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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【よこみち】チートな〇〇と万能聖女様(その1)
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(10)とある令嬢の日常風景(その1)

私の名前は、テレサ=センダレス。

コロラド王国にあるカスタード辺境伯の第2令嬢で、現在15歳の女の子である。

私は10歳の頃に、突然胸の動悸が激しくなる病気に罹り、それ以来激しい運動や、魔力を消費するようなことを控えるように主治医から言われ、実際それからの5年間はそのように暮らしてきた。


しかし私は、貴族令嬢でありさらに言えば、辺境を治める辺境伯(おとう様)の政治道具でもある。これについては、貴族令嬢として生まれ育った以上、実家のための道具となる事はすでに決定されている事であり、余程の事がない限り恋愛結婚などできない事は承知している。私の場合は体が弱いという事で、婚約者はいない状態で5年間暮らしていたが。そして現在においても、結婚する相手はいないのだ。

そのため体が弱いとはいえ、必要最低限の政治的活動をする義務を負っており、さらに今年成人したため、外交活動にも参加していかないといけない。それが最低限、体の弱い私を今まで育ててくれた家族に対する礼儀であり、私に課せられている義務だと信じて、積極的に動き回っているのだ。


そのため、隣国チャイナリスト王国との親善大使という重職を辺境伯(おとう様)から頂戴し、(私の体が持つ)可能な限りの外交活動をしていこうと考えていた。


今回のお相手であるチャイナリスト側も、私の事情を理解してくれており、少しでも負担にならないようにと国境の町・ウンナムノーチスで公式日程を行ってっくれており、とても感謝しているのだ。

そうしてその帰路の途中、あの事故に遭遇してしまったのだ。


ウンナムノーチスでの公式日程が終わった次の日、いきなり天候が悪化して雷雨と伴う大嵐になった。そのため私たちは、嵐が収まるまでウンナムノーチスに留まる事を余儀なくされる。

まあ、余程緊急時でもない限り、町を出る前に雨が降ったら、雨が止むまではとどまり続けるモノである。さらに嵐ともなればなおさらで、道中で何かあってバタつくよりは、嵐が過ぎ去った後に町を出立する方が賢い選択なのだ。

道中で嵐に逢ったり、雨にたたられたりした場合は、また話は変わってくるが・・・・・。


10日間続いた嵐がようやく去り、さらに道路がどうなっているかの確認のため、3日間ほど余分にウンナムノーチスに留まる事にする。なお、先遣隊を向かわせてカスタード辺境伯領の国境の町・ペンタストまで往復させているのだ。

ちなみにこの事を知っている旅商人たちも、この先遣隊が戻ってくるまでこの町で待機している。こちらもまた、この先の道中について気にしているため、先遣隊を出した私たちに便乗している形になっているのだ。

この辺りの事情は、持ちつ持たれつな部分があるので、貴族だからどうこういう話ではない。そのため、先遣隊に出した騎士にも、帰ってきた時に門で旅商人に捕まったら、この先の街道の様子をしっかりと伝えておくように言明してある。


閑話休題。


5日目の朝に、先遣隊が帰ってきて、『この先、ペンタストまでの街道は途中のトーマヘーヤ川に架かる橋も含めて問題なし』との報告を受ける。しかし私は2日前から体の調子が悪く、無理は禁物との診断を受けて今日1日は安静に過ごす事になっている。

いつもの事なので、別に構やしないのだが・・・・・。何と彼方ないのだろうか、この私の体は。


翌日の朝、何とか旅ができる程度に回復した私は、ウンナムノーチスの領主にお暇の挨拶をして、昼少し前に旅立つ事になった。

町からは順調に馬車は進み、トーマヘーヤ川を渡ってコロラド王国に入ったところで野営をする。ちょうど国境を守っている砦が橋の近くにあるので、今晩はそこで休ませてもらう予定になっているのだ。なお、チャイナリスト王国側にはこういった砦は、馬車で半日程度の場所にウンナムノーチスがあるのでわざわざ設けていない。

砦で1泊した私は、翌日の朝川沿いの街道を進んでペンタストへと向かう。

当初は順調に進んでいた馬車だが、昼過ぎになってくると、徐々に街道にできた轍に車輪を取られるようになる。どうもまだ街道は乾燥していないらしく、先に通過したであろう旅商人たちの馬車でできた轍が泥濘んでいるようだ。

まだまだ窓から見える川の水も多いので、これは仕方がないだろうと諦めて、衝撃に耐えながら座っている私。車内には手すりなどがないため、捕まる場所がないのだ。手すりくらいは付けてほしいなという願望を、あとで技師にでも相談しておこうと心のメモに書き留めた時、・・・・・・いきなり馬車がバランスを崩した。

