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人間らしく

二千二十年十二月二十五日。

早乙女煉率いる米国一の反政府組織「黒い愛国者」が起こした内乱は終息を向かえる。

この内乱は「赤い聖夜」と後に名付けられる。

この内乱で大日本帝国政府は今まで極秘にして来た、非科学的技術「魔術」を公表を決断。

内乱で隠せない状況になり、発表せざるおえなくなっているのが正解である。


『今日、発表するのはこの我が国、日本が研究して来た技術の事に付いてであります。

まずは急な発表で関係者お呼び、各員にお詫びを申し上げます。

その技術と言いますのは、専門機関で長年研究しておりました、非科学的技術魔術でございます。

我が国では戦後以前から、特殊な鉱物資源「魔石」と命名した石を発見し研究を半世紀以上に渡り研究を重ね、今日制御に成功をして事を発表させて頂いた次第であります。

国民の皆様のより良い暮らしと繁栄に貢献できると確信しております。

ですが、未だにどの様に技術的発展をして行くかは未定ですので本日はこれまでとさせて頂きます』

この政権放送は全国民に衝撃を与えた。いきなり魔術と言われても、自覚しないのが普通だ。

だが、もう日本政府は後に引けない。これは高みの見物をしている、円卓の星も同じ事だ。

これで周辺諸国に情報が知れ渡ってしまうだろう、発表の段階で幾つかの国が日本に狙いを付けるのは政府関係者達は解りきっていた事だ。


少年は夢を見ていた、自分が今まで歩んで来た人生を走馬灯のように。

走馬灯は人が死を迎える直前にコマ送りで見ると言われている。

だが少年は死を迎えていた。何故、走馬灯を見ているのか、それは簡単な話だ。

生きているからだ。

「え?!生きてる!」

目を開けるとそこには見知らぬ天上が視界に入る。

「目が覚めたかい?」

そこにいたのは紫色の髪をした白衣姿の女性だ。

「え、あ、あなたは?」

「ん~、私は大日本帝国非科学研究部門細胞蘇生研究部室長の紫陽花陽(あじさいよう)だ。よろしく」

その紫に染まった髪をゆらゆら揺らし、口を開く。

「それで僕はなぜ、ここにいるのでしょうか?」

「説明すると、長くなるが良いかな?それと星下君、服を着たまえ…」

「え…」

その言葉で自分が裸であると自覚し、赤面する。


「それでは説明するとしよう。遡る事、七十二時間前だ。君の隊長がここに青ざめた顔で駆け込んで来たのが始まりだ。

君の身体は一言で言えば、死ぬ一歩手前だった。だが、微かだが、息はあった。さすがは星下の遺産だね。

それでね。風斗の注文は星下君、君の身体を元に戻して欲しいと言われた時には正直無理だと思ったね。

元は星下家前当主が開発したホムンクルスだ。人間の蘇生は慣れているが特別製のホムンクルスは初めてだったからね、正直ぞくぞくしたよ。

おっと、失礼。それでね、君の身体をいじっている時は私にとって至福の時間だったよ。日本最高峰の技術の塊だったからね。

兵器の粒子化、臓器の瞬間復元、魔力永久生成機関。これは世界どこに行っても、君の身体しか無い。

それと君の心臓である聖遺物集合核が一緒に持ち込まれたが、たったの四割しか無いと気づいた時には心底残念だと思ったね。

変わりを作るのに苦労したよ、結論から言おう。今、君の身体を動かしているのは日本製の魔石六割と聖遺物集合核の残骸だ」

「え?どういう事ですか、それ?」

話が難しく、理解が出来ない。

「全く、君は鈍いな…。まぁ良い、つまり君はほぼ人間だ」

「魔石が入ってるのに人間ってどう言う事ですか?」

「説明しよう。君は今までのように超人じみた力は使えない。今、君の身体で心臓の役割をしているのは魔石と集合核が混ざった物だ

だから、君が使える力は三割から四割だ。簡単に言うと高いビルから落ちたり、頭に銃弾が当たると即死だ」

「そうなんですか…。でも別に良いです、あんな力は無い方が」

「君は何を言っているんだ!あれは人類が夢見た妄想の塊だぞ!あれがあれば、タイムマシン、永久機関、食料問題、少子化問題、世界征服何でも叶う!」

「僕はそんな大きな事は考えてません。自分の大切なものを守れれば…」

「あくまで君は人間らしさを取るのか。風斗は選択は間違ってなかったのか…」

