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転生うさぎは異世界でお月見する  作者: 白黒兎
第二章 人間世界
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34話 転生うさぎと常春の都

 エスタシオン公国。大陸の東側にあり、南側は海に面していて、北側は山脈を挟んで魔国があります。実はエスタシオンという名前は、今の王国との条約締結時に付けた名前らしく、この国の名前自体は大昔からころころと変わっているのだそうです。エルさんの話では、四つの季節が支配する国として、四季国という名前でエルフの間では呼ばれているとか。



 さて、そのエスタシオン公国ですが、この国について説明するには少しだけこの国の歴史について話すのが一番早いですね。



 まだエスタシオン公国という名前では無かった遥か昔の頃の話です。今の公国の中心に当たる地域に一人の女性がその地域の小さな国の主として存在していました。その人は固有スキル『四季神』というスキルを持っていて、そのスキルの恩恵でその女性が支配する地域は春夏秋冬の季節が廻り、多種多様な動植物が暮らす豊潤な土地として栄えていました。



 ある時、その女性が男性と恋に落ち、四人の子供を産みます。女性はその子供達をとても愛して男性と共に育てました。しかし、男性は重い病気に掛かってまだ若くして亡くなってしまいます。女性は嘆き悲しみました。聖人として永遠を生きる彼女は別れにも慣れているはずでしたが、愛した男性との別れは彼女の心を大きく蝕みました。その影響からか季節は大きく乱れ、春は新たな生命が生まれず、夏は厳しい日照りが続き、秋は実りを成さずに枯れはて、冬は永遠と続く雪が世界を白く染めました。



 それによって、そこに住まう命も多くが死に絶えていきます。その状況を生み出している自分自身に女性は絶望し、さらに自分を追い詰めていきました。そして、その女性はある決心をします。もはや自分ではこの惨状を止めることは出来ない。ならば、自分の愛する我が子に自分の力を託して後を任せようと。それが、ただの逃げであることは重々承知していました。自分の子供達に背負わせる重荷に躊躇いもしました。悩みに悩み、苦しんだ女性は子供達を集めました。子供達自身がどう思っているのかを聞くためです。



 四人の子供たちは自分の母親が苦しみ、嘆いているのを近くでずっと見ていました。美しかった国が荒れ果て、笑顔に溢れていた人達は皆暗い表情に変わってしまっています。四人の子供達は母親の提案を受け入れました。母親から力を受け継ぎ、四人で協力して再びこの国を母親と父親の大好きだった国に戻すと決意します。



 女性もまた子供達のその言葉を聞いて、その瞳を見て決意します。自分の不甲斐無さに怒り、後を残す子供達に申し訳ない気持ちでいっぱいになりながらも、四人の子供たちに自分の力を分け与えていきます。



 そうして四人の子供たちに全員に力を分け与え終わった時、静かにその女性は息を引き取りました。残された四人の子供達はもちろん悲しみ、泣きましたが、託された使命と想いを引き継ぐために、それぞれに託された力を使って国を立て直します。



 そして、この四人の子供達はそれぞれ、春姫、夏姫、秋姫、冬姫と呼ばれ。協力し合い、時には争いながらも国に住まう人々に笑顔を取り戻していきました。この国に住まう人々は四季を司り、この国を守護する四人の美しい少女たちを、少女たちの母親が持っていたスキルからとって『四季姫しきがみ』と呼ぶようになりました。



 それから永い永い年月が経ち、四季の国はその時代時代によって様々な変革を起こしながらも、今現在は五大国の一つエスタシオン公国としてその名を世界に知られているのです。



「んくっんくっ。ほぅ。いや~、随分と綺麗に纏められた歴史だねぇ~」



 クーリアさんが話していた歴史を聞き終わった春姫さんが、お茶を飲みながら苦笑いします。エルさんも同じような顔をして三色団子を口に入れました。



「そのご様子では、実際は違うのでしょうか?」


「ん~?ん~。大筋は合ってるよ。でも、さらっと流されていたけど何回かわたしたち『四季姫』の間で大きな争いをしたこともあったからね。今はいい感じに協力関係が築けているけど、最初の頃は特に紅葉ちゃんとは全然意見が合わなかったから、何度も殺し合いをしたことがあったんだよ?」


「・・・殺伐としていたのですね」


「あはは。姉妹であり、お母さんから遺志を継いだわたし達だからこそ。お互いに譲れないものがあったんだよ」



 性格も全然違うからね~と春姫さんがころころと笑いながら桜色の団子を頬張ります。ひらひらと舞っている桜の花びらの中に居る彼女は、成る程、春の姫と謳われている通りの神秘的な絵です。



