【05-05】スタンピートの翌日は・・・・・
その日は、一部の警邏の人間を除いて、日が昇るまで村総出の大宴会だった。
私達『ご主人様とメイドさん』御一行は、日付が変わる頃まではそのどんちゃん騒ぎに付き合っていたが、それ以降は『疲れているので、これにて失礼いたします』と言った言葉っとともに、大宴会会場から立ち去っている。なお、これと言って仕事のなかったガイストさんたちは、日が昇るまで大宴会に付き合っていたらしい。
ちなみに、我らがハルナちゃんは、救護所となった教会での大活躍により、予定通り『オークド村の聖女様』の称号を賜ってしまっている。本人としてはいらないらしいが、そこは私も同じである。私なんか、オークド村の住民たちには話していないだけで、この世界において最高位の聖位であり、権力者でもある『6大神の白巫女』なんだよ。これこそ、誰かにプレゼントできるモノなら、今すぐにでもプレゼントしたいものだ。
なお、ハルナと同時に、治癒神『メディサリーヌ』の神子から、治癒神『メディサリーヌ』の寵姫へと、加護もランクアップしているのだが・・・・・。
閑話休題。
翌日、NMDC23667年8月37日の昼過ぎ。
明け方まで続いたどんちゃん騒ぎの影響で、今日のオークド村はその機能が(一部の部署を除いて)すべてストップしてしまっている。
現在、宴会場と化していた村の大通りには、死屍累々の屍が無数に転がっている。
すごい熱気なので寒くないとは思うが、そろそろ冬なのに、毛布もなしに外で寝てしまって大丈夫なんだろうか?
中には全裸になって、肉布団で寝ている猛者もいるが・・・・・・。
ちなみに、私達ご主人様とメイドさんの面々も、初めて限界以上お酒を飲んだが(嗜み程度には飲んだ事はある)、それぞれいろいろな酒癖があった。酒癖については、それぞれの名誉に関わるので、敢えてここでは発表しないが。
ちなみに、あと3日で毎月1日に行われる『月初の大祭』となるが、さすがに『明日から神事があるのでこれにてバイバイ』とはいかない空気である。魔物大暴走では、おちおち神事など執り行う事は出来ず、実際オークド村の教会では来月の『月初の大祭』については取りやめると決定されている。
とりあえず収束はしているが、まだまだ原因の排除が行われていないため、完全な終息宣言はいまだ出されていない状況なのだ。
ちなみにサクラピアス大聖堂(今後は神殿と略称で呼ぶ事にする)での神事については、私たちが間に合わないと初めからわかっていた事なので、今月の神事については参加できるなら参加してほしいとだけ伝えられている。実際何事もなかった場合は、オークド村へと到着した段階で私とぺニア、コトリだけは転移でいったん帰ってくる予定だった。そしてこの転移については、神殿側も承知していた事である。
しかし、結果は魔物大暴走がオークド村を襲い、未だ収束していない状況になっている。すでに手を出してしまい、どっぷりと自体の終息の中心部分に浸かってしまった現状、私たちだけ(サクラピアスに)帰る訳にはいかなくなってしまったのだ。
そんな私たち一行(鮮血の雷の4人と、ご主人様とメイドさんの8人)は、オークド村の中心にある砦の会議室へと足を運んでいた。
「おはようございます、ガイストさん。昨日は・・・・というか、瀬在方はよく眠れましたか?」
「おはよう、ヒカリちゃん。やっぱりあの液化薬、効き目最高だわ。」
「・・・・・・おはよう・・・・・。よう・・・・2人とも。ああ~~~~ねむい。ここ数日間、禄に眠れなんだから、寝不足が祟ってるな。それにしても2人とも元気だな。がいづとな㏍菜、寝たのは俺と同じで、日が昇ってからだろ?」
