて、如何にも本命っぽくみえるんだけど、その先は小部屋になってて行き止まり。
遠くの方で、バチバチと放電音が聞こえてくる様子から、何かとエンカウント、交戦中らしい。
ほとんど薙ぎ払っておしまいのところを立ち止まって戦ってる辺り、そこそこ強いのと出くわしたのかな?
けど、すぐ静かになる。
「クロイノ君、大丈夫……? 確かネコって、短距離型だもんね。もっとゆっくり行けばよかったね」
地面に転がって、ゼイゼイとへばってたら、ミレニアムちゃんが抱き上げてくれる。
彼女、ユリアちゃんと一緒だと、遠慮してるのかあまり抱っことかしてくれないんだけど。
居ない時とかは、割と嬉々として抱っこしてくれるんだよな。
この子、割とめっちゃニャンコ好き。
「すまねぇ……。さすがに俺もスタミナが持たなかった。これでも少しは鍛えてたんだが、案の定足りなかったか……。足手まといだな……これじゃ」
「そこは気にしないでいいよ。まったく、後続を振り切らない程度にって言ったのに、全然聞いてなかったみたいだね」
「まぁ、そこら辺はユリアちゃんですから。静かになってるから、ようやっと止まってくれたのかも。ちょっと呼びかけてみるよ……」
そう言って、通信札を取り出してユリアちゃん呼び出し。
「ユリアちゃん……後続がついて行けてないし、道間違ってるぞー! 早く戻ってこいよ! それとも強敵にでも出くわしたか? 援護いるなら、ミレニアムちゃんを行かせるぞ?」
「あ、はいっ! こっち、行き止まりでした! ちょっと強そうなゴブリンがいたんで、戦ってみたんですが。凶悪そうな見かけの割に、あまり強くなかったですね……」
「ふーん、どんな奴だ?」
「ゴブリンの変種? 角が三つも生えてて、大きさも3m近くあって、電光が直撃しても生きてて、守りに入ったんで、ガードしてた腕ごと首を叩き落としました。さすがにもう死んでるみたいですね」
「……それは、多分ゴブリンキングだね。ツノ二本のクイーンが一緒に居なかったかい?」
ミレニアムちゃんが顔を寄せて、話に加わってくる。
「これですかね……。こっちは最初の放電であっさり倒れちゃって……こっちももう死んでますね」
……ゴブリンキングとか、お前もうゴブリンじゃねーよっ! ってツッコミたくなるような怪物なんだがね。
並の兵隊50人くらいで挑んでも蹴散らされるくらいには強いし、率いてる群れの規模は最小でも百匹単位。
氾濫でこいつがいる場合は、もう最優先で潰さないとヤバい。
なお、冒険者ギルドではA級指定の魔物とされている。
ちなみに、A級ってのは確実に倒すには、A級冒険者パーティをぶつけないと勝てないって意味だ。
「そっか、A級のゴブリンキングでも瞬殺なら、もう大抵の魔物の相手をしても問題なさそうだね。分かれ道のところまで来てるから、一度戻ってくるといいよ。それと戻ったら少し休憩。一息入れて後続の合流を待つよ……さすがにちょっと飛ばしすぎだよ。ボクも君も魔力は無尽蔵だけど、さすがに体力には限界ってものがある。ペース配分には気をつけないとだよ」
「そ、そうですね! 解りました、すぐ戻ります! 確かに……まだ先は長いんですよね」
「まぁ、そう言うことさ。クロイノ君、今は大体どのあたりなんだい?」
「そうだなぁ……。この壁に矢印とB-16って書いてるあるだろ? で、こっちが北だから……なら、ここだな」
複製品ながら、マップくらいは俺も持ってるからな。
方位磁石と照らし合わせながら、地図の向きを変えて、地図の隅っこを指差す。
場所はひと目で分かる……B列の上から16番目のマス目。
前回攻略時に、ちゃんとマッパーが座標を壁に刻んでいってくれてたみたいで、おかげで現在位置も簡単に把握できる……ありがたいことで。
「ふむ、だいたい中間点みたいだね。割とずっと下りだったから、深度も深め……割といいペースだね。と言うか、このダンジョン……結構な規模だよね。地図も象徴的なブロック形式即席マップがあるだけか……。この分だと、前回の討伐戦は割と苦戦してたのが伺えるね」
まぁ、ダンジョンの地図っても、実物どおりを示すようなものじゃないからな。
地図上ではまっすぐでも、実際は曲がってる事も多いし、曲線を直角で表すこともある。
