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AIを使うと馬鹿になる?――その答えをAIと一緒に考えてみた  作者: 山田りく


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【第2章】AI時代に再定義する「馬鹿」の正体

 では、AI時代において、私たちは本当に何も心配する必要がないのでしょうか。もちろん、そんなことはありません。私たちが警戒すべきリスクは確実に存在します。ただし、そのリスクの正体は、「知識が減る」とか「計算能力が落ちる」といった、従来の「馬鹿」のイメージとは全く異なる場所にあります。


 まずは言葉の定義をはっきりさせましょう。辞書を開いて「馬鹿」という言葉を調べると、そこにはいくつかの意味が並んでいます。


  1. 理解力や判断力が劣っていること。

  2. 社会的な常識が欠けていること。

  3. つまらないこと、役に立たないこと。

  4. 程度が極端であること(「馬鹿に寒い」「馬鹿正直」など)。


 もし、AI時代の「馬鹿」を1番目の「理解力や判断力が劣ること」、つまり「知識の量や処理スピードが低いこと」と定義するならば、そもそも人類は全員、最初からAIに対して「馬鹿」です。どれほど頭の良い学者であっても、世界中の何億冊もの本を丸暗記し、数秒でその要約を出力するAIの処理能力には逆立ちしても勝てません。知識の量でAIと競うこと自体が、自動車と徒競走をするようなものであり、ナンセンスです。したがって、知識が減ることをもって「馬鹿になる」と嘆く必要はありません。そんなものはAIに任せてしまえばいいのです。


 ここで注目したいのが、4番目の意味に含まれる「馬鹿正直」や「馬鹿真面目」という日本語のユニークな使い方です。


 私たちは、単に頭が悪い人に対して「君は馬鹿正直だね」とは言いません。この言葉が使われるのは、「能力が不足している人」に対してではなく、「ある1つのルールや価値観、教えられたことを一切疑うことなく、あまりにも愚直に、極端に適用しすぎてしまっている人」に対してです。融通が利かず、状況の変化を見ずに、手渡された正論をそのまま振りかざしてしまう状態。これこそが「馬鹿正直」の本質です。


 ここに、AI時代における新しい「馬鹿」の定義が隠されています。


 AI時代の「馬鹿」とは、「知識がない人」ではなく、「提示された答えを疑えず、1つの価値観を極端に信じ込んで従属してしまう人」のことです。


 AIは非常に優秀です。私たちが何か質問をすれば、もっともらしく、論理的で、文句のつけようのない「正解」を提示してくれます。学校の先生よりも優しく、上司よりも丁寧に、私たちの話を聞いてくれます。


 だからこそ、人間は油断します。AIが出してくれた綺麗な文章、整った論理を目の前にした時、私たちの脳は「なるほど、これが正解か」と、考えるコストを支払うのをやめてしまうのです。


 かつての「バカ」は、情報にアクセスできないこと、知識を持たないことを意味していました。しかし現代、そしてこれからのAI時代の「バカ」とは、溢れる情報と完璧な回答に溺れ、「なぜその答えになるのか」というプロセスへの興味を失い、思考の主導権を完全に機械へ明け渡してしまう状態を指すのです。能力が低下するのではなく、従順になりすぎる。これこそが、私たちが直面している本当のリスクです。

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