帝都炎上編その三
季節は十二月を向かえすっかり、空は灰色に染まっている。
そんな中世間はクリスマスなどと浮かれている。この光景を鼻で笑い、小馬鹿にする。
今現在、祖国に対して謀反を計画している。順調では無いが、確実に準備は整い始めていた。
その光景に心が踊らずにはいられない。窓の外を眺めながら、自然と表情に笑みが生まれた。
その時だ、携帯小型端末に連絡が入る。
「私だ」
『ミスター煉。もう少しで準備が出来る』
「了解した、私も後で向かう。さすがだな、オーズリー』
『褒めても何もでないぞ?それより、本当に良いのか?自分の国に』
「愚問だな、私はとっくに覚悟は出来ている。それは君達が一番良く知っているだろう、それでは」
十二月中旬、中華大連合。北朝鮮、港にある倉庫。
「おい!そこ、飛翔外装と電磁砲は丁寧に運べ!」
「はい!すいません!」
倉庫内では佐渡城塞に攻め込む為の準備が進めれいた。
その作業員は元黒の愛国者幹部のコリー・オーズリーとその下部組織黒い旗である。
「後でボスとミスター煉が来るからな!仕事はちゃんとしろ!」
黒い旗。黒い愛国者の下部組織であり、主に資金調達や戦闘などを行う。
一言で言えば、チンピラの集まりである。
「調子が良い見たいだな!オーズリー」
「あ?誰だ?火縄か、邪魔するならあっち行ってろ」
後ろを振り向くと髪が真っ赤な少年が表情に笑みを作り、木箱の上に座っていた。
「良いのか?俺にそんな口聞いて?先行突入隊隊長だぜ?」
「それまでにしておけ、爆。彼も我々と同じ隊長格だ」
「剛斬、あんたも来てたのか?」
さらに巨漢が増え、嘆息を漏らす。
「はぁ…。邪魔しないなら好きにしてて良い、それにあんた達は戦闘員だろ?休んでろ」
倉庫の外では作業員達が愚痴を零していた。
「なぁ…。何で俺達、北朝鮮にいるんだ?」
「お前、何も聞いてないのか?これから、佐渡城塞に攻めに行くだぞ?」
「マジかよ!なんの冗談だよ!頭がイってるんじゃないか?」
「あぁ。俺も最初は冗談だと思ったが、マジ見たいだ。お前も見たろ、あのパワードスーツの量と小型なんとかってやつ」
「そう言えば、そんな物もあったな。でもよ、何で佐渡城塞なんて攻めに行くんだ?」
「内の組織を吸収した、ミスター煉が日本と戦争する為だとよ」
「マジかよ!?それ本当の話か!?」
「しっ!声が大きいぞ!これは他の奴には内緒だぞ」
「わ、解った…。でも何で、日本と戦争するんだ?確か、ミスター煉って日本人だろ?」
「それは俺にも解らん」
作業員二人が油を売っていると、現場監督に見つかってしまう。
「また、お前らか。ちゃんと、仕事しろよ」
「「すいません!」」
「それで良い」
何時もなら怒って来るのだが、今日は元気が無いようだ。この寒さが原因か。
「それとお前ら、家族と連絡してるか?」
「「え…」」
「どうなんだ」
「もちろんしてるよな!」
「あぁ!当然さ!」
「それなら良い、作業に戻れ」
現場監督の様子が明らかにおかしいのは二人の目にはっきりと映っている。
だが、何があったかは聞けない雰囲気が漂っていた。
その数時間後、早乙女煉と赤い番犬参謀長トム・アーロンが北朝鮮の港に到着した。
「皆、作業の手を止めて聞いて欲しい。私に協力してくれた事に心から感謝する」
港の倉庫で煉が隊長と作業員達を集め、演説を始める。
「私達はこれから、大日本帝国に攻め込む。その目的は怠慢に満ちたあの国を変える為だ!」
右腕を強く握り力説する。
「あの国の権力者達は自分達の懐を肥やす事しか頭に無い!世界中が抱えている問題を見て見ぬふりをし、解決しようともしない!
その力があると言うのに、自分達の為にしか使わないのだ!それが魔術だ!これは無から有を生み出す奇跡だ!
それをなぜ、世の中に公表しない!自分達は特別だと優越感に浸っているだけのエゴイストに他ならない!