「ああ、リキュードは貰ってなかったか。実はな、安眠液化薬というモノがあってな。これを飲んで寝ると、ぐっすりと眠る事ができるんだ。今回は確か、3時間で9時間分の快眠を約束するモノだったな。しかしなあ~~~~、ちょっと飲みすぎたかもしれんな。2日酔いだ。」
「そうだよね、この2日酔いはどうとも出来ないけど、安眠液化薬は必需品だよね。普段は別にいらないんだけど、袈裟みたいなどんちゃん騒ぎの日や、有事の際の休息中、あと野営を挟む移動中には、安眠液化薬はあると便利だよね~~~~。液化薬の方は足が速いけど、錠剤薬の方は長期保存ができるからね。あたしは常に持ち歩いているよ。まあ今回は、ヒカリちゃんから購入したけどね。」
私たちの会話に口を挟んできたのは、鮮血の雷の斥候役であるミュートさん。ミュートさんは、斥候役という職業上睡魔は大敵だし、さらに言えば寝不足はお肌に毒だからね。各種お薬の錠剤薬版を、1ダースずつ購入して常備しているくらいだ。
そうそう、そういえばガイストさんたちには、こうなる事があらかじめ予測できていたので、安眠液化薬をあらかじめ渡してあったんだっけか。というか、購入していたね。1本1500テラもするこのお薬を。
「・・・・そういえば、こんなお薬もあるんですが?」
そう言いながら私は、とあるお薬を【アイテムボックス】から取り出す。黄金色をした液体のお薬で、少しシュワシュワと細かい泡を出しているお薬だ。
「それは?」
「これは気付け薬ですね。今回のは、2日酔いに特化したやつですが・・・・・。」
「買うからそれをくれ!いくらだ?」
「え~~~~っと、生命力回復液化薬が1本500テラだから、・・・・700テラでいですよ?」
2日酔いの兆候があるので、ここにいる全員にこのお薬を|配って(購入してもらって)飲んでもらう。
”ゴクゴク”
お薬が効くまでは(その時の体調やお酒を飲んだ量に左右されるが、30秒~3分ほどで効き目が現れるはずだ。なお、あとでこの村にいる薬師たちに、2日酔い特化型の気付け薬と安眠液化薬の作り方を教える事になっている。
閑話休題。
気付け薬で2日酔いを改善させた私たちは、今回の魔物大暴走の原因について話し合っていく。
「それじゃあ、会議を始める前に、軽く自己紹介と行こうか。俺の名前はリキュード。この砦の隊長をしていて、村長の役目も拝命している。隊長とか、村長とか呼ばれているが、こう見えても俺は元Aランク冒険者だ。
ちなみにこの村の成り立ちは、もともとただの街道の分岐点だった場所に、俺たち『オーク・ド・カレジリア』の先代たちが、開拓拠点となる砦を建設したのが始まりだ。俺はこのた場所に、俺たち『オーク・ド・カレジリア』の4代目リーダーで、今は同じ名前で5代目のパーティが、ここオークド村周辺でで活動している。」
まずは、オークド村の面々から自己紹介が始まる。というか、顔見知りらしいガイストさんたちにではなく、私たち8人に対して行われている自己紹介である。
「自己紹介も終えたところで、今のところヒカリちゃんたちの活躍で、小康状態になっているこの魔物大暴走だが。やっぱり原因を早いうちに究明し、できるなら排除した方がいいと俺は考えている。
そして今朝早く、魔物大暴走の原因となったと思わしき場所2カ所に、一個小隊を派遣して原因を探らせているところだ。早ければ、明後日の午後あたりには、その結果が届くと思っている。」
私たちが、・・・・というか、私とぺニア、ミオの3人が、大量に湧き出ていた魔物たちを排除したおかげで、村の外を徘徊する魔物の総量が通常通りに戻ったらしい。ただし、現状は何度も言うように小康状態なため、今後いきなり増加する事もあるかもしれないという注釈付きだ。