 国境門から無事に公国に入国したわたし達は、王国の時のようなドタバタしたようなあちこち調査しながらの移動ではなく、道中の街で冒険者ギルドから情報を得る以外はほぼ真っすぐに、このソメイヨシノという街に辿り着きました。



 宿で一泊した次の日に宿から揃って出ると、目の前にこの国の一番偉い姫様、春姫さんが待ち構えていて、そのままの流れで茶屋で情報交換の時間という建前のお茶会になったのです。注文を終えた後は店前の縁台に座ってお茶と和菓子を楽しんでいます。



「・・・常春の街と言うくらいなのですから、一年中桜が咲いているのですか?」


「うんそうだよ。わたしが支配、管理している領域では、常に春の力で満たされているからね。春の花や生き物は一年中穏やかに過ごしているよ」



 領域と聞くと、神獣の領域を連想しますね。わたしはまだ一度も中に入ったことはありませんが、領域内はその神獣が創り出した一つの小さな世界のようなものらしく、突然景色が様変わりするのだとか。まさにいまこの状況に近いということですね。



 もうひとつ身近なもので領域といえば、ダンジョンもそれに当たりますね。ダンジョン全体が特殊な領域で、階層によっても違う領域に入ることもあるそうですし。以前入ったことのあるダンジョンの『仄暗い洞窟』は、入り口は洞窟で中も普通の洞窟だったので領域内って感じはあんまりしなかったですけどね。



「今は四人の姫がそれぞれ別の領域で暮らしているのですよね?ということは、昔話のように四季があるような場所は無いのですか?」


「あるよー。それぞれの領域が重なる場所。かつてお母さんと暮らしていた神社とその周辺。そこだけは唯一この世界で四季のある領域だよ。わたし達『四季姫』か一部の巫女にしか入ることも見ることも出来ないけどね」



 春姫さんはクーリアさんの質問に笑顔のまま答えると、桜餅を一つ手の取って隣に座っているわたしに差し出します。



「あ~ん」


「・・・はむ」


「う~ん。相変わらずかわいいねっ」



 思わず桜餅に魅かれて食べてしまいました。なんと恐ろしい魔力なのでしょう。さすがは和菓子です。咥えた桜餅を両手で持ちながらもぐもぐとくだらないことを考えてながら食べていると、今度は反対側に座っているセラさんからみたらし団子が差し出されました。



「・・・まだ食べているのですが」


「わくわく」


「・・・はぁ。仕方ないですね」



――そう。和菓子なのですから仕方ないのです。



 誰に言い訳しているのか分かりませんが、そんな言い訳をしながら串に四つ刺さっている団子の一番上を食べます。



「小動物に餌付けしている気分。かわいい」


「・・・もぐもぐ。・・・その表現は非常に不愉快ですね」


「あ、でも、わかるわかる~。うさぎに餌あげているみたいだよね~和む~」



 春姫さんの言葉にドキっと心臓が跳ねます。わたしの正体を知っている皆さんも表情には出していないものの、きっと冷や汗をかいているでしょう。



――なぜ一々うさぎに例えるのでしょう?そんなに普段からうさぎっぽいですかね?それとも何かカマかけられているのでしょうか?



 わたしが頭の中で疑心暗鬼になっていると、こほん、とエルさんが咳払いをしました。皆さんの注目がエルさんに集まります。



「情報交換は良いのかしら?のんびりとお茶会をしているような事態ではないから私達に調査を依頼したのよね?」


「あ~、そうだったそうだった。のんびりお花見していたいのだけれど、そうもいかないんだよね~。王国の状態を教えてくれるかな?」



 全く危機感を感じない声音でセラさんに問い掛けると、セラさんは諦めたように苦笑してから、ここまでの事について話し始めました。王都周辺ではまだ変異種の存在を確認出来なかったけれど、王都から離れると、北側を中心に変異種に出会うことが多くなったこと、それと、国境門での防衛戦の話も簡潔にまとめて話しています。



 セラさんの話が終わると、春姫さんは話の途中で追加注文したよもぎ団子を口のなかに入れてもぐもぐと食べてからお茶を飲んでごくりと喉を鳴らしました。わざわざ王国まで出向いて依頼をしてきたにしてはとても吞気そうですね。エルさんがそんな春姫さんの様子を見て眉をひそめます。



