表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
想い出に変わるまで  作者: 篠原皐月


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
7/17

(6)友人との語らい

 予めメールで連絡を取り、相手が通話可能な時間帯を確認してから、玲は久し振りに大学時代の友人へ電話をかけた。


「陽菜、久しぶり。元気だった? 今だったら大丈夫よね?」

「うん、子供はちゃんと寝かしつけたから平気よ。二人ともなると、もう毎日が戦場だわ~」

「本当にお疲れ様」

「それにしても、連絡してきたのは本当に久しぶりね。どうかしたの?」

 結婚や出産を契機に自然に相手の都合を考えるようになり、以前のように頻繁に連絡を取らなくなって久しく、陽菜は言外に何か重要な用件かと尋ねてきたが、玲は苦笑まじりに理由を告げた。


「ごめん、大した事では無いんだけど、五年位前に陽菜が『男避けに』と言ってくれた指輪があったでしょう? あれが初めて役に立ったから、思い出して電話してみたのよ」

「へぇ? それはまた、どういう状況下で?」

 興味津々で話の先を促してきた陽菜に、玲は昼間の経緯を説明した。それを聞き終えた陽菜は、半ば呆れながら確認を入れてくる。



「それはそれは……。面倒なお客に目を付けられたのね。一応聞くけど、その人と再婚する気は無いの?」

「二十代で離婚したり未亡人になった女は、借金を抱えていたり変な病気を貰っているかもしれないそうよ」

「うん、無いわ。あり得ない。そんな馬鹿の相手をしなくちゃいけないなんて、玲の職場ってある意味ブラックね」

 即答した陽菜に、玲は苦笑いで応じる。


「そんなに困った人がゴロゴロしていないわよ。大抵の人は、真面目に婚活に取り組んでいるから」

「それにしてもね……。あんた達も指輪の一つ位、作れば良かったのに。式も後回しにして、落ち着いたらゆっくりとか言ってたら、あっという間に桐谷君が発病しちゃって」

「……そうね」

 溜め息を吐きながら独り言のように言われた内容に、玲は控え目に同意した。するとそれで我に返ったらしい陽菜が、慌てて弁解してくる。


「ごめん! 責めてるわけじゃないのよ!? ちょっとタイミングが悪かったなと思ったら、つい口に出ちゃって!」

「うん、悪気は無いのは分かってるから」

「そう? 本当にごめん」

 そこで陽菜が本気で謝ってから、何やら慎重に尋ねてくる。


「……あのさ、玲。この際だから、ちょっと聞いても良い?」

「何?」

「さっきの人は論外だけど、本当に再婚する気は無いの? 桐谷君が死んで、そろそろ六年だよね?」

 それを聞いた玲は、苦笑しながら言葉を返した。


「別に、何年経ったら再婚しないといけないと、決まっているわけではないでしょう?」

「何となく……、玲が向こうに義理立てしているような気がして。ほら、あの気の強いお姑さん。お葬式の時の、玲のお母さんとの取っ組み合いの大喧嘩は、本当に凄くて度肝を抜かれたわ」

「……できれば、思い出させないで欲しかったわ」

 つい最近、夢で見たばかりの光景に、どうしてこのタイミングで口にしてくるのかと、玲は思わず項垂れた。しかし陽菜が重ねて問いかけてくる。


「私も思い出させたくは無かったけど、あのお義母さんに今でも難癖を付けられたり、嫌がらせをされたりしてないの?」

 そこで思わずカウンターに目を向けた玲は、何とも言いがたい表情になった。


「別に……、嫌がらせとか、そういう事は特には……」

「何なの? その微妙に煮え切らない物言いは?」

「本当に、何も無いから。それじゃあそろそろ切るわね。せっかくの睡眠時間を削ったら悪いし」

「分かった。それじゃあね」

 疑わしそうに尋ねてきた陽菜だったが、やはり長電話はできなかったらしく、

素直に通話を終わらせた。


「本当に、どうしようかしら……」

 玲の視線の先には相変わらず届出用紙があり、更にその奥に飾ってある夫とのツーショット入りのフォトフレームも同時に視界に入れた彼女は、憂鬱な表情で溜め息を吐いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