第1話 2人の始まり〜入学式〜
1話〜4話を改稿いたしました!
前読んだ方もこれからの方も読みやすく、面白くなりました! More And Moreに!
ここは東京のどこか。
君達がこれから体験するのは波瀾万丈なひかりの学園生活。
笑いの中には恋愛、感動、シリアスが詰まっている。
さあ、そろそろ時間だ。
数奇な運命を共に見ようではないか。
***
「起きなさい!」
母親の声が部屋に響き渡った。
晴れ渡った空のもとで暖かく心地よい空気に包まれて、すやすや眠る可愛くてすらっとした少女がいた。
布団をお腹だけに掛け、幸せそうな顔で寝ていた。
その横で、スーツ姿で化粧の途中の母親が焦りながら揺さぶって起こそうとしていた。
「ひかり、起きなさい! もう9時よ。どんだけ寝たら気が済むの。あんた入学式なのに遅刻よ」
——その声に応えるように、ひかりは起き上がった。
「おはよう」
ひかりは眠たそうに目を擦りながら、呑気に母親に言った。
「おはようじゃなくて、早く準備しなさい!
ほら見て9時すぎてるのよ!」
母親はベッドの上に置いてある時計をひかりに見せつけた。
「なんだ、まだ9時じゃん。いいでしょ別に休みなんだから——おやすみ」
ひかりは眠たそうにしながら言い、横になった。
「なに寝ぼけたこと言ってんの! 今日は入学式で高校生活が始まるでしょ!」
と母親は言い放った。
ひかりは寝ぼけた脳を動かして、状況を理解したと同時にガバッと起き上がり、急いで準備を始めた。
「なんでもう9時なの体感1時間くらいしか寝てないのに!」
「ひかり、10時には寝てたわよね? 11時間寝てるのよ! ほぼネコじゃない」
母親は改めてひかりの睡眠時間を認識して、目を丸くして驚いた。
そんな母親に目もくれず、ひかりは、
「なんで、お母さん起こしてくれなかったの!」
と理不尽なことを言い放った。
「起こしたわよ!」
母親はライオンのような覇気を放ち怒った。
ひかりはピンと背筋を伸ばして、完全に目が覚めた。
「ご、ごめんなさい」
「早く準備しなさい! 遅刻はするけど入学式までには間に合うから」
ふんっ、とひかりは自信あり気に鼻を鳴らして、
「まだ遅刻じゃない」
と言った。
次の瞬間——『“変身”」
その掛け声の後、ひかりの体が謎の光に包み込まれ、部屋から溢れるくらい輝いた。
光が消えると紺のブレザーに赤のリボンが特徴の制服姿になっていた。
寝癖が直り、髪がセットされ、ポッチー——細長いスティック状のプレッツェルにチョコがかかったお菓子——のヘアピンをして、眠そうだった顔はスッキリとした顔になり、準備万端の姿になった。
それを見た母親はため息をつき、言い慣れたようにスラスラと口にした。
「ひかり、なんども言ってるわよね。
魔法は困ってる人のために使いなさいって。
使い方次第で人を貶めることも幸せにさせることもできるんだから」
言い方は優しく諭すように言った。
「アタシがいま困ってるから。——いってきます」
母親の言うことを聞かず、駆け足で家を出た。
家を出たひかりは階段をジャンプで降りて、走ってマンションを後にした。
だが、このまま行けば遅刻は免れない。
そこでひかりはいつもやっているように、
「お母さんには悪いけど——『透明』プラス『浮遊』」
と言った。
ただそれだけのことなのに、ひかりの体は一瞬で消え、ふわっと浮き始めて、すぐにマンションより高く上がった。
そして、ひかりは空中に床があるかのように全力疾走で学校に向かって行った。
「これで学校まで一直線、遅刻せずに間に合う!」
***
私立醒頼高校——生徒の自主性や主体性を重視しており、校則は緩い高校。
校門には誰もおらず、静寂に包まれていた。
ひかりはそこに透明化を解除して普通に地面を走ってやって来た。
ひかりがスマホで時間を見ると、9:55だった。入学式が始まるのは10時からで刻一刻とせまる。
息が切れながらも力を振り絞り、全力疾走で講堂へと向かった。
講堂の扉を目の前にし、扉を開けた。
「“セーーーーフ!!!!”」
ひかりはつい心の叫びが漏れてしまい、その声は講堂中に響き渡った。
皆が一斉に振り返り、ひかりに視線を向けた。
ノミを見るかのような、冷ややかな目がひかりを突き刺した。
「あはは」とひかりは愛想笑いをし、急いで席へ向かった。
入学式は退屈で、周りからの視線と合わせて地獄のような時間を過ごした。
入学式が終わり、教室へ移動した。
ひかりはやはり周りの目が気になり、話の内容が左から右へ流れて、頭に入って来なかった。
今日の予定が終わり皆が帰る支度をしていると、ひかりと母親は職員室に呼ばれた。
***
職員室に行くや否や早々に、
「入学式早々に遅刻とはどういうことかね?
