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異世界放浪記~ここは異世界テラフォーリア~  作者: ai-emu
【よこみち】チートな〇〇と万能聖女様(その1)
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(8)チートな聖女様の本領発揮

「マナミちゃん。」

「ええ、わかっているわ。私に、テレサ様たちを見せてもらえませんか?」


私は、コウタの呼びかけに即座に答え、護衛騎士の隊長を務めているトムソンさんと共に怪我人の元へと走っていく。テレサ様たちは、横転した馬車の隣ではなく、街道の地面が乾いている場所に、何かの布を敷いて寝かされていた。

話によると、数日前に降った雨の影響で街道にできた轍が泥濘になっていた。その時泥濘に車輪がとられて、馬車が街道脇に滑り落ちて横転。その結果、馬車の車内に乗っていた3人が骨折や打撲などの大怪我を追ってしまい、現在は馬車の外で寝かされている。で、騎士の中には、回復魔術が使用できる者は存在しておらず、添え木を当てる物理的な物理的な骨折の利用法のみを施しているらしい。

なお、この状態で、(一応治療はしてあるが)放置してかれこれ2時間前後経過しているらしい。

私はまず、マコトの力を借りながら、3人の容態を順次確認していく。


「私はテレサ様を見るから、マコトは侍女さんたちをお願い。」

「わかったよ、マナミちゃん。」


あまりゆっくりしている時間もないので、私はすぐさまマコトに手伝ってもらう。マコトも治癒魔術は使えるので、こういった場合はとっても便利な存在である。本人も認めているので、どんどん使ってくれても構わないそうだ。


「【全身走査式病理診断メディカルチェック】」


私は聖女として、怪我や病気の回復魔術を施す者として、地球の病院にあるような検査機器を魔術でできないかとマコトに相談した事がある。その結果、私の持っている属性では無理だが、マコトがCTやMRIを参考にした病理診断魔術を創ってくれた。そして、無償で私にその魔術を付与してくれたのが、この【全身走査式病理診断メディカルチェック】という魔術である。

この魔術の特徴は、スキャンした対象をそのままの状態で、3Dにして私の視界に投影する。その上で、どんな病気に罹っているか、どんな怪我をしているのかを鑑定した結果が表示される。


その結果、テレサ様が一番容態がひどい。

全身打撲の上に複雑骨折。横転した際に何かの刃物が当たったのか、体中に刃物による切り傷が多数確認できる。・・・・・少し、内臓にもダメージがあるようだ。

あとは・・・・・・。何やら心臓に疾患があるね。ついでに治療しておいてあげよう。

骨折部分も、どうしていいのか解らずに、そのまま放置している感じで、たまたま乗っていたドアらしき板の上に乗せられたままここに放置?されている。

そして現在、そのあまりの激痛故に、脂汗を全身から噴き出して唸っている。しかし、どうも頭をうっているいる感じで、脳内出血がいくつか確認でき、全身にもいくつか出血個所がある。


そして、テレサ様の横に寝かされている侍女の1人の容態は・・・・・。

こちらは全身ば僕と、左腕と左足の単純骨折。あとは、左側の肋骨が2本折れていて、全部に罅が入っている。テレサ様と同様に、あちこちから出血個所があるみたいだ。でも、命に別状はとりあえずはなし。

もう1人の侍女さんは、・・・・・・・既に息を引き取っていた。


生きている方の侍女さんには、すでにマコトが治癒魔術をかけ始めているため、私はテレサ様の治療に専念する。

テレサ様のように、ここまでの怪我をしていると、一発でパッと治療する事は無理である。そのため、1カ所ずつ順番に治療していく事になるが、その場合は一番命にかかわってくる場所から順に行っていく必要がある。

また、別の場所の治療を、誰かに手伝ってもらう事もできないのだ。治癒魔術の概念は、聖属性の魔力を患部に流し込む事によって行われるわけだが、そこに第三者の魔力が混じると、患者の中で聖属性の魔力が暴走してしまう。そのため、テレサ様の治療は、私が最後まで行わないといけないのだ。


