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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【第5章】オークド村の異変
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【05-01】魔導具『簡易安全区域設置具(仮)』

1昼夜馬車を飛ばして、オークド村を見渡せる高台まで来た私たちの目の前には、数千数万の魔物の群れに取り囲まれたオークド村があった。


つまるところ、魔物大暴走スタンピートが起こっていたのである。


眼下には橋が架かっていたのか、破壊された橋の残骸が残っているのみ。これによって、私たちの方に魔物が来なかったと推測できる。

現在私たちは、オークド村へと続く街道の最終難関である、『チューリック峠』と呼ばれている峠を越えてきたのだ。この峠から延びている九十九折の下り坂を降りて、眼下に流れている川に架かる橋を渡れば、1㎞ほどでオークド村に到着するはずだった。

しかし、現在その橋が、、誰かの手によって破壊されており、そのおかげでこちら側には魔物が流入してきていない。


「誰がやったのかは知らないけど、あそこにある街道の橋・・・・・。破壊されていなかったら、私たちに方にもこれが来てたのかな?」


私の問いかけに、隣で状況を観察しているガイストさんがこう答える。


「・・・・・本当にな。誰がやったか知らんが、橋の破壊あれがなかったら、俺たちもここまで来る事は出来なかっただろうな。

まあ、それはいいとしてだ。問題は、どうやってオークド村まで行くかだ。」


橋の残骸の向こう岸には、ぎっしりと魔物がひしめいている。オークド村は、ぎっしりと詰まった魔物の軍勢に取り囲まれており、最低でも3日間以上孤軍奮闘しているみたいだ。

そして、魔物の群れの中には、死霊系の魔物の姿も見受けられる。たぶん死霊系の魔物(あのタイプの魔物)が発生しているという事は、魔物を殺した後の処理が追い付いていないという証拠だ。

まあ、これについては、オークド村へと侵入に成功すれば、どうとでもなる問題なので今は放置するしかないのかな?いや、ここからでも、死霊系の魔物あいつらの処理は出来ない事はないが、オークド村むこうの指揮官がわざと放置している可能性もあるからね。勝手に処理するのも、それはそれで問題だろう。


まあ、それはいいとして。


確かに、オークド村へと近づくほど、魔物とのエンカウントが増えていた事は確か。しかし、それも対処できる範囲内だったので、これと言った脅威はなかったのだ。


「本当に、どうやってオークド村へ行くのかが、・・・・大問題です。その際、ここにいる非戦闘員の扱いもね。あとは・・・・・そうですね。オークド村には、あとどれだけの兵站が残っているかです。」

「・・・・・その問題もあったな。兵站か・・・・・。肉なら腐るほどあるだろうが、それ以外となると心ぼそうだろうな。たぶんこの状況になってから、すでに3日以上経過してしまっているからな。」


オークド村へと行く方法もそうだが、ここにいる非戦闘員の皆さんをどうするのかも、大きな問題として私たちの前に立ちはだかっている。

私も考えるが・・・・。

どう考えても・・・・、ここにいる非戦闘員の皆さんが邪魔である。私たちだけなら、無理やりにでもあの中を突き進む事もできるだろうが、この人たちを護衛しながらだと・・・・・・・。

たぶん無理である。

無理ではないかもしれないが、「何の損害もなく」という条件が付けられると、それは無理ゲーだろと私は匙を投げるだろう。

そして何よりも。

今現在オークド村には、戦闘員・非戦闘員合わせてどれくらいいるのかは解らないが、兵站が底を尽きかけていいたらこの戦争はそこで終わりだ。


「ヒカリちゃん、とりあえずあの魔導具。奴らにも効くと思うか?」

「あれですか?・・・・どうでしょうか?暴走状態の魔物に実験した事はないので、ちょっとわかりませんね。」


あの魔導具は、スタンピート(こういった状況)は想定していないからね。実験した事も何ので効くかどうかは解らない。


「ちょっと、実験してみますか。」


なのでここは、実験あるのみである。

私は、仮の名前で『簡易安全区域設置具』と名付けた魔導具を1つ取りだした。その魔導具は、野球ボールくらいの球体で、導火線の付いた手榴弾のような形状をしている。

この魔導具の使い方は、導火線に火をつけて設置したい場所の中心部に投げ入れる。たいていの場合は、火を点けずにそのまま焚き木の中に放り込んで使用する方法を想定している。

