異世界人は頑丈
「ステータスの話というか種族についてなんですけど、この純人種っていうのは?」
「大きく分類してなら人族、魔人族、獣人族、妖精族の4つだけど細かく分類すると人族は一応、純人種と亜人種に分けられるわ。亜人種っていうのは人の遺伝子が強いけれども、能力であったり体の一部に他種族の特徴が出てる人のことを言うわ。
純人種については私もあまり知らないの。昔は沢山居たらしいのだけれど、他種族と交わって血が薄れて行ったのか今では絶滅したと言われているわ。実際私もキンジに会うまでは純人種の人に会ったことなかったしね。」
「ということは人族とされる人たちの大半は亜人種ってことですか?」
「大半ではなくほぼ全てと言っても良いでしょうね。この世界の隅から隅まで調べれば居るかもしれないけれど、逆にこの世界にはもう存在せず、存在するのは異世界からやってきたキンジだけという可能性もあるわ。」
まさかの僕、絶滅種。
「どちらにせよ数が少ないっていうことに変わりは無いから純人種であることは隠しておいた方がいいわね。」
「隠す?」
「そう。さっきも言ったけれど純人種はとても珍しいの。この国は騎士や衛兵が精鋭揃いで、街の巡回も怠ることは無いから犯罪件数自体は少ないけれど、でもそれは街の中の話であって、外に出れば悪いやつだって居るの。
騎士団に取られる前にお宝を我先にと新たに発見されたダンジョンに無断で潜ろうとする者、ダンジョンではない場所で生態系を崩すような狩りを行ったり、特定の者にしか採取許可がされていない薬草を無断で取って行ったりする者も居るの。
中でも特にタチが悪いのは人攫いね。純人種ほどでは無いにせよ、他の種族でも個体数が少ない種は居てね、そういう人を狙った人攫いも起きて居るのも事実よ。」
「レベルの高いこの国の人たちを狙うってことは」
「キンジの場合、目をつけられたら最後ね」
「」
デスヨネー
「だから、服で見えないところに鱗があるとかなんとか言って亜人種であるということにした方が良いわね。」
ヴィーさんはここまで喋ると足を止め「この辺りからは襲いかかってくるような魔物も出ないし、ちょっとここで休憩して行きましょう」と言い街道から少し逸れた場所に腰を降ろした。
「??街はもう見えてますよね?日が暮れる前に街に着いてた方が良いんじゃないですか?」
「確かに街は見えてるけれども、それは中心にあるお城を含め街自体がとても大きいから見えてるだけよ。実際ここからさらに2時間は歩かなきゃいけないわ。
それに、休憩せずに歩けば日暮れ前に着くでしょうけど、日暮れ前が一番門前が混雑するから少し遅いくらいで大丈夫よ。」
ヴィーさんはそう言うと僕を手招きしながら「スキルや魔法の簡単な説明をするからこっちにいらっしゃい」と呼び寄せた。
僕が隣に座ったことを確認すると「ステータスの中にある項目の中で詳細が知りたい者に触れながら【ステータス詳細】と唱えると詳細が表示されるわ」という説明と「詳細を見てもわからないことがあれば聞きなさい」という言葉を残しこちらに背を向けて座り直した。
ヴィーさん?と声をかけると「ステータスの開示は自分の内側を晒け出すのと同義よ。簡易ならまだしも詳細まで見るなんて私の流儀に反するのよ。ごめんなさいね。」と言ったので「こちらこそ何から何までありがとうございます。」と言い自分のステータスに向き合い、上から下まで指でなぞりステータスの詳細説明を出した。
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種族:人族・純人種
・現存する唯一の純人種
・純人種の特徴としては、保有魔力は魔族や妖精族に劣るがその純度は最高レベルであり、少ない魔力で魔法が使えたり、その高い純度から空気中の魔力や他人の魔力と調和させることが可能。
天職:付与魔術師【固有】
・高純度の魔力により自分や他人に魔法を付与することが可能な職
・キンジ・チガにのみ使用可能
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保有魔力は多い方ではないけれども質は高いってことかな?
高純度の魔力により他人に魔法を付与することができる。か…
「ヴィーさん、魔力の純度が低いと他人に魔法を付与して強化することって難しいんですか?」
ヴィーさんは横を向き目線だけをこちらに寄越しながら口を開く
「他人に魔法を付与?難しいというか、余程互いの魔力の相性がピッタリ合わなければ他人の魔力なんて毒でしかないわよ?
それに他人を強化する魔法なんてのも聞いた事がないわ。自己強化系のスキルや魔法なら戦闘系天職であれば何かしら持ってるだろうけれど。」
「他人の魔力が毒ですか……。じゃあ怪我をした時はどうするんですか?」
「寝るわ。」
「へ?」
「よっぽど酷い怪我なら薬師のとこに行ってポーションを買うけれど、そうでなければ殆どの場合、患部に薬草を巻いて寝るだけよ。
そうすれば1日で血が止まって、骨折なんかも5日あれば治るわ。
キンジの世界はそうじゃなかったの?」
「」
絶句である。