私はまず、脳以外の体内の出血個所を塞いで、これ以上血液が外に出ていかないように処置をする。その後、体の怪我よりも先に脳内の出血個所の治療に入る。複雑に入り組んでいる脳内の血管を走査し、破裂している部分を1つずつ塞いでいく。その後、流れ出した血液を、【全身走査式病理診断メディカルチェック】を付与してもらった際に治療に役立つだろうと【転移】の魔術も付与してもらっている。その【転移】を使って、脳内に溜まっていた血液を抜いていく。

自己血輸血の際に気を付けなければいけない事は、私もマコトも勉強不足で知らないので、今回は諦める事にする。そのため、この取り出した血液は、そのまま道端に捨ててしまう。もったいないけどね。

20分ほどで脳内の出血個所の処置を終え、改めてスキャンをかける。


・・・・・・・。


脳については大丈夫。あとで確認は必要だとは思うが、記憶障害や身体的な障害もスキャン上では『問題なし』と出てる。


さて、次は体だ。でも、どうしょうか。体を治療するには、この襤褸布同然になっているが、未だに服としての機能を保持しているドレスを剥ぎ取らないといけない。でもここは外であり、周囲には男性男性がいる。どうしようかと悩んでいたら、いきなり周囲が薄暗くなる。よくよく観察してみれば、私達が使用しているテントの1つだと判明。寝ている方ではなく、何かの作業をする際に展開している方のテントだ。


「これからボクの方も、侍女さんの服を剥ぎ取るからね。一応目隠し目的と、裸にするから暖もとっておかないとね。」


マコトは、テントの上部に光球を放って明り取りの代わりにする。その後2人して、テレサ様と侍女さんの服を剥ぎ取っていった。このドレスとメイド服は、・・・・・・もうゴミだね。

まあ、それはいいとして。マコトはケンジたちに呼び出され、その都度侍女さんの治療が中断しているみたい・・・・・なんだけど、違っていたね。

あれは・・・・・、術式固定?

何やら全体を包み込むように、魔法陣が侍女さんを包み込んでいる。何をやったんだろうか?後で聞いてみよう。


「マコト。それ、何やっているの?」


ケンジたちからの呼び出しを終えたマコトに、現在行っている事を聞き出す私。


「これ?今は骨折箇所を治療するために、治癒魔術かけているんだけど、かけようとした時に呼び出されたからね。骨折用の治癒魔術の魔法陣を、付与術でこの侍女さんに付与してからあっちに行ったんだよ。そろそろ終わるかな?」


ああ・・・・・、付与術ね。マコトならではの方法だね、

・・・・・それ。私には無理だ。

付与術による骨折治療を終えたマコトは、次にステップへと進んでいく。私は私で、あらかじめ決めておいた順番で治療に専念していく。

それから2時間後、体表面に残っている傷跡以外は、すべて治療を終えた私。マコトはすでに、侍女さんの治療を終えており、侍女さんの方は体表面にあった傷跡もすべて綺麗になっていた。

さて、わつぃの方も、テレサ様の傷をすべて消してあげないとね。このままではあまりにかわいそうだし、女の子には体表面に傷跡があるのはよろしくない。

私は、最後まで残しておいた傷跡の消去を一瞬で終えるのだった。


「あとは・・・・・・、テレサ様たちの服、どうしよう?」

「たぶん、馬車の中に替えの服ぐらい積んでいると思うけど、何処にあるのかが解らないんだよね。でも、このままにしておくのも駄目だし。」

「とりあえず、外にいる騎士さんたちに聞いてくるよ。」


そう言ってマコトは、テントを出ていった。数分後、大きな旅行カバンを2つ持って、マコトは戻ってくる。


「こっちがテレサ様のドレスや下着が入っているカバンで、こっちがこの侍女さんのモノだね。2人で着替えさせよう。」


そうやって、カバンの中を取り出して、どれにしようかと悩んでいるうちに、侍女さんが目を覚ました。


「・・・ん?ここは何処ですか?」

「あっ、気が付いたんだね。まずは裸なのは、治療時にボクたちが脱がして結果だから、これについては文句を言わないでね。まずは確認するよ。侍女さんの名前は?」

「私の名前ですか?私は、テレサ様付きの侍女をしています、アマルーダという者です。」


その後マコトは、記憶に関する事を聞き出して、記憶障害や言語障害、視覚障害などのチェックをしていく。侍女であるアマルーダさんは意識を取り戻しているが、テレサ様は未だに意識を取り戻していない。


