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ハーフと陣形と補習

お見合いがも無事に終了し、風斗は第五部隊の事務室に戻る。

煙草の煙で心を落ち着かせ、自分の机に向かう。

「将軍、先ほどはご苦労様でした。それで、土本の情報を頂きいたのですが」

通信モニターに映し出される将軍の顔は疲れていた。

「そうだったな…」

「どうなされたのですか?酷く、お疲れのようですが?」

「娘に怒られてしまった…。わしは疲れた、通信切って良い?」

「ちょっと、待ってくださいよ!約束でしょ!」

確かに原因を作ってしまった風斗には罪悪感が多少あるが約束も守って貰わなくては困る。

「安心せい、これは冗談だ」

表情が険しくなり、何時もの将軍に戻る。

「それで、土本が所属してる組織と言うのは?」

「赤い番犬と言う部隊を知ってるるか?」

「赤い番犬?最近在米している日本軍に新しく設立された、非科学部門の部隊名ですね?」

『赤い番犬』それはアメリカ合衆国に配備されいる、大日本帝国軍在米基地に設立された新しい非科学部門である。

最近在米基地の周辺に不可解な事件や出来事が起こり、地元警察では解決が出来ない為に設立された。

二千二十年四月に「早乙女煉」を中心に設立。

「そうだ。だがな、なかなか手が出せないだ。なんたって、あっちゃんの息子が代表だからな…」

将軍が口にする人物は早乙女敦は大日本帝国海軍将軍の事である。

この人物は「円卓の星」に所属する早乙女家の婿養子で権力も数多く持っている為、下手に手が出せない。


「円卓の星」とは、「星下家」と十二星座の司る苗字を持つ名家が中心となって組織した。

大昔から存在し、記録では日本政府設立以前からこの国で暮らしていたと言われている。

その権力は強大だが、その代わりに表社会から姿を消している。

日本に魔術が発展したのも、獅子王初代当主が魔石を発見したからだとされている。

「海軍将軍の息子って…、まさか!早乙女煉ですか!」

「そうだ、あの天才魔術師だ。探りは入れて見るがの、期待はするな」

「解りました。ですが、早乙女家の人間が幻徒を狙うのですか?」

「わしも、今回は解らない事だらけでの。だが、断定は出来ない。敵は尻尾出さない」

「そうですか、それでは通信を切りま…」

通信を切ろうとした時だった、将軍が何かを思い出し声を出す。

「風斗、ちょっと待て」

「え?まだ、何か?」

「別件でな、第五部隊に入隊希望が来てるぞ」

この時期に入隊希望何ておかしい。そもそも、第五部隊に隊員募集は出していない。

非科学部門は魔術の情報漏洩を防ぐ為、一般募集なんてしない。

ではどうやって非科学部門に入隊するかだが。まず大日本帝国軍に入隊して、魔術の適正検査を受けるて合格。

もしくわ、部隊長の推薦を受けなければ入隊出来ないはずだ。

「将軍、俺は募集なんてしてませんが…」

「そう言うな、話を最後まで聞け。こんな、有能な人材はお前にはもったいない位だぞ。わしの部隊に欲しい位だ」

「で、その有能な人材って誰何ですか?」

「名前は由紀・ブラウン、年齢十八歳。しかも帰国子女で美人だ」

「え?外人が俺の部隊に何の用ですか?!」

「外人は外人なのだが、アメリカ人と日本人とのハーフらしい。これはすごいな、向こうの名家出身だぞ。良かったじゃないか」


新兵入隊通達後、二日後の朝。第五部隊の人間が事務室に集められる。

「今日集まってもらったのは、この部隊に新しい仲間が加わります」

珍しく、風斗が真面目に話している。

「隊長、また新人が入るんですが?」

雷火が手を上げて、質問をする。

「あぁ…、俺も正直驚いている。由紀君、入ってくれるかな?」

「は~い。初めまして、由紀・ブラウンって言います!よろしくお願いしまーす!」

「あ…。君は?!あの時の?!」

幻徒が驚きで声を出す、それもそうか自分を狙っていた人間が目の前に現れたのだから。

「ダーリン!!会いたかったよ!」

嬉しさに余り、幻徒に抱きつき柔らかい感触が身体に伝わる。

「でも、何で?!ここの制服?」

「ダーリンに会いたくて入隊したに決まってるじゃない!」

