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飲んでも飲まれるな。

お待たせしました!


湿地帯での狩りも成功し、祝勝会?みたいなものでスヴェトラーナさんから夕飯をご馳走してもらえることになった。



 

 酒は飲んでも飲まれるな、という言葉を今日こそ痛感した日はないだろう。


「あ、ありがとうございました~……」

「へへへ、またなミナトちゃん!!」


 そう言って小ぶりなナイフを購入した男が、オレの胸元を見ながら鼻の下を伸ばした顔で去っていった。


「ミナトさん順調ですねぇ。それにその服、とっても似合ってますよぉ」

「あははは、どうも……」


 リセッテは褒めてくれるが当の本人であるオレから言わせてもらえば、早く着替えたいという一点しかない。


 今の自分の姿を見ればいつもの冒険者風の装備ではなく、白とオレンジを基調とした…………胸の谷間がばっちり強調されたメイド服のような衣装という有様。


 ちなみに隣のリセッテはいつもの旅装束風の姿で接客していたりする。


 そんな中、足元でくつろいでいる虎柄模様の子狼であるクーちゃんが顔を上げてじっとオレを見つめてくる。なんだよ?


「ウォウォン、ウォフ<中身が男のお前がそんな恰好してるかと思うと、痛いわぁ>」

「おーし、いい度胸だクーちゃん。はーい! そこで遊ぶお子ちゃま達ー! このワンちゃんが一緒に遊んでくれるってー!!」

「ウォフォ! ウォフン!?<おいバカ! なに言ってんだ!?>」


 オレがひょいとクーちゃんを持ち上げて掲げてやると、目をきらっきらさせたお子ちゃま達がダッシュで駆け寄ってきた。


 かくて、クーちゃんは集まってきたお子ちゃま達によりたちどころに拉致、もとい歓迎されて絶望の表情のまま近くの広場へとドナドナされて(連れていかれて)いったのだった。


 はっはっはっ、人の恰好を痛いだのとぬかした罰だ。


 クーちゃん曰く、お子ちゃま達はなんでも全力でかかってきて、撫で繰り回してきたり捕まえようとしてくるのを本気で避けると転んで怪我する危険性があるので、加減して動かないといけないのが非常にストレスがたまるのだとか。


 まあ知ったこっちゃないけど。


 そんなんで不届き者を処したオレは再び物販を再開すべく、道行く人に声をかけていく。


 早くこの恥ずかしい恰好から脱却するためには、とっとと商品を売り切るしかないんだよ!


「そこの冒険者のお兄さーん! この薬草軟膏いかがですかー? 今なら二つ買って頂ければ、二割引きしますよー?」

「え、オレ? ……ち、ちょっと見てみようかな?」


 あはははっ! 見よ! 元の世界のせっかくのクリスマスの日に、何の予定もなくアルバイトで冬場のクリスマスケーキ販売で鍛え上げた呼び込み術!!


 オレの悲しい経験(呼び込み)に、一人で歩いていた冒険者っぽい男がふらふらとこっちへ引き寄せられてくる。


 わははは! 胸元ばっちりのメイド服で前かがみになって手を振れば、そこら辺の男なんていちころよ!!(自棄) 


 あと悲しいかな【魅力的な外見】がここにきて一番役に立っている感じがするよ……。


 冒険者っぽい男の手を取り『こちらもご一緒にいかがですか?』と上目遣いで勧めると、薬草軟膏二個の他に火打石もお買い上げとなり、軽く手を振って笑顔で見送ると『でへへ……』とまたもだらしない顔で去っていく。


 オレも中身は男なので女の子からどういう態度をされるとグッとくるか、というのが分かるのでそれを実践してるわけなんだけど、それが面白いように嵌まって商品が次々と売れていく。


