お兄様の婚約者候補 9
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わたしが馬車から降りると、すぐに、ロマンスグレーの髪を撫でつけた執事が笑顔で出迎えてくれた。
「ようこそおいでくださいました。どうぞ、ご案内いたします」
「ありがとう」
まったく嫌悪感のない笑顔って、本当に安心するわ。
離宮の執事は慇懃だったけれど、わたしが嫌いな空気は隠さなかった。だから苦手だったの。
高位貴族のお茶会に侍女を同伴するのは珍しくないそうで、ダイアナがいても執事は咎めたりしなかった。ダイアナの席もわたしの隣に用意してくれるんですって。よかったわ。
……まあ、ダメって言われたとしても、ダイアナのことだから、執事を言い負かすくらいしそうだけど。
なんたって、アーネストお兄様ですら簡単に言い負かしてしまうんだもの。
兄妹同然で育った乳兄妹って、強いわね。
ティーサロンに通されると、すでに招待客の令嬢たちが大勢いた。
部屋に入ったわたしに視線が集中して、思わず足がすくみそうになる。
……落ち着いて。社交マナーも、念のためにイヴリン先生にお願いしておさらいしたもの。
わたしは穏やかな表情になるように気をつけながら微笑むと、執事に案内されるままに自分の席へ向かった。
ここで、わたしがへりくだって挨拶をしたらダメなんですって。
人質王女とはいえ、わたしは隣国の王女。主催者を含めて、この場では一番身分が高い。だから常に堂々としておく必要があるのよ。
だけど、重要なのは、堂々とすることと高慢であることは違うと言うことね。
堂々としていても、高慢に見えてはだめなの。
自分の席に向かうと、そこには主催であるダーラ・ギブソン公爵令嬢がすでに着席していた。
わたしの姿を見て立ち上がると、にこやかに微笑んで挨拶をしてくれる。
「いらしてくださって光栄ですわ、カレン王女殿下」
「こちらこそ、お招きいただき光栄です。ギブソン公爵令嬢」
「あら、どうぞダーラとお呼びになって?」
ダーラはとても親しみやすそうな令嬢だった。
ストロベリーブロンドの髪に快活そうな大きな青紫色の瞳。
背はわたしとあまり変わらない。目に優しい柔らかいクリーム色のドレスを身にまとっていた。
席は、わたしがダーラの隣で、わたしのさらに隣にダイアナ。
あと、後ほどダーラのお母様であるギブソン公爵夫人が来るらしくて、わたしたちの席はこの四人よ。きっと、気を使ってくださったんだと思うわ。
ダーラはわたしが席に着くと、そっと扇を開いて口元を隠し、わたしに耳打ちしてきた。
「カレン王女殿下、最初に謝罪しておきますわ。今日のお茶会ですけど、高位貴族の令嬢中心に声をかけた兼ね合いでモットレイ侯爵令嬢が来ますの。彼女と席は離してありますけど、あの方、少々マナーがおかしい方で、もしかしたら呼んでもいないのにこちらに来るかもしれませんわ」
ラングトン公爵家の娘は十三歳で社交デビュー前だから来ないけれど、エレイン・モットレイ侯爵令嬢をはじめ、ラングトン公爵家派閥の貴族令嬢が数名招待されているそうだ。
エレイン・モットレイ侯爵令嬢はまだ到着していないそうだけど、面倒くさい相手だから来ても目を合わさない方がいいとダーラが言った。わたしの隣では、ダイアナも大きく頷いている。
……ここまで言われるなんて、どんな方なのかしら。
目を合わせるだけで面倒くさくなるなんてなかなかないと思う。
最初のお茶会で失敗したくないから、ここは、ダーラの助言通り極力目を合わさないようにしましょう。
そう、心に誓ったときだった。
ティーサロンに、金髪碧眼のわたしより少し年上の令嬢が二人の大人しそうな外見の令嬢を引きつれて入って来るのが見えた。
ダイアナが小さく首を振る。
どうやら、彼女がエレイン・モットレイ侯爵令嬢のようだ。
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