(4)僕たちは異世界で〇〇に保護された
城門の隣にある建物に連れてこられた僕たち12人と、一緒に来た冒険者パーティらしき5人組。
「どうぞ、そこの席に座ってください。」
セイカさんの通訳を受けながら、示された席に座る僕たちと男のパーティメンバー。そうして、目の前に座るお役人様が口を開いた。
「ようこそ、コロラド王国ムハマルド辺境伯領プライムテニシアへ。わたくしは、『異界からの来訪者』の手続きを担当しているエンタルシアと申します。そちらの方々が、ここにいる異界からの来訪者12人の身元引受人になる予定という事でよろしいですか?」
「ああ、そのつもりでいるが・・・・・。なんでそうなっているのか理解できていない顔だな。まずはそこから説明がいるな。そこの嬢ちゃんは、俺たちの言葉が理解できているみたいだから、通訳を頼むな。」
「えっ!あっ!はい。解りました。」
こうして、再びセイカさんの通訳のもと、エンタルシアと名乗ったお役人と男の話が始まった。
まず、この世界は・・・・というか、僕たちが来た星はテラフォーリアと呼ばれている惑星で、現在地はコロラド王国ムハマルド辺境伯領プライムテニシアという町である事。詳しい事は、今は時間がないので割愛という事である。
そして、僕たちのように、他所の世界から来た者たちを総じて『異界からの来訪者』と呼称しているみたいだ。で、この世界の住民(住民登録した後は、僕たちもそれに含まれるみたいだ)にとって、異界からの来訪者を保護し、この世界になじむように導くのは義務となっている。また異界からの来訪者に対し、何らかの不条理を働いた場合は、厳罰に処されるという話である。
これは昔からの慣習みたいなモノで、異界からの来訪者はたいていの場合、集落の外に現れる事が多い。なお、町の中に現れるパターンもあるらしいが、そういった場合はとんでもない大被害が出る。この場合は、その被害の元凶である異界からの来訪者には、一切の罰則を与えてはいけない事になっている。そして積極的に保護し、生活になれるように支援を差し伸べないといけないとされている。これは、『不可抗力による大災害』であり、それを起こした本人たちには何の責任もないからだ。
確かにそうだね。
この場合、本人の意思で起こしたわけでもなく、完全に不可抗力だ。何処に落ちるのか解らないし、落ちていく際に、それをコントロールする術も持っていないのだからね。
で、町の外で保護する場合は、初めて出会った者が異界からの来訪者を保護し、この世界での暮らしが安定するまで面倒を見ないといけない事になっている。これが、先ほど話題に上がっていた『異界からの来訪者にたいする身元引受人』であり、僕たちの場合はここにいる5人の冒険者が名乗りを上げたというわけである。なお、街中で保護された場合は、その街中の行政府(ない場合は村長さん)が身元引受人となる。
また、『何処まで面倒を見るか』という問題は、双方の都合によってまちまちで基準はないらしい。たいていの場合は、ある程度の生活基盤が整うまでで、その後については、それぞれの選択肢が用意されているみたいだ。
なお、冒険者パーティに保護された場合は、そのままそのパーティメンバーもしくは、一緒に活動(暮らす)する事になる事が多いそうだ。
なお、あの行列の際、私たちをドナドナして門までショートカットしたのには理由がある。その理由とは、『異界からの来訪者を保護した者(グループを含む)は、入城の行列に並ばず先頭まで来てもよい』というルールがある為で、(さっさと町の中に入りたいと思っていた矢先)たまたま目の前に私たちがいたのでちょうどよかったという手前勝手な理由も多々含まれているそうだ。
ちなみに、僕たち12人の身元引受人として名乗りを上げた彼らは、『沙羅双樹』というBランクで集まった5人組の冒険者パーティである。
そして、僕たちに声をかけた男は、このパーティのリーダーでトーマンさんという、純人族(この世界においての人間の総称)の男性だ。ちなみに武器は、弓矢を使った狩人なのでシンヤと同じだ。
2人目のパーティメンバーはキョウカさんと同じで、徒手空拳を使うペロニカさんという兎人族の女性拳闘士。
3人目のパーティメンバーはコウジと同じで、タワーシールドとロングソードが武器の楯役であるベンゴイルという、熊人族の男性だ。