「記憶障害と視覚障害、聴覚障害などの感覚系の障害は、とりあえずなし。では、アマルーダさん。次は足と腕、手の動きの確認をしますね。まずは、ゆっくりでいいですので、膝を立ててみてください。

・・・・・。

そうです。次はそのまま蟹股になってみてっください。

・・・・。股関節や足の曲げ伸ばしは大丈夫ですね。足の指も、踝の部分も、違和感なく動かせるみたいなので、両足には障害はなし。」


全裸のままで申し訳ないのだけど、マコトはアマルーダさんに、体を動かす際の違和感がないかを順に確かめていく。マコト君に支持をされながら、私はアマルーダさんの補助をしていく。補助といっても、倒れないようにしたりするだけだが。


「アマルーダさんには、障害はありませんので、これで治療完了です。ただし、たくさん血を流しているので、しばらくの間はお仕事は控えてください。それと、ご自分の服を着たら、テレサ様の服を着るのを手伝ってください。」


アマルーダさんは、メイド服に着替えた後、テレサ様に着替えを私たちとともに行っていく。


「では、ボクたちは夕食の準備をしてきますので、アマルーダさんは、テレサ様のそばにいてあげてください。たぶん、そろそろ目覚めると思いますので、目覚めたらここにいるマナミちゃんを呼んでください。」

「はい、わかりました。テレサ様がお目覚めになられたら、マナミ様をお呼びします。」


こうして私たちは、テントの外に出ていき夕食の準備を始める。馬車に積んであった食材と、私達の手持ちの食材を使って、テレサ様たちには軽いお粥みたいなモノを作っておき、それ以外にはちょっとボリュームのある夕食を作っていく。血を流しすぎている2人なので、テレサ様たちには造血作用のある食材をふんだんに使用しているスペシャルなお粥なのだが・・・・・。

テレサ様とアマルーダさんの夕食が出来上がったころに、テレサ様が目覚めたとの報告があったので、私は、2人の夕食をもってテントへと向かう。


「お目覚めになられましたか?テレサ様?私は、テレサ様の治療を行ったマナミと申します。」

「はい。私の治療を行っていただき、ありがとうございます。マナミ様。」

「いえ、私とマコトは治癒魔術が使えたので、当然のことをしたまでです。さっそくで申し訳ないのですが、夕食の前に障害がないかの確認をしていきたいと思います。アマルーダさんにやった事を行いますので、アマルーダさんは、テレサ様の補助をお願いします。」

「はい、かしこまりました。マナミ様。」


こうして、マコトが行っていた事を、そっくりそのままテレサ様に施していく私。こういった確認作業は、世界が違っていようともやる事は同じである。いくら魔術で大丈夫と言っても、最終確認くらいはしておかないといけない。


「すべての身体機能に異常はありません。これで今回の事故による怪我は、全身に渡っていた複雑骨折やそれによる内臓破裂や内部出血等、すべての怪我と骨折は完治しています。あとは、テレサ様のお体をスキャンした際に、心臓に疾患を患っていたので、ついでに治療しておきました。」


私の追加報告に、テレサ様とアマルーダさんは、大きく目を見開き驚いた顔をしてくる。話を聞くに、この心臓の疾患はつい最近患ったらしく、伯爵家お抱えの治癒術師でも匙を投げていたらしい。それを私はついでに治してしまったらしい。

まあ、いいや。次に行こう。


「では、これがお2人の夕食になります。ゆっくりでいいので、すべて食べきってください。夕食を食べきったら、このテントを使用してもいいので、暖かくしてお休みください。」

「ありがとうございます。今日のところは指示されたとおりにゆっくりとしておきます。ところで、明日以降はどのような予定になっていますか?」

「そうですね。テレサ様の容態次第なところがありますが、移動に問題がなければここから最寄りの町まで移動をします。そして、その街でしばらく療養をしてから、本格的にカスタード辺境伯領の領都テアステリアに移動する事になります。」


私は夕食を作っている際に、護衛騎士の隊長を務めているトムソンさんと話し合って決めた事を、2人にそのまま伝えていく。すべてはテレサ様次第というところがあるが、無理をさせるわけにはいかない。そのため、テレサ様の体調がよくなるまで、ここで2泊でも3泊でもする予定である。


「では、お大事に。」


最後に私は、テンプレ通りの挨拶を交わして、テントを出たのだった。

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