 早く完売させて着替えたいとはいえ、男に愛想を振りまく自分を客観的に考えてしまい遠い目になりつつ思うことがある。


 あの時……あんなことさえしなければ、と。


 昨日、スヴェトラーナさん達との狩りの成果を報告しに宿屋へ戻ったところ、ちょうどリセッテとクーちゃんペアもいたので、そこでお互いに情報交換という名の談話となった。


 こちらの成果に驚き喜んでいたリセッテだったが、向こうの成果もすごかった。


 エルクの町では中規模の商会にハニーシロップの商談を持ち掛けたところ、なんと言い値でというかリセッテがちょっと高めに提示した値段の三倍で買い取ってくれたそうな。


 他、蟲系の素材なども合わせて三十万レアの売り上げになり、しかも交渉した結果平均の三割増しでハニーシロップの定期販売の専属契約を結べたらしい。


「うわぁ、リセッテの商才がやばいな」

「うふふぅ、今までにない大きな売り上げと契約ができてぇ、すごく嬉しいですぅ。これも皆さんのおかげですねぇ、ありがとうございますぅ!」


 関心していると感極まったリセッテにはぐされて、その豊満な胸に顔が埋もれてリアルに窒息しそうになるという漫画のような体験をしたけども……。


 ともあれ、ご馳走の件を伝えると特に反対もなく、皆でギルドへ向かいスヴェトラーナさん達と合流すると、乾杯の音頭と共に夕食がはじまった。


 テーブルには料理が所狭しと並び、その中でもマーシュフロッグの肉料理は鶏もものような食感と甘い脂とちょっとピリ辛の香辛料が相まって皆がおかわりをするほどだった。


「ミナト! エールを冷やしておくれ!!」

「はいはい」


 と、スヴェトラーナさんの要請を安請け合いしたところ、それを聞きつけた周りの冒険者たちが寄ってたかってきて、オレは一時急速冷却マシーンと化したけど。


 商機を悟ったミレニアが素早く他の冒険者たちに向けて、一回に付きエール一杯分の料金を提示したことで幾分か頼んでくる冒険者は減ったものの、それでも絶え間なくこられるのは迷惑だったので酒場のおばちゃんのところに向かい。


「おばちゃーん、何個か樽で冷やすからそっちでエールの販売をお願いしたいんだけど……。もちろん売り上げは提供するんで」

「おや、いいのかい? まあ見てる限りお嬢ちゃんも大変みたいだからね。わかったよ。

 ほら聞いたかいバカ共! 冷えたエールを飲みたきゃこっちから買いな! これ以上お嬢ちゃんに迷惑かけるんじゃないよ!!」


 酒場のおばちゃんの鶴の一声により他の冒険者たちは、大人しく酒場から冷えたエールを購入するようになった。

 エールの樽を三つほど冷やしたところでオレは急速冷却マシーンから解放され、皆との夕食を再開して楽しむことにする。


 あと勝手に酒場販売に決めちゃってミレニアから苦情が来るかなと思ったけど、深皿に山盛りになるほどの銀貨にほくほくの笑顔だったので問題はなさそうだった。


 そしてここまではよかったんだ。ここまでは。


「お嬢ちゃんのおかげでエールが飛ぶように売れてくよ! はいこれ、お礼だからとっといておくれ」

「え、あ、どうも」


 酒場のおばちゃんがお礼と一緒にオレの前に置いていったコップに入っていたのは、薄紅色の飲み物。


 コップを持って匂いを嗅ぐとほのかに甘酸っぱい香りが漂ってくる。


「あ、これってクラウベリーの果実酒じゃないですかぁ。さわやかでおいしいですよぉ」

「へー、そうなんだ。じゃあ頂きます」


 一口飲むとリセッテの言う通り、アルコール感はあるもののさくらんぼのような甘酸っぱさで後味がさっぱりしていて飲みやすい。むしろ好きかもしれない。


 くいーっと全部飲み干すと、なんだかまた欲しくなった。


「おばちゃーん、これまだある?」

「次からは有料だけど、おかわりするかい?」

「おねがいしまーす」

「あいよー」


 お値段を聞くとエールよりちょっとお高めなくらいだったし、蛙で一稼ぎしたこともあって懐には余裕があるので頼んでも問題ない。


 シオンと料理を分けっこしたり、ミレニアがクラウベリーの果実酒を欲しがったのであげてみたり、リセッテと今後の予定を話し合ったりしながらも果実酒を四杯五杯と空けていく。


 途中でスヴェトラーナさん達から今までの冒険の話を聞いたり、シオンに腕を組まれて首筋に頭をすりすりされたり、トイレから戻ってきたオレのお尻を触ってきた冒険者の股間を氷漬けにしてあげたり、ミレニアがあつーい!と脱いで薄着な姿になったものの「胸と色気が悲しい」と男冒険者から嘆かれて「張り倒しますよ!?」とカチキレたりと…………今思えばこのあたりからおかしくなっていたのかもしれない。


 気が付き目が覚めた時には木窓から朝の日差しが零れていて、見慣れた天井の宿屋のベッドの上だった。


「…………どういう状況?」


 なんか胸に重みがあるなと思ったら、オレの胸を枕にしてうつ伏せで寝ているシオンの顔があり、顔を右に向けるとそこにはドアップでへそチラしている細い腰と白い下着が目に飛び込んできたという。


 よくみればそれはミレニアで、どうやら上下逆さまに胎児のように身体を丸めてオレの横で寝ているようだ。


 慌てて左に顔を向ければそこにはリセッテが寝ており……横向きでむぎゅっとしている胸元の破壊力が凄まじかった。


 そして全員が漏れなく薄着に下着という恰好で、シオンの体温がミレニアのいい匂いがリセッテの吐息がオレを襲い…………皆が目を覚ますまで数えたゴブリンの数は千匹以上だったことを伝えておこう。


 全員が起きて着替え終わり、朝食を食べるために一階におりてテーブル席にて頼んだ朝食を待っている時にふと思い出したことを呟く。


「…………そういえば途中から記憶がないんだけど」

「あー、ミナトさん、クラウベリーの果実酒をぱかぱか飲んでましたから。あれって、飲みやすいけどあとから酔いが回ってくるんですよね。いやー、酔ったミナトさんはすごかったですよ?」


 オレの言葉に返してきたミレニアの最後の一言がものすごく不穏なんだけども?