そんな状況のため、調査団の安全もある程度確保できているため、馬による高速移動で現地まで調査に行っているみたいだ。さらに言えば私たちのやりすぎにより、調査地点までほぼ一直線の道が出来上がっているみたいで、その分迂回などを行う必要がないため、さらに時間短縮しているようだ。
それでも、馬で可飛ばして往復2日半かかるとは、原因の場所までは結構離れている事になる。
「今日の会議は、魔物大暴走の原因が何であれ、可能な限り予定を繰り上げていくために行っているが・・・・・。」
「まあ、原因と言っても、3つの要因しか考えられんな。」
「・・・・まあ、そういう事だ。そして今回は、その中でも最悪のケースという事だ。」
昨日、私とガイストさんと話していた事だね。
1つ目。
ダンジョンコアになりそこねた魔素溜まりが近くに存在している。その魔素溜まりから、大量の魔物が溢れ出している。
2つ目。
周辺にあるだろう未知のダンジョンから、中のキャパシティを超えた魔物が溢れ出している。
3つ目。
先に述べた事が複合的に発生し、結果的にこの状況になってしまっている。
そして今回の原因は、3番目の『複合的に発生』した事だと断定されている。複合要因が未知のダンジョンなのか、それとも未知の魔素溜まりなのかは、現在調査中で判断できてはいないが・・・・。
「どちらにしてもだ。オークド村から馬で1日以上離れれいるのはいただけない。せめて徒歩で半日以内なら、いくらでも利用もできたんだがな。そのため、今回は排除する方向で話を持っていきたい。ダンジョンの場合は場所にもよるが、魔素溜まりの場合は何処にあろうとも排除する。魔素溜まりだけは、この先どう転ぶか解ったもんでもないからな。ダンジョンとして定着するのなら、そこで定着させるのではなく、オークド村に近い場所で定着させたいからな。」
この砦の隊長であり、オークド村の村長でもあるリキュードさんから、今回の原因は早急に排除する方向であるという決定が下される。
ちなみになぜ定着していないダンジョン(つまりダンジョンコアだけある状態)だった場合、オークド村に近い場所で定着させたいのか。それは、次の理由があるためだ。
『ダンジョンは、周辺の穢れや淀み、発生した魔素溜まりを取り込みながら成長していく』
これにより、自然にダンジョンの影響範囲にある土地が浄化されていき、結果的に人が住める土地へと変わっていく。また、そのダンジョンの影響下にある土地は、魔物などの物理的脅威(自然環境下における脅威は除く)に対し、ある程度安全が確保されるからだ。つまりこの範囲内には、(どういった理由かは定かではないが)あまり魔物が入り込む事がなくなるというわけである。
そのため、ここテラフォーリアにおいては、たいていの大きな町の近くや町の中には、必ずと言っていいほどダンジョンが存在している。
その上で、ダンジョンコアのみがある場合は、それを持ち帰って集落の近くに定着させてしまおうというのが、ここテラフォーリアにおける一般的な考え方である。こういった事情から、たいていの大きな町はすべからず『迷宮都市』とか言われている場所が多い。なお、国家によっては、知見のダンジョンから離れた場所に都市を築く場合もあるので、一概にこの事実が世界の常識とは言えない部分もある。なお、そういった場所にある集落(町や村を含む)は、すべからず魔物大暴走の脅威にさらされている。
ちなみに、(人類が定義した)ダンジョンの種類には、その発生過程によっていくつかの分類がある。
(1)フィールドダンジョン
動植物に運ばれる事無く、発生した場所に定着。そのまま大地上をダンジョン化していったモノの総称。基本的にある程度大きくなったら成長を止めるが、その周辺には人跡未踏の魔境ができる事が多い。これが、フィールド型魔境となる。なお、異界化する事はないため、何処までがダンジョンの影響範囲で、何処からが魔境なのかは判断する事は困難である。