轍に取られた馬車は、そのまま体勢を立て直す事ができずに、道路の端っこまで滑落していく。


「きゃ~~~~~!!!!」

「テ、テレサ様!」


侍女2人が私に覆いかぶさって、激しく動く衝撃を何とか和らげようとしてくれる。しかしそんな努力はむなしく、馬車は大きく揺れ動き、最終的には横転してしまった。


「きゃ~~~~~!!!!」

「テ、テレサ様~~~~~!!」


馬車の車内に絶叫がこだまする。馬車が数回・・・・・いや、十数回回転してしてから床と天井を逆にして停止した。私たちは、回転する馬車の天井や床、そして私の周囲に置かれ割れてしまった陶器やガラスなどに激しく当たり、なすすべもなく社内でぐちゃぐちゃにされていく。

そして、馬車が停止した時、私と侍女2人は、車内の中で気を失ってしまっていた。


「テレサ様、お大事ありませんか!」


全身に渡って襲う激しい激痛に耐え、気を失う直前に、私はひしゃげた扉を無理やり開けて中に入ってきた護衛隊長のトムソンさんの声を聴いたような気がした。


『・・・・・あああ。私の人生、これで終わったのかな~~~。最後はやっぱり、ベッドの上で死にたかったよ~~~~~。』


そんな事を思いながら、短い生涯を嘆きながらお迎えが来るのを待つしかなかった私だ。


「【全身走査式病理診断メディカルチェック】」


何やらとっても暖かくとても優しい力が、私に全身を駆け巡っている事に気づく。いったい誰がこの力を流しているんだろうと不思議に思い、重い瞼を開けようと頑張っていた。しかし、瞼は私の意志と反して、なかなか開いてくれない。


「なになに・・・・・。

全身打撲の上に複雑骨折。横転した際に何かの刃物が当たったのか、体中に刃物による切り傷が多数確認。少し、内臓にもダメージあり。

あとは・・・・・・、心臓に疾患あり。詳細診断の結果、心室中隔欠損(VSD)と判明。これなら何とかなるので同時進行で治療開始。脳内出血個所も多数確認、全身にも多数出血個所があり。」


指1本動かす事もできずに私は、何とか重い瞼を開けてこの優しい声の主を確認する。そこには、長い黒髪を後ろでポニテに縛った女の子がいた。


「まずは、何より先に頭の中の血を抜いて、同時に出血した場所を塞がないと。・・・・【全身走査式病理診断メディカルチェック】において、脳内の出血個所と溜まった血液の特定。

・・・・特定完了、では同時に【転移】及び【血管縫合】!

・・・・・・。

では改めて【全身走査式病理診断メディカルチェック】。・・・・よし、これで脳内の治療は完了っと。」


女の子の口から出ている単語は、いったん何だろうかと不思議に思う私。たぶん私の現状を言っているのだろうとは思うが、意味が解らない単語ばかりだ。そう考えていると、女の子から優しい陽だまりのような力が流れ込んできて、その力に抵抗できずに私は再び眠りについていく。


閑話休題。


次に気が付いた時私は、私付きの侍女のアマルーダに膝を枕にして眠っていた。


「ん・・・・・・。」

「気が付かれましたか?テレサ様?」


優しく頭をなでながら、アマルーダは私にそう問いかけてきてくれた。


「はい、アマルーダ。ここは何処ですか?」

「ここは、事故を起こした近くの街道の上です。事故の事は覚えていますか?」

「ええ。あの事故で私は、もうだめかと思っていましたが・・・・・・、まだ生きているようですね。」

「はい、私とテレサ様は助かってしまいました。残念ながらメリーヌは死んでしまいましたがね。」

「そうですか。メリーヌは助かりませんでしたか。生還出来た事を今は喜びましょう。」

「そうですね・・・・。そうだった。テレサ様が目を覚まされたら、連絡するように仰せつかっておりました。しばらくの間、席を外します。」


そう言いながらアマルーダは、近くにたばべてあった布の塊を枕代わりにして自身の膝と交換すると、テントの外へと出ていった。

数分後、私を治療していたであろう女の子とともに、アマルーダはテントに戻ってきた。


「お目覚めになられましたか?テレサ様?私は、テレサ様の治療を行ったマナミと申します。」

「はい。私の治療を行っていただき、ありがとうございます。マナミ様。」

「いえ、私とマコトは治癒魔術が使えたので、当然のことをしたまでです。さっそくで申し訳ないのですが、夕食の前に障害がないかの確認をしていきたいと思います。アマルーダさんにやった事を行いますので、アマルーダさんは、テレサ様の補助をお願いします。」