それになんだセーフって……ほんとなんだ?」
と生徒指導が怒りと困惑の表情を浮かべ、問いただした。
「そうよ、なんで遅刻したの? お母さんより早く出たじゃない」
「それは……じつは……間違えて、“中学校”に行っちゃった。あはは」
ひかりはヘラヘラしながら言った。
「あはは、じゃないだろ。高校生としての自覚がなってない!」
生徒指導は顔が赤くなり怒り心頭で怒鳴った。
「高校生の自覚ってなんですか?」
ひかりは純粋な気持ちで質問した。
「えっと、それは……あれだ!! 分かったか!!」
「あれじゃ分からないよ」
「あれがあれであれだから、ちゃんとしろ!!」
生徒指導は勢いで押し切った。
「すみません。家でもちゃんと言い聞かせるので」
母親は何度も何度も申し訳なく、身を縮こませて謝った。
「すみません、気をつけます。」
ひかりも一応謝った。
その後も説教が続き、家に帰ってからも母親から説教された。
ひかりは精神的にも身体的にも疲れた様子で、高校生活初日は終わった。
***
翌日——。
母親が7時から起こすが、ひかりはすやすやと快眠していた。
結局、この日もドタバタして学校に向かった。
この日は授業はなく早めに帰れる。ひかりは教室に残りクラスメイトの明るい感じで背の高い女の子と話していた。
「そういえば、今日来てない子いたよね。どうしたんだろう?」
ひかりはクラスメイトに投げかけた。
「昨日も来てなかったね。入学式に来ないなんて心配だ」
「えっ?!昨日も来てないの?」
ひかりは天地がひっくり返ったように驚いた。
「うん、昨日先生が言ってたよ! もう忘れたの?」
クラスメイトは優しく教えてくれた。
(そうだったんだ。昨日は周りの視線で頭いっぱいで気づかなかった)
「そうだったかも。あはは」
その子と話を終えるとひかりはなんで休んでるか気になって、職員室に向かった。
***
「失礼します——先生、聞きたいことあるんですけどいいですか?」
ひかりは全体を見渡して、担任のそばに行き聞いた。
「いいよ。聞きたいことってなにかな?」
担任は目の前の仕事を中断して、質問を返した。
「昨日と今日休んでる子はなにがあったんですか?」
すると、担任は黙り顔を曇らせた。
少し経ってから重い口を開いた。
「鈴木さんは、入学式の前日に家の階段で転落して腕を骨折して入院している」
「え?……その子大丈夫なんですか?」
ひかりは眉を落として、不安な目で担任を見ていた。
「当分は学校に来れないそうよ」
「……アタシ、お見舞いに行ってきます!」
ひかりはそう言うと、走り出して職員室を出ようとした。
「ちょっと待ちなさい、まだ病院の場所言ってないわよ
担任は慌てて大声でひかりを呼び止めた。
ひかりはUターンして戻ってきた。
「あはは、つい気持ちが先走っちゃって。その子はどこに入院してるんですか?」
「ちょっと待って。今メモ渡すから」
担任は紙に病院と部屋の番号を書いて渡した。
「はい、これが入院してる場所。
あと頼み事していいかな? プリント渡してきてくれない?」
「はい、いいですよ」
「プリントは机の中に入ってるから、よろしくね」
ひかりは教室に戻り、プリントを持って病院に向かった。