この光景を見ていた、明の表情に怒りが見え始める。

「いきなり抱きつくな!破廉恥だぞ、貴様!」

「私の国では挨拶だけど?何か、問題があるの?」

「ここは日本だ!外国でないぞ!それと、星下から離れろ!」

「お前ら、静かにしろ!ミーティング中だぞ!」

何時になく、風斗が真面目になっている。


「え~、仕切り直しでと言う事で由紀君。君の得意分野は?」

「得意分野?私は水かな…」

「そうか、水か。確か、君はアメリカの名家出身だね?」

「そうだけど?」

瞳が動く度、左目が青色に輝き吸い込まれそうになる。

「一つ、聞きたい事がある。軍務経験はあるかい?」

「えぇ、そうね。向こうのオカルト部隊にいたわ」

「部隊って言うのは、赤い番犬か?」

「そうよ」

風斗は由紀・ブラウンが潜入工作員ではないかと、思考を巡らせる。

「勘違いしないでね、私はスパイじゃないわ。隊は抜けて来たわ」

「そうか…」

この表情に嘘を付いているようには見えないが相手は早乙女将軍の後ろ盾がある部隊の人間だ。

警戒はしていた方が良いだろう。

「疑われると思って、手土産として私が知っている部隊の情報を話すわ」

急に由紀の表情が険しくなる、よほど重要な事なのだろう。

「早乙女煉と土本一の情報はあるか?」

土本一(つちもとはじめ)風斗が非科学部門第一部門の第一中隊総隊長をしている時、第二中隊の総隊長をしていて同僚だった。

十年前。星下家がまだあった頃、星下邸から火災が発生しそれと同時に半径数キロを巻き込み爆発が発生。

人命救助の任務に非科学部門の兵士全員が出動、その中に風斗と土本一も居た。

この大火災の被害者は未だに正確な人数は不明であり、生存者はたったの一人だけ。

その被害者の中に土本一の妻と子供も居たとされる。この大火災後、土本は隊を除隊。

後にこの火災は「星下家大火災」と歴史に名を刻む。


「それで、早乙女煉と土本一だけどね。どっちから話せば良いの?」

「早乙女煉から頼む。それと、幻徒を狙ってる目的だ」

「情報って言っても、早乙女煉に関しての情報はほとんど知らないわ」

「それじゃ、話にならないな」

「知らないと言うより、ほとんど表に出て来ないのよ。幹部達は会議で会うらしいけど素顔は知らない見たいね」

素顔が知られていない。これを聞いて、ある事を思い出す。

「それはもしかして、仮面を着けているんじゃないのか?」

「あら、知ってたの?その通りよ、早乙女煉は誰にも素顔を見せた事はないわ。噂では、顔に大怪我をしているとか」

「それで早乙女煉について知っている事は?」

「う~ん、そうね。特に無いわね」

本当にこれで終わりなのだろうか、疑念が頭の中で駆け巡る。知りたい事が山ほどある。

もどかしさだけが、胸の中で膨れ上がる。

「あ!後、一つだけ知っている事があるわ!私が星下幻徒捕縛部隊に入ったばかりの頃に二人で何か話してたわね」

「ちょっと待て、その捕縛部隊について説明してくれないか?」

「良いわよ、私が前まで付いていた任務が星下幻徒捕縛作戦。それを実行する部隊が星下幻徒捕縛部隊よ」

「だが一つ疑問がある。何故、部隊で動いてはずなのに単独で動いていたんだ?最初から、全員で来れば良いだろう?」

「力を測るためとか…、どうとか。それ以上は解らないわ」

「そうか、ありがとう。それで、二人で話してた内容について聞かせてもらえるか?」

「部隊に入ったばかりの頃の話なんだけど…」


彼女が話した内容はこう言う内容だった。

たまたま、米国駐在大日本国軍基地内通路を歩いていると誰も使われていない部屋から聞き覚える声が聞こえて来たのだ。

『これは私の悲願でもあり、あなたの悲願だ。必ず…』

『はい、必ず。人形を捕らえて…』

ドア越しで聞き取り辛く微かに会話にしか聞こえなかった。


「人形?確かにそう言ったのか?」

「たぶんね。私もたまたま通りかかっただけで、良く聞こえなかったわ」

「人形か…。なんの事を意味してるんだ」

「私の知っている事は全て話したわ。これで、疑いは晴れたかしら?」

この娘、勘が鋭い。風斗が疑っている事を見破っている。

「疑ったわけじゃない、ありがとう」


ミーティングが終了し訓練が始まるが今日は何時もと違っていた。