そして、導火線が燃え尽きると、半径10ⅿほどの六芒星が円の中に描かれた魔法陣が現れて、その縁の中を発動後約半日間、安全地帯へと変えるのだ。ついでにこの魔導具が発動している間は、投げ入れた焚き木の火が長持ちするという副次効果があるため、『焚き木に投げ入れて使用する』方法を想定しているだけである。


「そうですね。あそこの端こあたりを狙ってみましょうか。」


そう言いながら私は、魔導具の導火線に火をつけて、ここから見える範囲で一番近い場所にある空間に転移させる。

魔導具が狙った場所に転移し、魔法陣が現れて発動すると、その発動範囲内にいた魔物たちが一斉に、その発動した空間から追い出される。その後魔物たちは、その空間内にどうやっても入り込む事ができないように見受けられた。


「・・・・・・スタンピート(こういった状況)でも、効果は抜群みたいですね。初めて知りました。」

「製作者のヒカリちゃんが、・・・・・知らない事もあったんだな。」

「私だって、実験していない事は知りませんよ?スタンピート(こういった状況)下で発動させるという事は、商品の使用条件にはありませんでしたから。」


実はこの魔導具、例の古代遺跡にあった本から再現したモノであり、その本のでもスタンピート(こういった状況)での使用事例はなかったのだ。


「・・・まあ、できたんだから良しとしよう。商品化した際には、取説に『スタンピート(こういった状況)においてもその効果は実証済みですが、安全を保障するモノではありません』という一文でも付け加えておけばいいだろうな。

それよりもヒカリちゃん。

現状では半径10ⅿの円状に発動しているが、それをトンネル状に改造する事は可能かい?」


ガイストさんの言葉に、設定変更の可能性をちょっと考えてみる私。

・・・・・・。

トンネル状にするのは、・・・・たぶん無理だな。どうしても「爆発する」という過程を通るので、その状態は球体になってしまう。そのため、爆発方向を固定化すれば可能と思われるが、今からそういった仕様に改造する時間はない。

となると、もう1つの可能性にかけてみるしかないかな?

そこまで考えを纏めた私は、ガイストさんにこう提案をする。


「たぶん、今からそういった方向に改造するとなると、どうしても時間がかかるのかで無理だと思います。でそういった方向にもできるように、商品化した際には、いろいろなタイプをラインナップする予定なので、そのうちの1つとして開発しておきましょう。

なので今回は、もう1つの可能性にかけてみたいと思っています。」

「もう1つの可能性?」


私の言葉に、ガイストさんは少し不思議な顔つきになる。


「はい。今まで私たちは、この魔導を使用する際に『焚き木の中に投げ入れる』もしくは、さっき私がやったように『導火線に火をつけた状態で、何処何投げる』と言った使用方法を取っていました。

つまり言ってしまえば、『移動しない状態で使用する』使い方になります。」

「・・・・・確かにそうだな。それで?」

「ではここで、『何か移動する物体』を起点に、この魔導具を作動させた場合、その起点となっている物体が移動した場合、この魔導具の動作範囲はどうなるのか。この事についても、実は実験していない事に気が付きました。」

「つまり、ヒカリちゃんの考えは、ぶっつけ本番でそれをやろうと?」

「はい、そういう事ですね。とはいうものの、魔物たちの中でそれを行うのは、リスキー以外何物でもありません。なので、ここでいったん実験をして、その実験が成功したら、改めめて魔物の群れに突貫していく予定です。突貫方法は、・・・・・あの橋を修復するのは、せっかくのオークド村(向こうさん)の作戦が瓦解するので、魔導具が発動したままの状態で魔物たちの群れの中に転移します。その後は、オークド村にある城門まで、発動させた馬車で移動していきます。

これならば、危険は多少あると思いますが、ここにいるメンバー全員でオークド村まで進む事が可能になります。」


私の作戦を聞いたガイストさんは、そっくりそのままここにいる全員に作戦を伝えていく。もちろんここに残りたいという者がいた場合は、その者の意思は尊重して無理強いはしない事になっている。その場合は、この魔導具『簡易安全区域設置具(仮)』を使う事になるのだが、現状在庫が心もとないので分け与える事は出来ない旨も伝えておく。

一応材料自体は、液化薬ポーション各種を作る分も合わせて唸るほど持っているが、製作するためにはそれなりの環境が必要になってくる。もっとも、液化薬ポーション各種については、瓶詰めしていないだけで大樽(ドラム缶サイズ)で各種1ダース単位で作ってあるのだが・・・・・。