「はい、かしこまりました。マナミ様。」


何をされるのか、内心ヒヤヒヤしている私だが、それは杞憂に終わってしまった。


「では、バカにしているわけではありませんが、私の指示に従ってください。そして、その指示gsできなかった時は、無理をせずにお伝えください。」

「はい、わかりました。」

「では、まず記憶障害のテストから行います。あなたの名前と年齢、家族構成、出身地をお答えください。」

「はい。私の名前は、テレサ=センダレス。コロラド王国にあるカスタード辺境伯の第2令嬢で、現在15歳の女の子です。・・・・・・」


その後、はた目から聞いていれば、本当にバカにしているような質問をされ、私はその質問に正直に答えていく。


「記憶障害と視覚障害、聴覚障害などの感覚系の障害は、とりあえずなし。では、テレサ様。次は足と腕、手の動きの確認をしますね。まずは、ゆっくりでいいですので、膝を立ててみてください。」


マナミ様の指示に従い、ゆっくりと足を動かして膝を立てる私。そして指示に従って一旦足を延ばし、もう一度膝を立てる。


「次はそのまま蟹股になってみてっください。」


膝を立てた両足を私は、指示に従って横方向に倒していく。本来、令嬢としてはあるまじき行動だが、怪我の回復を視る事に特化すれば、マナミ様の指示は理にかなっていると感じてしまう。


「股関節や足の曲げ伸ばしは大丈夫ですね。足の指も、踝の部分も、違和感なく動かせるみたいなので、両足には障害はなし。」


こうして、全身の動きを事細かに確認されていく。


「すべての身体機能に異常はありません。これで今回の事故による怪我は、全身に渡っていた複雑骨折やそれによる内臓破裂や内部出血等、すべての怪我と骨折は完治しています。あとは、テレサ様のお体をスキャンした際に、心臓に疾患を患っていたので、ついでに治療しておきました。」


マナミ様の追加報告に、私とアマルーダは大きく目を見開き驚いた顔になった。そこでまたもや意味不明な単語が出てきたので質問する事にした私。


「心臓の疾患って何ですか?」


私の質問に、優しいまなざしで見つめて、どんな疾患があったのかを説明してくれたマナミ様。


「テレサ様が患っていた病気は、心室中隔欠損(VSD)という全先天性心疾患の1つです。本来は、幼少期に完治してしまう病気ですが、稀にそのままの状態で進行してしまう病気でもあります。テレサ様の場合は、その稀に起こる事が起きてしまっていたとご理解ください。

そしてテレサ様の場合は、軽度から中度の間なので自覚症状はほぼ皆無だったはずですが、時々軽度の易疲労性や動悸が見られていたと思われます。そのため、無理をしなければ長期間の旅行も大丈夫であり、日常生活も問題なく送れていたとおもわれますが?」


マナミ様の言葉に、思い当たる節が多々あった為思わす吹いてしまった私とアマルーダ。伯爵家お抱えの治癒術師でも匙を投げていた私の病気は、あっさりとマナミ様の手によって解明されてしまったようだ。そして、さらにうれしい事が起こる。


「その感じだと、思い当たる事がたくさんおありみたいですね。素化し今回、事故の怪我を治療するついでに、テレサ様の体を蝕んでいたこの心臓疾患も、しっかりと治療して完治させておきました。今はまだ無理でしょうが、今後は体力の回復がてら全身運動をしていく事をお勧めいたします。・・・・・そうですね。ご令嬢の全身運動としては、ダンスレッスンを行うのがいいかもしれませんね。」


この病気を患ってからは、ダンスなど踊った事がありません。そもそもあんな激しく動く全身運動は、すべて禁止されていましたし、魔力の消費は体に響くとの理由で、魔術の特訓すら行っていません。


「あのう・・・・マナミ様。魔力の消費は体に響くとの理由で、魔術の特訓も行っていなかったのですが、今後はダンスとともに、魔術の方も手を付けていってもいいのでしょうか?」

「確かに、そういった事は起こりえますので、今まで禁止されていた主治医の判断は素晴らしいモノだと思います。体力が回復したら、ダンスも魔術も、お好きなだけ特訓してくださっても構いません。

しかし今はまだ、治療した筋肉も骨も定着していないので絶対安静です。徐々に体力も戻ってきますので、私か主治医が許可を出してから行ってくださいね。」

「はい、それは重々承知しております。今までできなかった事ができるようになるのなら、もうしばらく安静にしているのは構いません。すでに5年間このままなんです。あと数カ月延びたところで、さして時間的には問題ありません。」


その後、マナミ様が用意してくれた夕食を食べて、テントの中で眠りについた私だった。


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