二千二十年十二月二十八日非科学部門第五部隊所属星下幻徒が第三区画大日本帝国細胞蘇生研究室最下層部にて目を覚ました。


「はぁ…」

八雲明は軍所属のベットの上で溜息を吐いていた。

「明、溜息ばかり付いてもどうしようもないぞ?」

「でも…」

「解ってるけどよ…。俺だって、辛いんだよ」

「あんた達ね…、何時までそんな事言ってんのよ」

「いや、お前が一番解り易いわ」

病室で第五部隊の三人が暗い空気を作り上げる。その状態が内乱が終わってから三日続いている。

「はいはい。暗くなるのも良いけど、怪我を治すのが先よ」

清水女医が呆れながら、病室に入って来る。

「涼子さん…、でもやっぱり割り切る事なんて出来ません」

明が沈んだ声で言葉を発する。

「割り切る事なんてしなくて良いわ。誰だって、大切な人がいなくなれば悲しむわ。でもあなた達は怪我人何だから

怪我を治す事を優先しないさい。身体が良くならなかったら、悲しむ事も出来ないわよ」

「はい…」

そんな時だ、見慣れた人間が病室に入って来る。

「ふうちゃん!外出許可は出してないでしょ!どこふらふらしてたの!」

完治していない怪我人が外に無断で出た事に驚くと同時に怒りが込み上げてくる。

「ち、違うんだよ!ちょっと、用事があってな…」

「言い訳は聞きませんよ!せめて、私に一言言ってくれれば良いのに!」

「そんなのに怒るなよ…、お前達に紹介したい人がいてな。その人を連れて来たんだ。入ってくれ」

「はい、失礼します」

病室に入ったその姿はこの七ヶ月毎日共に過ごした戦友に良く似ている。

否、これは本人と言っても差し控えない。だが、違うとすれば左目が虹色に淡く輝いている事だけ。

「幻徒!」

「星下!」

「ダーリン!」

「星下君!」

完全に死んだと思っていた星下幻徒が目の前に現れ、嬉しさのあまりに四人同時に抱きついた。

「皆、痛いよ…」

幻徒自身も何故か、瞳から熱い雫が零れ来るのが自分でも理解出来た。


こんな時は人は泣いて良いのだ、人は常にハッピーエンドを望む生き物だ。

望んで良いのだ、不幸になって良い人間は誰一人としてこの世に存在しない。

これが人して、自然な感情だ。嬉しい時は笑って泣いて、悲しい時も涙を流す。

感情がどこから生まれたのかは未だに謎だが、そんな事は神に訪ねれば良い。

今は奇跡を分け合い、互いに喜びを分かち合うのが正解だろう。

これが人として生まれたと言う事なのだろうと誰もが納得する回答だ。


二千二十一年四月。

教会の鐘が新郎新婦を祝福している。幸せの鐘がこの場にいる全員を祝福している。

「おめでとうございます!」

本日の主役達を周りが祝福の声を上げる

「ありがとう!ちょっと、緊張してないで笑って笑って!」

「ん~」

なれないタキシード姿に緊張もするだうろ。今日は一生に一度しかない、結婚式だ。

それに自分の花嫁のウェディングドレス姿がまぶしくて、さらに緊張が増す。

「隊長!浮気すんたなよー!」

「しねぇよ!」

「涼子さん、綺麗!」

そうだ、今日は非科学部門第五部隊隊長八雲風斗と女医の清水涼子の結婚式だ。

大勢の人間が集まり、祝福が包み込む。

中には嫉妬が混ざっている者もいるかもしれないが、それは二人には関係無い事だ。


結婚式のお決まりと言えば、ブームトスと昔から決まっている。

これは洋式だが昨今はこの風習は国境を越えている。

花嫁が背中を向け、花束を投げる。これを掴み取った者は幸せを掴むと言われている。

多くの女性が、己が幸せを掴もうと手を出す。

「あ」

手に出来ると思っていなかったが、たまたま手に落ちて来た。

「ふふ。明ちゃん幸せになってね」

新婦が悪戯に笑う。

「は、はい!星下!幸せになるぞ!」

恥かしい事を思わず口に出してしまい、お互いに赤面する。

「ち、ちょっと!明さん!人前で何言ってるんですか!」

「す、すまない。思わず、口に出してしまった」

これが幸せだと実感する。人として、当然の感情だ。

ホムンクルスとしてこの世に生を受け。一回死を向かえ、人をして生まれ変わった。

この命はもう、一人だけの物ではなくなった。だからもう、大切な人を悲しませる事は出来ない。

今度は化け物としてでは無く、人として行こう。

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