4人目のパーティメンバーはノブオと同じで、大型重量武器を振り回すパワーハイターのドワーフ族の男性、ザイアックさん。
5人目のパーティメンバーは僕やトキコさんとセイカさんを足した、魔術師兼神官さんである狐人族(それも9尾)のナンシーさん。
閑話休題。
「つまり、保護されている終了期限は定まっていないけど、保護してもらうと決めた瞬間から異界の来訪者の保護は発動しているわけですね。で、私達は保護されている期間、私たちはトーマンさんたちの指示に従い、トーマンさんたちは、保護者として私たちの安全を守る義務がある。そう受け取っても構いませんか?」
「ああ、その見解で大丈夫だ。」
「そういう事でしたら、何時まで続くか解りませんが・・・・・。私達がこの世界に慣れるまでの間、よろしくお願いします。」
セイカさんは、一度僕たちと相談の上、トーマンさんたち『沙羅双樹』のメンバーにお辞儀をした。
このまま、右も左も解らない環境に放り出されるくらいなら、目の前の人物に保護されていろいろと教えを乞うた方が得策であるとの判断である。
「身元引受人も決まった事ですので、次は我々行政上の手続きに移っていきましょう。
セイカさん。
あなたは、こちらの文字の読み書きも問題なくできますか?」
「はい、問題なく読めますし・・・・・・、書く事もできますね。」
セイカさんは、目の前に出された書類を詠み、白紙の紙を貰っていろいろと文字を書いて確認し、大丈夫だと答えた。
「では、セイカさんが、他の皆さんの代筆を行ってください。」
そういって、『異界からの来訪者』の手続きを担当しているエンタルシアは、10枚以上の書類を机の上に広げる。セイカさんはその書類を12人分代筆していき、漏れがない事を確認してもらう。
そして約30分後。
「こちらが、この町『コロラド王国ムハマルド辺境伯領プライムテニシア』を出身地としたあなた方の身分証となる市民カードです。ちなみに身分は平民(異世界人)となります。そしてこちらが、各種仮登録証となります。明日以降、今手渡した仮登録証と市民カードを持って、それぞれ指定された建物を回ってください。そこで簡単な試験を行った後本登録となります。
この世界にいきなり飛ばされて大変かとは思いますが、この世界が第2の故郷となるように楽しんでください。」
僕たちのような異界からの来訪者は、一番最初に来た行政府が存在している町や村を出身地として、この世界の身分証が発行される仕組みになっている。これは、元の世界の出身地を言われても、この世界では無意味であるからだ。
「最後に、これからの異世界生活において役立つだろうアイテムです。」
そう言って、4冊の冊子と、この冊子を入れる”小さ目”の袋が手渡される。
何かの本という事は解るが、書かれている文字が解らなのでセイカさんに翻訳してもらうと、『コロラド王国六法全書(憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法)』・『コロラド王国総合地図帳』・『コロラド王国の郷土料理全集』・『コロラド王国語修練教書』となっていた。
そのラインナップを聞いて、『何処からどう見ても、異世界人が調べたい事をあらかじめ分かったうえで手渡されている』感じがする。
特に地図と六法全書なんかは・・・・・。そして、文字や言葉についての教科書もね。
普通、地図は国家機密に当たるはずだが、この世界では『町の書店に行けば誰でも購入できるし、図書館に行けばだれでも閲覧可能なので、別に国家機密でも何でもない』との回答をもらっている。さらに、「機密扱いにしたところで、間諜などに持ち出されれば意味はない」とぶっちゃけた反応も返されてしまった。他の国はともかく、コロラド王国に関しては、地図はすでに機密情報ではないらしい。
あと、一緒にもらった小袋は、『アイテムバック』と呼ばれている魔導具で、ほかの領内ではともかくここムハマルド辺境伯では、ダンジョンから産出される特産品で大量に存在しているとの事。そのため、この大きさの小袋ならば、ダンジョンの低層でよく発見されるため、領内では財布代わりに持ち歩いている者が多い品であるらしい。この領内では、財布代わりに持ち歩くような廉価品だが、場所によっては高額で取引されているとの事で、そのあたりの情報は『コロラド王国総合地図帳』を参照してくれと言われている。