さらに改良型である、回復量が大幅にアップしている液化薬ポーション各種(ゲームでいえば、ハイポとかメガポとか言われているヤツ)も、瓶詰めしていないだけで大樽1つ分づつの量を作成済みである。

ちなみに大樽で製作されているのは、製作工程上の問題ではなく、ただ単に私の趣味と時間の問題だけである。


閑話休題。


で、私たちの作戦を聞いた面々は、非戦闘員も含めてオークド村へと突き進む選択をした。


では早速、実験を開始する。


私は、魔導具『簡易安全区域設置具(仮)』の導火線に火をつけて、発動中心とした辻馬車の屋根の上で発動させる。辻馬車を発動させる中心にしたのは、ただ単に何かあった際中心ほど安全度が増すからだ。

魔導具が辻馬車の屋根で発動すると、屋根の高さで魔法陣が現れるが、その後球体状に発動範囲が広がっていくのが確認できた。やはり私の予測通り、この魔導具は球体状にその効果範囲を設定するみたいだ。つまり、普段は地面の下までその効果範囲が広がっているわけで、地中内を移動する魔物にも対応している事になる。


実験その1。

『何処に設置しても、この魔導具は発動するのか?』は大成功である。

結果は、移動できる物体=馬車の天井に設置しておいても、魔導具は問題なく発動している。

では次の実験その2。

『このまま移動した場合はどうなるのか?』だ。

結果は、発動した場所をそのまま維持して、動く馬車毎シールドが移動しているからだ。


「では一度、移動してみてください。」


私は、辻馬車の御者さんに頼んで、馬車を移動してもらった。

その結果は、馬車が移動すると、屋根の上で発動している魔導具によって作られた魔法陣もそのまま移動していった。

つまり、『移動した物体上で発動させた場合は、その物体と共に発動した魔法陣も移動する』という大成功な結果が導き出されたのだった。


「よし!今から、オークド村へ向けて出発する!各自、反撃に供えろ!それから、シールドに信頼をするな!常に破られるという事を想定して、あらゆる状況に対処せよ!」

『おう~~~~~!』

「特に、死霊系の魔物には注意しろ!現状では実験していないので、このシールドによって防ぐ事ができるかどうかは解らない。」

『おう~~~~~!』

「それでは出発!初めは1列縦隊で、山を下りるぞ!」


ガイストさんの号令に、戦闘員・非戦闘員含め全員が大きく右手を上げる。

その後、各自が持ち場となる馬車に乗り込んで、狭い九十九折の坂道を1列縦隊で下っていく。そうして九十九折の街道を降りきったところで、改めて街道の幅を無視して、シールド内にすべての馬車が収まるように(先頭から1・3・3・3・1のフォーメーション)隊列を組みなおす。非戦闘員の乗る馬車を内側3台に配置し、外側には冒険者と戦闘経験のある商人さんたちを配置する。


『シールドを信頼するな』


この言葉は、開発者の私にとっては喧嘩を売られているような言葉だが、なにせまだ商品化もしていない実験段階の魔導具なのだ。普通なら激怒するかもしれないが、実験と割り切っている私にとっては、誉め言葉でもある。

改良しないといけない事は、それこそ山のように存在していると思う。先ほどのガイストさんと私との会話でも、『トンネル状に展開できないか』という話もあったしね。あとは、それぞれの状況下に合わせた仕様も開発しないといけない。

そして、今回は想定していない魔物大暴走スタンピート下での使用である。さらに言えば、ガイストさんの言ったとおり、死霊系の魔物に対しては実験すらしていない。特に、霊魂系(レイス系)がどうなるか解っていないのだ。

いくら事前実験で、シールドに魔物が入り込まなかったとはいえ、油断は禁物はであり常に不測の事態を想定して行動していかないといけないのだ。


「それじゃあ、転移するよ!転移後、各自衝撃及び、シールド内にいるだろう魔物に注意!」

『了解!』

「それじゃあカウントを開始する。10・9・8・・・・・・・」


皆に確認ととった後私はカウントを開始する。・・・・・・そして。


「【集団一斉転移パーティテレポート】」


私の転移魔術が発動し、視界は一瞬で破壊された橋の向こう側へと切り替わったのだった。

そう・・・・・・。

魔物が溢れ返っている、戦場の端っこに。


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