80.グランドベアーロード討伐②
ティーネからの依頼を受けたマルタはスカーレットのいる草原へ戻って来ていた。
「スカーレット隊長!」
その声に反応し、スカーレットは剣を持つ手を止める。
「ん……マルタか。どうした?今は訓練中だが」
「はい!実は、森の中でグランドベアーロード率いるグランドベアーの群れを発見したとティーネさんから報告がありました。現在、優夜さん、ティーネさん、グレンさん、ミルさんが戦闘をしています」
マルタが事情を説明するとスカーレットは珍しく動揺する。
「なんだと?グランドベアーの群れにグランドベアーロードだと?しかし、優夜が嘘をつくとは思えん。……よし、分かった。あまり大事にはしたくない。私と、他の班の指揮している者を連れて行こう」
「っ!ありがとうございます!」
マルタはスカーレットへ礼を言う。
「ではマルタはここで待っていてくれ。すぐに集める」
「はい!」
◇
グランドベアーの対応に追われる優夜達はグランドベアーロードが動き出した事で更に追い込まれる状況となった。
「何だ!?急に動き出したぞ!」
「恐らくグランドベアーの数が減り激怒したのでしょう」
「今あいつと相手できる余裕はないぞ!?」
「俺が行く!」
グランドベアーの相手をしていたグレンはグランドベアーロードの方向へ走り出す。
「私も!」
グレンに続きミルも走り出す。
「はあ!?じゃあこの熊はどうするんだよ!?」
「優夜、ティーネ!頼んだ!」
「お願い!」
グレンとミルは優夜の方へ振り向き、一瞬申し訳なさそうな顔をするとすぐに戻る。
「いや、頼んだって言われても……」
「ですね……」
優夜とティーネは迫り来るグランドベアーを見て意気消沈としている。
数に終わりが見えていても大量に残っているのには間違いないのである。
「ああ!もう!スカーレットさん達が来るまで耐えるぞ、ティーネ!」
「はい、優夜様」
◇
「ミル、セルフの力を使うぞ!」
「分かった!」
ミルはグレンの指示を聞くと、短剣を取り出し、そのスキルを発動させる。
「スキル。『分身』」
その瞬間、ミルの魔力が短剣へごっそりと吸われていく。
「うっ……」
ミルはあまりの衝撃に膝をつく。
「大丈夫か!?」
「大丈夫。ちょっと驚いただけ」
「そうか…。なら良かった」
「わあ!グレン兄さん見て!短剣がいっぱいだよ!」
「おお!これは凄いな……!」
グレンとミルが目にしたのは、15体に増えた短剣達だった。
『ふむ。今はまだこの程度か。……それで、どうするのだ』
セルフは飼い犬のようにミルの指示を待つ。
「みんなであのでかい熊を攻撃して」
『了解だ』
短剣達は一斉にグランドベアーロードに向かって飛んで行く。
「じゃあ俺達も行くぞ」
「うん!」
短剣達に続きグレン、ミルもグランドベアーロードへの攻撃を開始する。
「早く終わらせて優夜くんを驚かせてあげよ!」
◇
「隊長!あそこです!」
ミルとグレンがグランドベアーロードとの戦闘を開始してから数分。
スカーレット達を呼びに行っていたマルタが戻って来た。
「その声は!マルタさん!来たのですね!」
救援に来たマルタの姿を確認したティーネは歓喜の声を上げる。
「スカーレットさんに、リンカ、エリス!早速で悪いが手伝ってくれるか?」
息をかなり切らし、すでに体力も限界に近い優夜は三人に助けを求めた。
「勿論だ!」
「はい!」
「うん!」
三人は即答をするとグランドベアーとの戦闘にかかる。
そして、三人が戦闘をしている間に優夜とティーネはマルタから回復瓶、魔力回復瓶を受け取り休んでいた。
そして、少し経った後優夜が立とうとすると、
「優夜とティーネはそのまま休んでて良いよ!後は僕達がやるから!」
リンカは戦闘をしながら立とうとする優夜へ休むよう指示をする。
「リンカさんの言う通りです。優夜様とティーネさんは休んでて下さい。私達だけで十分ですから」
リンカの説得にエリスも乗っかる。
「二人とも……」
「どうやら休む以外に選択肢は無いようですね」
「ティーネまで……分かった。そこまで言うなら休ませてもらうわ」
優夜は戦闘に参加する事を諦めると引き続き休憩を取る。
「ただその代わり、ピンチの時は言えよ」
「「うん」」
スカーレット達が戦闘に参戦してから十分が経った頃。
『グアアアアアアアアア!!!』
ミル、グレンと戦闘をしているグランドベアーロードが大きく叫んだ。
そして、グランドベアーロードの目が赤色に変わった。
「何だ……?」
優夜はその行動に胸騒ぎがするのを感じた。
あれは……よく分からないけど、やばい!
優夜は危険を予知すると、それから流れるように指示を出した。
「全員あのでかい熊から離れろ!」
「「「「「!」」」」」
優夜の指示を聞きグレンとミルは勿論、スカーレット達もその場から退避する。
優夜は更に魔法を使う。
「神聖魔法。『神の監獄』」
目だけでなく体全体も赤い危険色に変わってきているグランドベアーロードを檻が閉じ込める。
ここまで対策をした優夜は更に魔法を重ねる。
「神聖魔法。『神の監獄』」
今度は優夜達を檻が閉じ込める。
『グアアアアアア!!!』
そして、体全体まで赤色が回った時、再びグランドベアーロードが叫んだ。
その瞬間、森全体に爆音が響き渡り、グランドベアーロードを中心に爆風が巻き起こる。
「「「「「「「ッ!!」」」」」」」
爆心地にいた優夜達は檻にしがみつき爆風に飛ばされないよう耐えている。
爆発が収まり優夜が閉じていた目を開けるとそこには凄まじい光景が目に入った。
「何だ………これ……」
えぐられた地面。弾け飛んでいるグランドベアー達。そして、跡形も無く弾け飛んだグランドベアーロードの中から出てきた謎の物体がそこにはあった。
「ん?」
優夜は爆発で壊れた檻から出ると、先程までグランドベアーロードがいた場所まで歩き、謎の物体を手に取る。
「何だこれ?」
優夜は黒く固い石のような物体を凝視する。
「どうしました、優夜様?」
同じく檻から出てきたティーネが優夜へ声をかける。
「いや、何でもない。それより早く戻るぞ。この事をエリーさんに報告しないと」
「そうですね。原因不明のグランドベアーの大量発生。そして、謎のグランドベアーロード。明らかに自然発生で出来たものとは思えません」
「じゃあ、誰かが仕組んだって事か?」
「分かりませんが、その可能性も考えられます」
優夜は少し悩んだ後、
「取り敢えず戻ろう。何も分からない事ばかりだからな、まずはエリーさんと相談をしないと」
「ですね」
二人は悩んだ末、メルルラに戻る事とした。
……グランドベアーロードのあのステータス。やっぱり人為的って事だよな。……もしかして魔王軍か?次サザンガとかに会ったら聞いてみるか。
【投稿予定】
8/19 81.魔鉱石




