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AIを使うと馬鹿になる?――その答えをAIと一緒に考えてみた  作者: 山田りく


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【第1章】「最近の若者は…」というエジプトからのコメディ

「AIのせいで、人間の知能は退化するのではないか」

「ChatGPTばかり使っていると、自分で何も考えられない馬鹿な大人が増えるに違いない」


 現在、メディアやSNSを見渡せば、このようなディストピア的な未来予測がどこにでも転がっています。人工知能という圧倒的なテクノロジーを前にして、私たちが漠然とした恐怖や危機感を抱くのは当然のことかもしれません。自分が頭をひねってひねって、ようやく生み出していた文章や企画書を、画面の向こうの機械がわずか数秒で、しかも自分より綺麗な日本語で出力してくるのですから、足元が崩れるような感覚を覚えるのも無理はありません。


 しかし、ここで少し深呼吸をして、人類の歴史という長い長いタイムラインを後ろにぐっと引き伸ばしてみましょう。すると、今私たちが大真面目に議論している「AIによる人類バカ化論」が、実は人類が何千年も前から飽きもせず繰り返してきた「お決まりのコメディ」の最新版に過ぎないことに気がつきます。


 歴史上有名な話ですが、古代エジプトのピラミッドの壁画や、古代ギリシャの哲学者プラトンの著書の中には、すでに現代と全く同じ言葉が残されています。


「最近の若者は、年長者を敬わない」

「最近の若者は、文字という便利な道具に頼るせいで、自分の頭で記憶することをしなくなった。彼らは本当の知恵を持たず、知者であるという錯覚だけを持つようになるだろう」


 プラトンの時代、人類にとっての「悪しき最新テクノロジー」は、なんと「文字」でした。それまで口伝で必死に暗記していた人間からすれば、ノートに書き留めればいつでも思い出せる「文字」という道具は、人間の脳を確実にサボらせる「悪魔の発明」に見えたのです。


 時計の針を少し進めてみましょう。日本でも少し前、「ゆとり世代」という言葉が社会を席巻しました。


「詰め込み教育をやめたせいで、最近の若いものは基礎的な知識がない」

「マニュアルがないと動けない」

「ググればすぐに答えが出ると思っているから、泥臭く調べる根性がない」


 当時の大人たちは、そう言って若者たちを「使えない存在」として扱いました。インターネットが登場した時も同様です。「嘘を嘘と見抜けない人は掲示板を使うべきではない」というネット黎明期の有名な言葉がありましたが、当時は「ネットの情報を鵜呑みにするバカが増える」と、やはり大人が顔をしかめていたのです。


 ところが、どうでしょう。かつて「ゆとり世代」と揶揄され、「ネットばかり見ている」と怒られていた若者たちは、今や三十代、四十代になり、社会の中心で立派に経済を回しています。それどころか、インターネットやスマホを駆使して、上の世代には想像もつかなかったような新しいビジネスや文化を生み出しています。


 そして今、まさにその「かつてゆとり世代と叩かれた大人たち」が、今度は十代の子どもたちを指さして、「AI世代は自分で考えないからダメになる」と言い始めているのです。これがコメディでなくて何でしょうか。


 いつの時代も、上の世代は「自分が苦労して身につけたプロセスや手段」を絶対的な正義だと信じ込みます。そして、新しいテクノロジーによってその苦労をショートカットする若者を見ると、嫉妬と不安が混ざり合った感情から、「あいつらは楽をしている、だからバカになっている」と結論づけてしまうのです。


 しかし、人類の脳は文字の発明によっても、印刷技術の普及によっても、電卓やインターネットの登場によっても、バカにはなりませんでした。道具が変わっただけで、人間の脳の本質はエジプト時代から1ミリも変わっていません。だからこそ、「AIを使う=人間が馬鹿になる」という単純な被害妄想から、まずは脱却する必要があるのです。

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