表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AIを使うと馬鹿になる?――その答えをAIと一緒に考えてみた  作者: 山田りく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/13

【第4章】幼児に学ぶ「接続確認(チャンネル合わせ)」の技術

 大人がAIの提示する「綺麗に整えられた一般論」に流され、思考を省略してしまう一方で、この罠に絶対に引っかからない強力な存在がいます。それが「幼児」です。


 幼い子どもたち、特に二歳や三歳の幼児と会話をしたことがある人なら、彼らのコミュニケーションがいかに「非効率」で、しかし同時にいかに「本質的」であるかを知っているはずです。


 例えば、ある日の夕方、幼児が母親に向かってこう言ったとします。


「ミルクが飲みたい」


 母親が冷蔵庫を確認すると、あいにく牛乳は切れていました。そこで母親は、大人同士の感覚で「正しい解決(結論)」を提示します。


「今、お家にミルクはないよ。だから我慢してね」


 大人同士の会話であれば、これで「情報のやり取り」は終了です。現状を把握し、諦めるという次の行動に移ることができます。しかし、幼児はそうはいきません。高確率で「嫌だ! ミルク!」と激しく泣き叫ぶか、「違う! そうじゃない!」と怒り出します。


 大人はここで「もう、ワガママを言って困らせないで」と思ってしまいがちですが、実はここで幼児が怒っている理由は、単に「ミルクが飲めなかったから」だけではありません。彼らが憤慨しているのは、母親が「自分の言葉をまだ受け取っていないのに、勝手に会話を終わらせたから」なのです。


 幼児とのコミュニケーションにおいて、大人が最も犯しやすいミスは、この「接続確認」をすっ飛ばして「答え」を出してしまうことです。


 この場面で本当に必要だったのは、要求を叶えること(ミルクをあげること)ではなく、まずは次のような言葉を返すことでした。


「そっか、ミルクが飲みたいんだね」


 この一言は、何の解決にもなっていません。ただ子どもが言った言葉をオウム返しにしているだけです。しかし、これこそがコミュニケーションにおける「接続確認」です。


「私は今、あなたの言葉をしっかりと受け取りました」

「あなたと同じチャンネルに入りましたよ」


 というサインを送る。子どもはこの接続確認を受け取って初めて、「自分の電波が相手に届いた」という安心感を得ます。その土台(信頼関係)ができて初めて、


「でもね、今はお家にないんだ。明日買いに行こうね」


 という、現実の話(結論)を受け入れる準備が整うのです。


 幼児の会話は、大人から見ればじれったいほど時間がかかります。大人のように文脈を「高速省略」することができないため、彼らは一歩進むごとに「いま、繋がってる?」「ズレてない?」と、しつこいくらいに接続確認を求めてきます。大人なら「まあ、そういう意味だろう」と適当に補完してスルーするような小さな言葉のニュアンスの違いにも、幼児は「違う! そうじゃない!」と敏感に反応します。


 実は、この「幼児のしつこさ」こそが、AI時代に私たちが絶対に見失ってはならない能力なのです。


 AIは、人間が「接続確認」を求める前に、一瞬で「答え」を出してしまいます。あまりに親切で、あまりに高速なので、私たちは「チャンネルが正しく繋がっているか」を確認することを忘れてしまいます。幼児のように「違う! 俺の言いたいニュアンスはそんな小綺麗な言葉じゃない!」と突っぱねる初期衝動を失い、「まあ、AIがこう言うんだから、これで繋がっているということにしておこう」と、自分の側をAIのチャンネルに無理やり合わせてしまうのです。


 人間同士の泥臭いコミュニケーションの原点にある「接続確認」。これをサボらないことこそが、AIに脳を乗っ取られないための第一の防衛線になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