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群星の下、ざわめき

更新が遅れて申し訳ないです。「隔日」と言った舌の根も乾かないうちに……。

そして今回も戦闘シーンはないです。すみません。次話には必ず出ますので、この一話だけご辛抱ください。


前話の【古書の解読者I】の内容を少しばかり変更し、「閲覧制限解除」の対象を「一部の古書」から「一部の古い記述」としました。



「え、何ですか、これ」


 私が【図書館の盗人】で手に入れた称号を見せると、リアーナさんはそれを二度見三度見した後に五秒ばかり黙りこくってからそう言った。


「リアーナさんでもそういう反応になるんですね。てっきりアルが大袈裟に反応してるんだと思ってました」

「それはひどくないかな!? 違うよね、リーちゃん?」

「ええ。【図書館の救済者】は情報収集がかなり捗りそうですし、【図書館の御使い】の方はもはや同系統の称号すら見たことないですね。隠し効果とかもある気がします」


 隠し効果……司書さんたちが前にもまして私に恭(うやうや)しく接するようになったのはあるけど、さすがにそれがっていうことはないだろうし。アレティアさん関連のクエストが発生したり、他の街の図書館で何かがあったりするかもしれない。

 注意しておこう。


「あとはまあ、【古書の解読者Ⅰ】ですけど」


 そう言って称号の説明欄を見ていたリアーナさんは何かに引っかかったように首を傾げたあと、私とアルに向かって遠慮がちに提案を投げかけてきた。何でも、以前訪れた遺跡のような場所に何かが書かれた壁があったものの、「閲覧できません」というメッセージで遮られたらしく、けれどもこのスキルを持つ私ならそれも読めるかもしれないとのこと。


「ルーティさんのを手伝うと言ったそばからすみません。その上もしかしたら違うかもしれませんし、合っていてもレベル不足かもしれません……ですが、気になってしまって。道中に短剣と相性がいいモンスターはたくさん出てくるので、お願いできませんか」

「私は別にいいよ! 元々予定があったわけじゃないもん!」

「私もです。むしろ一方的に貰うだけじゃない分、かなり気が楽です」


 私たちがそう答えて、彼女は「ありがとうございます」と頭を下げた。


 それから私たちは広場を離れ、寝静まった街の中を歩いて北側の門から外へと出た。星々を仰ぐ草原は私がよく知っている場所──私が初めてアルとリアーナさんと出会った場所だった。

 この辺りには特に何もなかったような気がして尋ねてみると、第二の街セキュンティオンへ向かう途中の森に目的の遺跡があるのだと言われた。一(いち)エルフとして森の地形には慣れておこうと走り回っていた時に偶然見つけたそうだ。


 夜風に吹かれた草々がざわめきを立てる。ふとアルが大きな声を上げた。


「あ、見て見て! 流れ星だよ!」

「え、見逃しちゃった。でもまあ天の河もはっきり見えるし、彩った薄絹が光に照っているような……ここって夜に来ると雰囲気が全然違いますね」

「ええ。それにモンスターも少し強くなるんです」


 彼女は背中から弓を下ろし、その矢を星に向かって射た。もちろん私の感知できる範囲には何の敵影も見えていないし、だから「やっぱり強化されてますね」という言葉にも実感が湧かなかった。

 私を置き去りにしたリアーナさんが言った。


「街道沿いに進めばほとんど接敵しないんですが、今回はショートカットとルーティさんのレベル上げを兼ねて草原を突っ切りたいと思います」


 リアーナさんが私の方を見た。

 今の私は最初に草原オオカミと戦った時よりレベルが高いし、戦闘系のクエストもいくつか経験済み。少し敵のレベルが上がっていても遅れをとるようなことはきっとない。それにここにはどこからでも狙い撃てるエルフと大剣で敵を消し滅ぼす聖騎士がいる。

 私は力強く頷いた。


それから特に助けを乞うような場面もなく、私たちは無事にリアーナさんの言っていた遺跡にたどり着いた。

 森の中に少し開けた場所があって、そこに苔むした石レンガの建物の残骸が転がっていた。井戸だったらしきものや真ん中で折れて地面に落ちている石の塔、小屋の土台のような何か──その中に他よりも一回り大きな石の壁があった。

 三人でそれに近づくと私以外の二人が突然声を上げた。その手元にはハチミツ色のボードが現れている。


「あれ!? 見られない!」

「やっぱり私たちはダメなようですね。でも……」


 リアーナさんが私の方を見る。確かに私には何のメッセージも注意書きも来ていない。壁を凝視すると、薄い上に一部が欠けていたりしてとても読みにくいものの確かに何かが書かれているのが分かった。

 それを先頭から丁寧に検分していく。そしてその正体を認識した私はため息をつかざるを得なかった。


「大文字のフラクトゥールかぁ」

「えっと、そのフラク……? というのは何でしょう?」

「古いドイツの文字です」


 リアーナさんの疑問に答えながら私はフレンド欄を開き、ニィナの名前をタップした。古文や漢文ならまだしもヨーロッパ言語については全然分からない……餅は餅屋に頼む必要があった。

 かろうじてどのアルファベットなのかだけは分かったから私は大人しくそれをチャット欄に打ち込んだ。ゲーム内からは翻訳アプリとかにアクセスできないし、それにこの文章が古代ドイツ語とかだったら翻訳機も私も同等に「使えないやつ」だ。


 それから三人で二十分ほど遺跡とその周辺を調査し、それがひと段落ついたところでちょうどよくポロンという軽快な通知音が鳴って、私は何をどうすべきかを知った。

 空が少しずつ白み始めていた。



草原オオカミとの戦闘はもう書かないです。

フラクトゥールは環境依存文字のせいで書けませんでした。気になる方は調べて見てください。すぐに出てきます。

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