【05-07】ダンジョンを攻略します(その1)
オークド村での神事も無事に終了した9月2日の早朝、私達『ご主人様とメイドさん』8人は、指導者であるガイストさんとサムさんと共に魔物大暴走の原因となっていた未発見ダンジョンへと旅立った。
村の北東側に新しく造った街道を進み、濠に架かる橋を渡ってしばらく進めば、(私が破壊していなかった)街道へと出ます。(元々あった)街道に出た瞬間、いきなり轍に乗っていた馬車の車輪がとられるトラブルがあったが、・・・・・これは仕方ないと諦める。
だって、ここまでは新しく造った道で(まだ馬車が走っていないので)轍のない状態だったが、接続した場所からは修繕していない道なのだ。当然轍だってそのままである。
また、今回のダンジョンアタックにおいて、ついでに御者の訓練もしてしまおうという事になったため、その指導者としてサムさんが同乗しているのだ。ちなみに御者の訓練を行っているのは、全会一致でヨシナリとマキである。何時でも何処でも2人の世界を作るための処置であり、またナオミチにアタックをかけている私達と、それを受け入れているのナオミチとの意見が合致し、全会一致でこう決まったためだ。なお、これに巻き込まれた形の中のガイストさんとサムさんには、しばらく付き合ってもらう事にする。
ガタガタと轍の残る街道を進む事1日。街道が眼下を流れる川と共に大きく右に曲がる場所には、先日私が魔術で再現した超電磁砲で作られた新しい道(地面が衝撃で大きく抉られているだけだが)がまっすぐに伸びている。
そんな分岐路で、馬車を止めてあえ野営を始める私達。
なおこの場所には歩哨が2人立っているし、どうもこの広場みたいな場所が、ダンジョンを見守る小隊たちの前線基地になっているようだ。それは、『ここから先は通行止め』と言った感じの歩哨が、野営の準備に入る私たちに声をかけてくる事で理解する。
まあ通常なら、もともとある街道へと向かうのだが、私たちは新しく造られた道の先に用事があるのだ。
翌日。
私たち一行は、リキュードさんの指令所を片手に駐屯地へと訪れる。
そして、封鎖されている道へと進んでいく。ちなみにここから先へは馬車で移動できないため、駐屯地で馬車を預かってもらえる事になっている。
半円状に抉られている山道を歩くこと3時間、ダンジョンの入り口らしき洞窟前に到着。
洞窟は天井の岩棚が(私の魔術によって)綺麗に崩れ去っており、その影響で中へと入る事ができなくなっている。しかし、あちこちに隙間ががるため、その隙間から魔物が時折這い出てくるのだ。
それらをちまちまと討伐しているのが、ここに駐屯している3つの小隊のお仕事となっている。
それはともかく、私たちに与えられたお仕事は、このダンジョンの本格的な攻略である。
「さて、今回の依頼内容を確認するぞ。」
ガイストさんの指示で、私たちはこのダンジョンの攻略における注意事項を確認する。今夏のダンジョン攻略では、次に示す指示がリキュードさんから出されている。
(1)ダンジョンの入り口の復旧
今のまま、入り口が崩壊したままでは、何をするにも不便である。そのため入り口付近を整地して、そ『利用されているダンジョンの仕様』というコロラド王国内の法律に則り、入り口付近を整地してダンジョンの入り口を作る事になった。これは、今後行われるダンジョン攻略村の設置のための、事前作業になるのだ。
(2)ダンジョンボスを含めて、すべていったん討伐する
このダンジョンを利用していくにあたり、現状では誰も怖くて入る事ができない。なんせ中は、たぶん魔物で溢れ返っている思われているから。そのためいったんすべての魔物を殲滅する事になっている。なお、ダンジョン内では魔物を殲滅しても、時間経過で勝手に湧き出てくる。
(3)ダンジョン内の階層数を確認し、採集素材があるかどうかを調べる