詰所を出たのは、すでに夜の帳が降りかけた時間帯だった。
トーマンさんたちに保護され、身元引受人にもなってもらっているため、私達が当分の間暮らすのは彼らの指示に従った宿屋になる。なお、トーマンさんたちは、ここプライムテニシア出身ではないため、この町には本拠地となる建物はないとの事。
しかし、すでに雪が降り始めているため、この町に長期逗留するしかないかという話である。このまま町を出て先へと進んでもいいが、冬眠する動物や魔物たちが狂暴化する時期なので、不要不急の外出は避けた方がいいとの事だ。
これが1つ目の理由で、2つ目の理由がここプライムテニシアが、魔境の隣みたいな場所に立地しているため、さらに危険度が増すらしい。
僕たちにとっても、彼らと一緒に旅をするのもいいけど、しばらくの間はゆっくりとしたいと思っていたところなので、この提案は渡りに船だったりする。
そして、どうせ旅を始めるのなら、しっかりとこの世界の事(最低限コロラド王国とその周辺国家くらいは)を勉強してからにしたい。
何をするのにも、必要最低限の知識というのはどうしても必要になってくるからね。
「まずは、君らの生活資金を調達しないといけないな。幸いにも、君たちはこの町までくる間に、いろなモノを買っているようだから、結構な金額を手にする事ができるだろう。(Byセイカさん通訳)」
そう言いながらトーマンさんは、僕たちを冒険者ギルドへとドナドナしていく。
実は、森でいろいろと狩っていた動物や魔物(どれがどうかは知らないが)の毛皮や爪などの素材になりそうな部位(ゲームの知識を総動員した)や、解体した際に出てきた球体(あとで魔石と知った)を、適当に作ったズタ袋の中に突っ込んで持ち歩いていた。もちろん、腐りやすい内臓や肉などはない。
これらを冒険者ギルドの本登録と一緒に提出したのだ。
なお、明日以降、スキップ申請というモノを受けて、ギルドランクを上げてほしいと言われている。どうも、戦闘能力があるモノを、下のランクから始める事はしないそうだ。
まあ、それはいいとして。
いろいろな素材各種を売ったところ、何と総額で約360万テラの収入があった。1人頭約30万テラの収入である。
これで、当座の生活資金は何とかなった。現金を持ち歩くのは怖いという事で、10万テラを除いた全額を、ギルド運営の口座に入金する事にした。
何かの依頼の成功報酬を清算したトーマンさんとともにギルドを出て、近くにある宿屋の部屋を取った。その後、トーマンさんとともに1階にある食堂で夕食を食べる事になる。なお、この宿屋の宿泊費は、トーマンさんたちが出してくれた。いくら30万テラ手元にあったとしても、細々とした生活雑貨などを購入したら、すぐに底をつくと言われたからだ。
確かに・・・・・。
何もない所から、生活基盤を整えていかないといけない僕たちは、1テラたりとも余分な出費は控えていった方がいい。宿泊費を出してくれるというのなら、ここはお言葉に甘えるべきである。
「これからの予定だが、お前らがこの世界の知識を得るまで、俺たちもこの町に逗留する事にしている。まあ、これから厳しい冬が始まるからな。当面は、冬が終わって雪が解けるころまでを1つの区切りにしようか。
そのため今日は無理だが、明日以降はこの町に一軒家を借りようと思う。この大所帯だから、宿屋暮らしをするよりも、一軒家を借りて生活した方が安く済むしな。で、明日以降は申し訳ないのだけど、共同生活する以上最低限の家事を分担してほしいと思う。もちろん、俺たちも家事の分担に参加するがね。(Byセイカさん通訳)」
どうも僕たちも、トーマンさんの借りる一軒家において、共同生活をする事になったみたいだ。身元引受人が決めた事なので、僕たちに拒否する権利はないのかもしれない。仮に僕たち12人だけで生活して行くにしても、早々と宿屋暮らしはやめて一軒家を借りていただろうから、この決定に文句を言う事はないのだが・・・・。
「よろしくお願いします。」
僕たちは、セイカさんの通訳の下、共同生活をスタートさせるのだった。
そんなこんなで、異世界においてはじめてになる町プライムテニシアにおいての1日目は、ゆっくりと更けていくのであった。