だから、私はこの手で我が祖国を粛清する!」
この言葉を聞いていた人間は不思議とこの男に同調していた、あの言葉は心地が良いから耳に入る。
あの言葉は正しいと思えてしまうから、賛同してまう。
これがカリスマなのか。人の心を簡単に掴んでしまう、これは魔術ではなく早乙女煉の力なのだろう。
人を魅了する。これは指導者に必要な要素だろうと断言できる。
だが、この言葉に耳を貸さない人間が二人いた。
「なぁ…。あの人、何言ってるんだ?」
「俺は何となくしか解らないな」
「俺達には関係ないしな…」
先ほど外で作業をしていた二人は言葉の意味を全く理解できなかった。
正確にはするほどの頭が無いと言った方が正しいのか。
「それでこれから、戦争するのか?」
「そうみたいだな」
十二月の日本海は雪が激しく降り続き、冷たさが肌に突き刺さる。
その中に浮かぶ島、大日本帝国が中華大連合攻略拠点の一つ。
それが佐渡城塞である。この城塞は他国からは難攻不落の城塞と恐れられ、普段は誰も近寄らない。
正確には近寄れないのだ、周囲には常に海軍が警備をしている。
例え、日本の海域に無断で侵入して来た賊は拘束またはその場で処刑される。
だが、それを恐れない人間が早乙女煉だ。
「基地指令、所属不明の戦艦がこちらの海域に入ってきます…」
「何?そんなアホがいるのか?」
指令の視線は巨大モニターに行っていた。
「数は戦艦が三隻。こちらの警告を無視しています」
「もう一度警告しろ。それで聞き入れなければ、攻撃を許可する」
「良いのですか?あちらの方角は中華連合ですが?」
「構わん。こちらの領土に足を踏み入れたんだ、いくらでも都合がつく」
「了解」
命令が各艦に伝わり、警告が不法侵入している船に伝わるが聞く素振りを一切持っていない。
『ここは大日本帝国の海域だ、直ちに引き返せ。繰り返す…』
一隻の船が警告をするが全く聞かずに進んで来る。
『警告が聞き入れなければ、そちらに発砲する』
戦艦の砲台が進んでくる船に砲身を向けた瞬間だった。
何かが飛んでいた、何かは認識た時は光で見えなかった。
「強化外装?!」
その様子を城塞内で見ていた基地指令達は目を疑った。
自国で開発中で試作段階の物が目の前で自在に動いているのだから、驚くのは無理だろう。
「馬鹿な何故、連中が飛翔外装を持っているんだ?!あれはまだ、開発途中だぞ!それにあれは小型電磁砲じゃないか!」
巨大モニターで次々と戦艦が沈められている、この光景は誰もの想像を超えていた。
気がつけば、あっという間に佐渡城塞はテロリストに占拠されてしまった。
「初めまして、私は駐米部隊総隊長早乙女煉だ。佐渡城塞は今から帝都陥落の拠点とする」
城塞内にいた者達は皆、倉庫に閉じ込められ。身動きできない状態にされた。
だが、基地指令だけは拘束されなかった。
「早乙女総隊長…。なぜ、こんな真似をどうなるか解ってるのか!お父様が悲しむぞ!」
「おっと、それ以上喋るなよ…。頭が吹き飛ぶぜ」
「止めろ、火縄。彼は大事な人質だ」
この時自分が何をされているか解らなかった、突然、の内部が熱くなる。
「基地指令、帝都に繋いでもらえませんかね?」
「そんな事、出来るわけないだろう…」
「あなたはご自分の立場を理解してますか?拒否できる状況ですか?少し考えれば解るではずだ」
「解った…」
この情報は直ぐに大日本帝国軍帝都本部に伝わり、早乙女煉の父親、早乙女敦にも連絡が入る。
『こちら、佐渡城塞基地。緊急事態が発生した』
「はい、こちら大日本帝国軍情報です」
『直ぐに早乙女将軍と獅子王将軍に繋いでくれ!』
「了解しました」
巨大モニターに早乙女煉と基地指令が映し出され、誰もがこの映像に息を飲んだ。
『お久振りです、お父様。獅子王将軍』
「煉!どうして、こんな事を?!」
『私の要求を飲んで頂けるなら直ぐに人質も解放しますよ』
「早乙女将軍、わしが代わりに話をしよう。それでぬしの要求とはなんだ?」
『さすが獅子王将軍、話が早い。貴方達が匿っている聖遺物集合体。いや、星下幻徒を私に渡して頂きたい。
要求が通らなかった場合、我々は帝都に攻め入る。』
その口調はあくまで淡々としていて冷静だ。
『今日の零時までに回答が期限だ、良い返事を期待する』
それで、通信は切れてしまった。