このダンジョンの構造を調べ、何階層あるのかを報告する事になっている。現状では、何階層あるのか、どれくらい仲が広いのかもわかっていない。そのため、1階層毎細かく調べていき、できる事なら中で採集・採掘できる素材のサンプルを集める事になっている。
ちなみに、並行して行うマッピング作業において出来上がったダンジョンマップについては、1階層100万テラで買い取られる事になっている。ダンジョンマップは、このダンジョンを探索する冒険者たちに高く売れるため、これほど高額でも元がひけるらしい。
(4)各階層ごとに出てくる魔物の種類を調べる
今回は魔物大暴走の後という事で、中にいる魔物は階層関係なくゴチャゴチャしているはず。しかし、いったん殲滅してしまえば、その後に湧き出てくる魔物は、各階層ごとに特定の魔物が湧き出てくるのだ。それを調べてくるのも仕事に打ちになっている。しかし、この魔物の調査はついででいいらしく、できなかった場合はここで駐屯している小隊たちのお仕事になるみたいだ。
(5)ダンジョンコアの位置を確認し、できる事なら封印を施してくる。
ダンジョンは、ダンジョンコアがなくなれば消滅してしまう。それを防ぐため、ダンジョンコアのある場所だけは封印してしまった方がいい。何かの拍子で破壊されたり持ち出されたりすると、利用する事もできなくなるからね。
閑話休題。
「さあて・・・・・っと。では瓦礫をどかすよ。どかした直後に中の魔物が溢れてくるかもしれないから、皆警戒MAXにしておいて。」
私はそう言うと、周囲を見渡して、皆が準備するのを待つ。
ここにいる全員が武器を構えたりして戦闘準備を終えた事を確認すると、私は入り口付近を塞いでいる瓦礫を魔術で操作する。まずは瓦礫を砂礫状の大きさまで粉々にしてすべていったん取り除く。
すると、待ってましたかと言わんがばかりに、コックを捻った蛇口のごとく溢れ出してくる。
溢れ出してきた魔物たちを、私たちは、ある程度確認しながら討伐していく。本来何階層にいるのかは知らないけどね・・・・・。ちなみにこっちは総力戦なため、ハクトとコクトにも出てきてもらっている。
「え~~~~~~っと。ゴブリンにオーク、あとはウルフにラビット系の魔物が多数。・・・・・それらの・・・・・亜種や上位種の多数・・・・・・っと。・・・・結構バリエーションが富んでいるね~~~~。」
私は、目の前にいるゴブリンモンクを、後ろで弓を引き絞っているオークアーチャーに向けて殴り飛ばす。吹っ飛んでいったゴブリンモンクは、背後にいた十数体の魔物を巻き込みながら、最後尾にいるオークアーチャーに激突。そのまま勢いを殺さずにダンジョンの天井に激突して命を刈り取られていった。
「あと、・・・・・・オーガもいるみたいだぞ、ほら、あそこに。」
ガイストさんが、周囲にいる数匹のゴブリンを斬り殺してから、背後のオーガーを指さす。確かにそこには、どす黒い肌をして、頭に2本の角をはやした鬼のような人型魔物がいる。
なお今回は乱戦で、魔物の真ん中に仲間いるため、広範囲殲滅型の魔術は封印していたりする。洞窟型ダンジョンのようなので、崩落の危険があるからね。最低限、異界化する第1階層に下りるまでは使わない方がいいそうだ。
そのオーガが、洞窟から出てきたところで、ぺニアが対峙する。どうも、同じ重量武器(向こうのサイズ的には普通の大きさの武器と思っているみたいだが)を扱うモノとして、挑戦してみたい相手のようなのでそのままにしておく。・・・・まあ、もっともその背後からさらに数十匹のオーガが顔を出しているんですがね・・・・・っと。
「数十匹のオーガはちょっと、まともに相手したくないですね。」
「そうだな、数十匹のオーガの相手は御免被りたいところだ。しかし、巨大な敵との戦闘経験も積まないといけないからな。1匹ずつは、ヒカリちゃんたちが相手するように。残りは一気に殲滅だな。」
「は~~~~い、分かったよ。みんなもそれでお願いね!