階層の境も、階段みたいな解りやすいものがあることの方が少なくて、ダラダラとしたカーブした下り坂を下ってるうちにさっきまで居たところの下を歩いてるってこともある。
この地図を作ったやつは、古い一人称視点ゲームなんかで、過去に行われてた方眼紙マッピングって方法に近い手法を使ってるみたいで、四角いブロックをつなぎ合わせるようにして、地図が描かれてる。
なんとも懐かしい。
今日日の3Dダンジョンゲームとかじゃ、オートマッピングとか当たり前だけど。
昔のゲームにはそんな物はなかったからな。
攻略サイトも無かったし、攻略本もゲームが出て半年とか一年くらい経ってから出版されるとか……そんな調子だったから、自分で手描きマッピングでもしないと、ゲームにならない……そんなもんだったんだよ。
このマップ自体は、前回の討伐戦の時作られたもので、今回みたいに狩猟騎士が先陣きって、当たるを幸い薙ぎ払うんじゃなくて、冒険者たちが先頭に立って、相応の犠牲を払いながら、ゴリ押しで突き進んで、魔物共を掃討しつつ、マッピングも行う……なんてことをやってたからな。
マッパーも手早く書けるこの方眼紙マッピングで妥協したってのは、何となく解る。
本来は、レベルの高いやつや従騎士クラスをどんどん突っ込ませて、入れ代わり立ち代わりで消耗を押さえつつ、ゆっくり時間をかけて攻略すべきだったんだが。
ワルツの馬鹿が、要らない悪巧みをしてくれたせいで、討伐軍もブルックリンやオリスみたいなエース格を欠いたまま、無理攻めを強いられて、結構な犠牲を出してるんだよな。
幸い途中でジジィが指揮官交代ってやってくれて、一緒にダンジョンに突入してくれたから、被害はそこまで酷くならなかったんだがな。
もう、引っ込んでろと言われたワルツにとっては、あれがある意味ダメ押しだったのかも知れんが……。
ナスルさんが居なかったら、犠牲者ももっと出てただろうからな。
そう言う意味では、アイツ間違いなくA級戦犯だ。
案外、誰かに人知れず始末されたのかも知れんけど、だとしても知ったこっちゃねぇよな。
「や、やっと追いついた! っと、ユリア様はどこだ? つか、そろそろ一息入れねぇか? エミリー達、後続チームも全然後ろだ。俺らだけ突出しすぎてるってのは、あまりよろしくないだろ」
ダンテ達がバタバタと到着する。
全員、息を切らせてるんだけど、なんとか追いついてきたらしい。
「そうよーっ! っていうか、クロイノ! ちゃっかりミレニアムちゃんのマントにしがみついてくとか、何楽してんのよーっ!」
そう言うアマリリスも早々と力尽きてたらしく、サビーネ共々ティゲルのリアカーに搭載済みだったりするんだがね。
なんと言う、おまいう。
「まぁまぁ、クロイノ君もダンジョンでの単独行動の危険さは解ってるってことだよ。ボクを孤立させないように……だよね?」
「まぁ、そう言うことだな。俺なんかでもいるのと居ないのとじゃ随分違うはずだぜ?」
「そうだね。ありがと……現状としては、案の定ユリアちゃんが道を間違えて、あさっての方へ行ってしまったんで、引き返してもらってるとこだよ。ひとまず地図を見た感じだと、この先に少し広めの広間があるみたいだからね。ユリアちゃんが戻ってきたら、そこまで前進する。今は小休止程度に留めて、そこで大休止の上で後続に状況確認して、どうするか決めよう」
要は、ここでハーフタイムの上で方針を考えるってことだな。
実際、ダンジョンに入ってから解ったことも多いし、魔物の迎撃も激しかったのは最初だけで、急激に散発的になりつつあった。
敵の戦力が尽きたのか、或いはいくらぶつけても無駄と悟って、少数精鋭で確実に迎撃する方針としたのか。
まるで、人間の指揮官でもいるかのような臨機応変さを感じさせる。
はっきり言って、油断できるような状況じゃないぜ?
夏目雄馬は、ウィザードリィ世代のオールドゲーマーでもあります。
昔のファミコンゲームとかPCゲームって、そんなもんでした。
今みたいにWikiサイトなんて無いし、ゲーマー同士の情報共有コミュニティなんかも無かったし。
自力で攻略するか、詰まったら最後、雑誌や攻略本の発売を待つくらいしか出来なかったと言う……。