「あの……ちなみにどこがどのようにすごかったり?」


 聞きたくないけど聞いておかないと後で後悔しそうな気がする……。


「えーっと、笑いながら下着ごと脱いで上半身裸になろうとしてましたね。脱ぐ前に止めましたけども」

「ぶふっ……!」


 顎に指を当てながらミレニアが告げた言葉に思わず吹いてしまう。


 なんかしょっぱなから事案発生に繋がりそうな出来事が起きてるんだけど!?


「歌も歌ってた。特に残業が嫌いなギルドの受付嬢が、ソロでボスを倒すOP曲は、ギルド嬢さん達が共感してた」

「ぬあああああ…………!」


 次いでシオンから告げられた言葉に頭を抱えて悶絶するしかなかった。


 よりによってなんでその曲をチョイスしたオレ!? 過去に戻って、せめてケモナー仮面とかの曲に変えたいんだが!?


「あと私とはぁ、今日一緒に売り子をしてくれる約束をしてくれましたよぉ。この服を着てぇ」

「嘘だろぉ……」

「ウォ…ウォフ……<やばっ…草生える……>」


 リセッテが嬉々として広げた服に、オレは絶句するしかなかった。


 オレンジと白を彩られたふりっふりのフリルがついた衣装って……どこの萌えカフェメイドだよ!?


 あと前脚でテシテシと床叩いて笑ってるクーちゃんはあとで覚えてろよ?


「あの、酔ってた上での言動ということで見逃してもらうわけには……」

「約束って大事だと思いませんかぁ? ねぇ?」

「ア、ハイ……」


 萌えメイドの服を持ったまま詰め寄ってくるリセッテの笑顔の圧に負けてしまい、オレは結局その服を着て一緒に売り子にならざるを得なかった。


 というわけで、オレは今こうして恥ずかしい&下心満載の男どもの視線に耐えつつ残り少なくなった商品を売り捌いているのである。


 ちなみにシオンとミレニアはギルドの訓練場で模擬戦という名の、有料『小治癒(ライト・キュアー)』による小遣い稼ぎに行っていたりする。


 ああ、オレもできればそっちに行きたかったよ……はぁ、こうなったらとっとと商品を完売させてやるわー!


「はーい! 日用品から冒険アイテムまで取り扱ってますよー! あ、そこのお兄さん! ちょっとみていきませんか?」


 オレはやけくそ(勤労意欲)を向上させ道行く野郎共に愛想を振りまくのだった。


 あ、まって、そこのカップルらしきお兄さんは呼んでない。やめろくんな鼻の下を伸ばすな! 隣の彼女さんがものすごい目でオレとあんたを交互に睨んでるから!!


ミナト『こ、この服で売り子・・・・・・』

挿絵(By みてみん)


※ミナトの選曲ラインナップ。

1、明日の私に幸あれ

2、檄!帝国華撃団 新章

3、千本桜

4、逆光

5、アンパンマン





『飲んでも飲まれるな』これは『注意一秒、怪我一生』に次ぐ作者も肝に銘じてる言葉の一つです。

作者も社会人ですから色々『飲まれた方々』の醜態はみてきましたとも。

清楚だと思っていた会社の女性社員が飲まれた結果、大股開いてがははと笑って完全なおっさんムーヴになったり。

真面目だと思われていた中堅の男性社員が飲まれた結果、永遠と自分が通った風俗店の情報やどんな行為をしたかと語りだしたり。

オレは酒がつえーから! と豪語していた若手男性社員が飲まれた結果、ジョッキビール二杯でまさかのマーライオンと化したり。


・・・・・・うん、作者、元から飲まないけど、飲むときは一人の時にしようと思うこの頃でした。

ちなみに一番の飲まれた場面は、新入社員の歓迎会で、酔った新入社員の20歳の女の子がスリッパで思いっきりい社長の禿げ頭をぶっ叩いた時でした。

※新入社員の女の子は酔って碌に覚えておらず、とりあえずは無礼講による無罪放免になったようです。



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― 新着の感想 ―
明日の私に幸あれはエンディングだと思う( ˘ω˘ ) 冷凍○かん……
こうやって腹黒ピンクへの道へと進んでいくんですねー 股間凍らされるリスクを冒してでも触りたくなるお尻ってどんなお尻なのか、 正直、中身男なんじゃないかと疑うような女の人なら結構居る。
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