(2)海底型ダンジョン
大海原の海底がダンジョン化したモノで、フィールド型ダンジョンの亜種。発生原理はフィールド型と同じなので割愛。
(3)天空型ダンジョン
大気中に魔素溜まりが発生し、そこでダンジョンコアとなる事がある。ダンジョンコアは(何らかの影響で)地上に落下する事無く大気中に留まり続け、この状態のままダンジョン化する。その後、フィールド型同様にある程度で成長を止めた後、周囲を魔境へと変える。これが、天空型魔境である。なお、異界化する事はないため、何処までがダンジョンの影響範囲で、何処からが魔境なのかは判断する事は困難である。
(4)洞窟型ダンジョン
動物や魔物によって巣穴に運ばれた後、その巣穴がダンジョン化する。もしくは、自然にできた洞窟内で魔素溜まりが発生し、それがダンジョンコアとして成長、洞窟をダンジョンへと変えたモノ。その後ダンジョンとなった洞窟は、周辺の穢れや淀み、発生した魔素溜まりを取り込みながら成長していく。なお成長していく際は地下へ地下へと成長していき、ある程度成長すると異界化する。そのため、洞窟型ダンジョンの内部は、空間も時間も外とは異なる階層が出来上がり、階層毎に全く異なる環境になる。
(5)海底洞窟型ダンジョン
海底洞窟がダンジョン化したモノで、洞窟型ダンジョンの亜種。発生原理は洞窟型と同じなので割愛。
(6)水中ダンジョン
海や湖沼、大河の水中にできたダンジョンの総称。その後、フィールド型同様にある程度で成長を止めた後、周囲を魔境へと変える。これが、水中型魔境である。なお、異界化する事はないため、何処までがダンジョンの影響範囲で、何処からが魔境なのかは判断する事は困難である。
(7)体内型ダンジョン
ダンジョンコアがが、飲み込んだ動物や魔物の体内で成長した結果、その動物や魔物の体内がダンジョン化する事がある。常に移動するため、移動型ダンジョンとも呼ばれている。
この場合、その素となった動物や魔物を討伐しても、ダンジョンコアを破壊しない限りすぐに再生してしまう。特に体格の大きな動物や魔物の体内に発生する事が多いため、こうなった場合は討伐する雑のが困難になる。また、体内がダンジョン化した動物や魔物は不老不死となるため、過去にはダンジョンコアをわざと飲み込む大バカ者が現れた。なお現在すべての国家では、この行為は禁忌として厳罰対象となっている。
(8)植物型ダンジョン
植物が成長していく過程で、ダンジョンコアを吸収。そのまま植物がダンジョン化したモノ。発生後は、素となった植物は急激に成長し巨大化、その内部をダンジョン化する。なお、ダンジョンは年輪と共に成長していくため毎年のように階層が増えていくが、素となった植物自体は枯れる事無くあり続けるため、樹齢が長くなるほど複雑怪奇なダンジョンが形成される。
(9)魔法型ダンジョン
誰かが放った魔術が、偶然にもダンジョンコアを融合した際にできるダンジョン。この場合、融合した魔術の属性に沿ったダンジョンとなる。また、放たれた魔術の特性を引き継ぐため、物によっては最強最悪のダンジョンが生まれる事になる。そのため、魔素溜まりを魔術で浄化する場合は、細心の注意が必要であるが、魔素溜まりは物理で浄化できないので、魔術師にとっては非常に悩ましい問題となっている。
(10)人口ダンジョン
ダンジョン化していないダンジョンコアを、人工的にダンジョンとする際に出来上がるダンジョンの総称。この場合、ダンジョンを作る際に注がれた魔力が一番多い者が、ダンジョン全体を管理するダンジョンマスターとして登録される。人工的に創るためダンジョンを管理しやすく、また、ダンジョンマスターの交代も容易であるため、ダンジョンコアは高額で取引されている。