ところでガイストさん、オーガって、黒色の肌が標準タイプで、それ以外の色が亜種やら上位種やらでいいの?」
私は数十匹のオーガの中に混じっている黒色以外のオーガを見ながら、ガイストさんのそう聞く。そのあたりの情報には疎いからね・・・・・私。知らない事は、知っていそうな人物に聞くに限る。
『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』
そういった情報を網羅しているモノにアクセス可能だが、調べるためにはこの中に格納されている膨大な情報を検索する必要がある。時間がある時はいいが、そうでない場合は、知っていそうな人物から聞くのが手っ取り早いのだ。
「その見識で間違っていないぞ。ちなみに原色に近づくほど、強力な個体になるケースが多い。白・赤・黄・青の4色は上位種だ。そこにいる黒い奴より、数倍から十数倍は力や能力が跳ね上がるから気を付けろ。それと、1本角は女性タイプのオーガだからな。そいつらはどす黒い地肌でも、男性タイプの数倍の強さを持っているから気を付けろ。」
ちなみに、ガイストさんが示した4色のオーガは、数十匹のオーガの中に1匹ずついるのである。あとは黒い肌が15匹ほどと、残りが原色でないカラフルな地肌をしている奴が10匹いるね。そして、1本角の女性タイプは、どす黒い地肌も亜種も上位種も関係なく10匹前後混じっている。
「それじゃあ、皆はカラフルな奴らを1匹ずつお願いね。ぺニアは連戦になるけど、・・・・・大丈夫そうだね。」
私がぺニアの方を見た時、すでに先ほど対峙していたオーガ(ちなみに黒い肌のヤツ)の脳天に、巨大な槍を使って串刺しにしているところだった。対戦相手の手足は、曲がってはいけない方向に曲がっており、脳店から串刺しにされて地面に縫い付けられたオーガは、そのまま地面に建つ彫像と化した。しかし、5m近くあるオーガを串刺しにできるほどの長さのあの槍、何時作って【アイテムボックス】の中に格納したんだろうか?
「あ~~~あ、せっかく愛用していた槍なのに、これじゃあ使い物にならないよ。これはこのまま廃棄決定だね。」
どうも、昔から愛用してる槍らしい。
「まあ・・・・・、いいっか。あと数十本同じ物があるしね。」
・・・・・・それも、結構な数持っているようだ。一体あの子は、何処に向かっているのだろうか?
そうこうしているうちに、皆が武器を片手に上げて合意の合図を行ったところで、私は皆に指示を出す。なお一応このパーティのリーダーは、ご主人様(笑)である直道なのだが、戦闘時は私がすべてを仕切っている。
本人曰く、『俺、・・・・・・脳筋だから。考えるよりも、体が先に出るんだよね。戦略を考える軍師的役割は、それが得意な奴に譲るよ。俺はそいつの指示に従って動くのみさ。』だと。そして、その頭脳役が、消去法で私だっただけだ。
「それじゃあ、原色4匹は、私とコトリが相手するね。カラフルな奴は10匹いるから、それらの担当は6人でお願いね。残りのどす黒い地肌はサックっと殲滅するから。
そういえばガイストさん、あいつ等って、体液を含めて全部使い道はあるんですか?」
「ん?・・・・血液は使い道はないが、それ以外は体液含めていろいろと使えるし、それに高く売れるぞ。あいつらの精液は、加工するとすごく強力な精力剤になるんだ。それこそ、枯れた老人ですら元気になるんだよ。女性タイプの精液は、強力な飛躍になるな。それこそ、枯れた老婆ですら、即座に妊娠するようにな。」
「それって、使い道あるんですか?」
「ああ、あるぞ。俺たち庶民には関係ない話だが、王侯貴族の連中には死活問題だからな。これだけの量を回収できたら、それこそ一生遊んで暮らせるぞ。」
そうガイストさんと話をしながら私は、どす黒い地肌のオーガ15匹ほどに瞬時に近づき、風の刃を纏った右手で、サクサクと首ちょんぱしていく。モノの十数秒で、15匹前後のオーガの命を刈り取った私。気づく間もなく、首と胴体が泣き別れしたどす黒い地肌、のオーガたちは、盛大な血の噴水を周囲にまき散らしながら地面に横たわった。
・・・・・ああ。
たしかに、子宝に恵まれない王侯貴族にとっては、とても大事なアイテムの1つだよね、・・・・・これ。
まあ、いいや。
ここでオーガと戦闘するのは少し・・・・・・、どころか大変いただけない。
特にこれほどいると、小隊に迷惑がかかるからね。私のように、サクッと殺るならどうでもいい話だが、それができそうなのは見た感じコトリとぺニアくらいだろうと予想を立てる。
「小隊の皆さんは、もう少し下がってください。・・・・せめて、ダンジョンの入り口方向からは50mくらいは離れておいた方が安全です。私たちはそれより先で、オーガたちと対峙しますので。」
全体的な配置を即座に変えて、早速オーガとの戦闘準備に入る私たち。ちなみに、先ほどサクッとオーガ十数匹を殲滅した私は高みの見物・・・・・、ではなく、先頭が50m先まで及ばないようにするための補助要員となる。
『それじゃあ、宴の時間じゃ。・・・・・始めようか!』
何故か8人全員が、同じ内容を宣言してオーガに突貫していった。
未だに、ダンジョンの中に1歩も足を踏み入れていない私たちである。




