第28話 ジト目で睨むしか方法が無かった
「学園長、期待外れな結果でしたね」
学園の教授が言う。
「うむ。豚輩先生の魔法陣規則の新たな意義を見出してくれるのかと期待したが」
「学園長。あれがアッシュと言う男の本質です。
あれはレトリックそのものです」
強い口調で言ったのは聖女の幼馴染のギネス・マーカスだ。
「トリックか。そうとも取れるが、学生の作るものとすればそれなりの結果だ。
あれを狙ってやっているとすればそれなりの作品だな。
さすがにバインド王太子」
学園長の意見はギネスとは違うようだ。
「しかし、学園長。あの魔導砲がうまく機能したのもバインドの能力。
アッシュは他人の能力を利用して利益だけを享受しています。
騙されてはいけません」
ギネスの熱弁に学園長は黙って頷いた。
「魔無し、無属性、理論も他人任せか……」
マリウス学園長は、ギネスの言葉を噛み締めるように呟いた。
☆★☆
それから数日後、魔導国からバインドに手紙が届く。
バインドは父王からの手紙を流し読みして頷いた。
「アッシュ。我が国の魔導砲のお披露目会に我々の作った魔導砲も一緒にとのお誘いだ」
バインドが言う。
「え? あの魔導砲を?」
「そうだ。あれの作成には我も噛んでおるので、王太子の作として一緒に参加して欲しいらしい。
我がアッシュの悪ふざけの豚マークのことを面白おかしく親父に言ったからだろう。
すまぬが、お主も一緒に来てくれるか?」
「へえ、魔導国の有名な魔導砲が見れるなら参加させてもらうよ」
アッシュが嬉しそうに言った。
☆★☆
そして、アッシュとバインドは魔導砲の披露目会に参加していた。
来賓の前には数えきれない魔導砲が並んでいた。
「バインド。あれって何門あるの?」
無数の砲門の列を前にアッシュが尋ねる。
「さあな。量産の目処がついたって聞いていたがこれほどとはな」
バインドもその数に驚いている。
参列者の前に厳しい制服姿の爺さんが出てきて魔導砲が如何に凄いかを語り始めた。
「バインド、あれでセレン神聖国に攻め込むって言ってるよ?」
アッシュが驚いて聞く。
「うむ。あそこは我国を目の敵にしておる。元々、魔導王はあの国の公爵からの成り上がりだからな」
バインドが説明する。
「そうなの。知らなかったよ。すると魔導国はあの国から独立したってことだね」
「凄い昔の話だがな、あそこは未だに我国を自分の領土だと称しているよ」
技術大臣の熱弁の後、魔導砲の試射が行われる段取りのようだ。
数人の兵隊がそれぞれの魔導砲を取り囲む。
「魔法を充填し始めたな。そろそろ本番だぞ」
兵達の様子を見ながらバインドが解説する。
「あれ?」
アッシュが頓狂な声を上げる。
「どうした?」
「バインド。試射は止められないの?」
アッシュが眉を顰めて尋ねた。
「ん? どうしたんだ?」
「あれ、あのまま魔力を込めると暴走するんじゃ無い?」
アッシュが魔導砲を指差しながら言った。
だが、既に遅かった。
魔導砲から稲光が走る。
魔導砲を操っていた兵達が悲鳴をあげて砲列から離れた。
「ダメだよ。直ぐに止めないと」
アッシュが叫ぶ。
明らかに魔道具の暴走と分かる赤熱した光が魔導砲を覆う。
「暴走だ」
誰かが叫ぶ。
「止めろ。これだけの魔道具が一度に暴走したら大変なことになるぞ」
「早く止めろ」
悲鳴のような叫び声。
勇敢な一人の兵士が身の危険を顧みず、魔導砲に駆け寄ると緊急停止ボタンを押した。
しかし砲身の赤熱化は止まらず、次第に光を強くしている。赤い発光は黄色く、さらに白色に変わって行く。
「ダメだ」
勇敢な兵士は大声で観覧席に向かって叫んだ。
「逃げろ」
しかし群集にはその言葉は過剰反応をもたらすトリガーとなった。
悲鳴と怒号が辺り全体に吹き荒れる。
我先にと逃げようと走り出す人々。
今にも何千もの暴走する魔導砲が一斉に爆発してしまいそうだ。
その時、場違いなポワンと言う音が鳴る。
その音は魔導王太子バインドとアッシュが共同で作成した魔導砲だった。
砲身から無数のピンク色の光線がほとばしり瞬く間に魔導砲の列に当たって行く。
目にも止まらぬ連撃がその魔導砲より発射された。
ピンクの光線が全ての魔導砲を薙ぎ倒すのに数分も掛からなかった。
「アッシュの仕業か?」
バインドが落ち着いた声で尋ねた。
「な訳ないよ。自然現象なんじゃないの」
アッシュのいつもの口癖にバインドは苦笑するしかなかった。
「おお」
ピンク色の光線が全ての暴走する魔導砲を薙ぎ払った後、魔導王が感嘆の声をあげた。
「あれは?」
ピンク色の光線を放つ魔導砲を見て側近に尋ねた。
「はっ。あれはバインド王太子が作成された魔導砲です。
さすが天才バインド様です」
その言葉を聞いた重臣の一人が叫んだ。
「バインド殿下万歳!」
その声に呼応するかのように、バインドを絶賛する叫び声がこだました。
「いや、これは明らかにアッシュの仕業だぞ」
バインドが大声で否定するが、もはやその声は誰にも届かない。
真横のアッシュも盛大にバインドを絶賛し始め、バインドはジト目でクラスメイトを睨むしか無かった。
すみません
短編を掲載したことで掲載しているつもりになってました。
掲載が遅くなって申し訳ありません。