何時もなら黒川教官がいるのだが、何故か風斗が待っていた。

「今日はお前達に陣形の訓練を受けてもらう」

「風斗さん、黒川先生は?」

「あぁ、あいつは今日は別の隊を見てるからな。今日は俺が見る」

集められた四人中三人は不安の表情を浮かべる。

「何だよお前ら、俺じゃ不満なのかよ!」

「一度も見てくれなかったじゃないですか…」

幻徒が真面目な表情で言葉を漏らす。

「だって、仕方ないじゃないか!隊長も忙しいの!大変なの!」

「確かに隊長職は激務だ。星下、理解してやれ」

明が助け船を出し、頼りない隊長を庇う。


「話を戻す。さっきも言った通りに陣形をお前達に覚えてもらう」

「隊長、何で今までその訓練をしなかったんですか?」

雷火が軽く質問をしてみる。

「理由は幻徒を守る為だ。だが、勘違いしないでほしい。幻徒を特別扱いしている訳ではない」

「僕を守るってどう言う意味ですか?」

自分を守ると言われて、疑問を持たずには居られなかった。

「皆が知っている通り、敵はかなり手ごわい。特に土本一はかなり強い、俺一人で抑えられる自身ははっきり言って無い。だから、チーム全員で力を合わせる」

あれだけの力を持っている風斗さんが、自信がないと弱音を言わせる相手はよほどの兵のだろう。

「それで、陣形って何をするんですか?」

「そうだな…。ここじゃ出来ないからな、場所を変えよう」

道場を出て、施設のシュミレーション室に向かう


大日本帝国軍の訓練施設は身体を鍛える以外に技能を身につける場所がある。

それが、仮想実戦訓練室である。

広さは学校の体育館程度。

「へぇ~。こんな部屋があるなんて、初めて知りましたよ」

関心していると、風斗が口を開く。

「それでは訓練を始める前に由紀、君は実戦の経験は?」

「そうね…。片手くらいかしら」

「そうか、なら良いんだ。では今日やる陣形だが、おい幻徒。ここに立て」

「ここですか?」

風斗に指定された位置に移動する。

「次に雷火、幻徒の右翼。明、幻徒の後ろ。由紀は左翼。各自、一定の距離を取れ」

まるで、十字を連想させる配列だ。

「これが、方円と呼ばれる陣形だ。四人になったから、丁度良いな」

「風斗さん、それでどうするんですか?」

「簡単だ。その陣形を使って俺の攻撃を耐えるか誰か一人でも俺に攻撃を当てられたら、今日の訓練は終わりだ」

一瞬だけ、四人は簡単だと思ってしまった。耐えるかこの中の一人が攻撃を当てれば良いだけ。

だが、それは間違いだった。

「じゃ~、始めるぞ」

『システムを起動します』

機械的なアナウンスが流れると周りの景色が一瞬で平原に変わる。


結果だけ言うのであれば、惨敗だ。

風斗の速さが以上だったのだ、目で捉える事が出来ないのだ。気が付けば後ろに居る。

それに翻弄され、結局誰も攻撃を当てられなかった。

「まだ痛むな…」

「隊長も少しは手加減しろよな…」

雷火と幻徒は訓練から開放され、シャワー室で汗を流していた。

「雷火さん。何で、風斗さんは急にあんな事をさせたんですかね?」

「恐らく、今度の敵は隊長でも敵わないかもしれないと思ったんだろう。確かに土本さんは強いよ」

珍しく、雷火も険しい表情になる。

「そんなに、強いんですか?土本って人は?」

「あぁ、俺も詳しくは知らないが実力は隊長と互角だな」

「そうなんですか…」

部隊の人間がここまで言わせる敵だ、苦戦は免れないだろう。

それを考えると自然と表情が暗くなる。

「大丈夫だって!落ち込むな!お前もあんな力持ってるし、俺達が付いてる、安心しろ」

「は、はい!僕ももっと、強くなります。そろそろ上がりますね。ん?」

この時、左側の脇腹に視線を向けると切り傷のようなものがあったが特に気に留めなかった。


シャワー室から、出て脱衣場に戻る。

「誰からだろう?虎雄?」

情報端末に一通のメールが届いていた。

『軍隊はどうだ?元気にやってるか?学校はそろそろ、夏休みに入るぞ。それとお前、全教科補習だってよ』

「え?補習…。補習?!」

すっかり、自分が学生と言う事を忘れていた。

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