「桜?貴女は今回の件、どう思っているの?」


「う?・・・うーん。まだなんとも言えないけど、わたしの勘によると、今回の変異種の発生は人為的なもので、それに帝国が絡んでいるんじゃないかなぁとは考えているよ」


「勘だけでそこまではっきりとは言えないでしょう?」



 エルさんが追及すると、春姫さんはふいっと目を逸らします。明らかに隠し事をしているであろう態度に、エルさんが腕を組んで目を細めます。エルさんがちょっとイライラモードになっていますね。



「必要な情報は全てセラちゃんに教えてあるもん。後はそっちで情報共有してね」



 今度はセラさんに皆さんからのじとっとした目が集まりました。セラさんは慌てた様にお茶を一口飲むと、皆さん(特にエルさん)からの視線から逃げるように春姫さんの方へ体を向けました。



「それで、私達は公国のどの辺りを調査すればいいのですか?」



 話題を逸らしているは丸わかりでしたが、この話も大事なことだと分かるので、皆さんはじとっとした目を止めて春姫さんに視線を戻しました。



「えっとね、えっとね。紅葉ちゃんの領域にある『紅い森』っていう場所を重点的に調べてほしいの。詳しくは常秋の都のイロハで直接紅葉ちゃんから話を聞いてもらえるかな?もともとは紅葉ちゃんのお願いでわたしがわざわざ王国まで頼みに行ったんだからね」


「だから紅葉が同行していたのね。貴方が護衛なんて言うからてっきり巫女かと思っていたのに、いきなり来た時には驚いたわよ」


「本当に驚きました。あんな平民街の小さなお茶屋さんで、公国の四季姫に二人も会うなんて考えられませんよ」



 確かに、例えるならば王様と一緒にお茶をしていたら王姉が連れ戻しに来たみたいな状態でしたからね。しかも二人そろって歴史書に出てくるような伝説の人なのですから、さすがのセラさんでも顔が引きつるわけですね。



「むぅ~。紅葉ちゃんが頼んだから、対外的に一番偉いことになっているわたしがわざわざ出向いたのに、あの時の紅葉ちゃんのわたしに対する扱いは酷いと思わない!?思うよね!?だよね!?」


「・・・そ、そうですね」



 隣からものすごい圧を感じてわたしはこくこくと何度も頷いて同意します。それで多少溜飲が下がったのか、春姫さんが満足したような顔でお茶をすすります。



「それじゃあ、わたしは依頼を伝えたし、そろそろ他のお客に挨拶に行かないとね」


「・・・他の客?」



 わたしが首を傾げるのとセラさんがさっと前に立ち塞がったのはほとんど同時でした。周囲を索敵してみると、二人の人間が近寄って来るのが分かりました。



「よう『熾天使』。久し振りだな」



 その声が聞こえた瞬間、わたし以外の三人もわたしを囲うようにして席を立ちました。その顔には警戒心と嫌悪感が浮かんでいます。



「お久し振りだね、ゼスト。私は二度と顔を合わせたく無かったよ」


「くははは!会って早々に辛辣だなぁ!ま、変わっていねぇようで何よりだ」


「王都で会ったぶりだな、セラよ」


「グレンさんも来ていたのですか。二人とも春姫さんの依頼で・・・?」


「ふむ、そうだ。正確には、儂は国王とリードの指名依頼じゃがの。それと、こやつの監視もしておる」


「はん。俺も今回は帝国ギルドからの正式な使命依頼だ。今回の変異種の世界的な大量発生、帝国の陰謀だと噂を立てる連中が後を絶たないらしくてな。それを払拭するために調査に駆り出された。俺としても、手強い変異種どもと戦えるのならば悪い話じゃねえからな」



 なるほど、いきなり皆さんが警戒したのはこのゼストという人が来たからなのですね。会話を聞く限りでは、以前から度々話題に出ていた帝国に居るSランク冒険者なのでしょう。セラさんのストーカーでかなりの問題児だとか。



 くすんだ金髪に勝気そうなグレーの瞳、顔は・・・ちょっと不良っぽいイケメンですね。こういう人って不思議とモテるのですよね。悪そうな感じがどこか惹かれるのでしょうか?わたしは面倒そうな人は嫌いなので無意識に距離を置きたくなりますけどね。



「それで?その必死に隠してる子供(ガキ)が噂の新入りか?わざわざお前らが囲い込んでいるんだ、さぞかし面白い奴なんだろうな?」



 ぶわっとゼストから魔力の奔流が漏れ出します。セラさんの表情が微笑から無表情になり、クーリアさんとリンナさんが武器を手に取り、エルさんが油断なく成り行きを見守っています。わたしはわたしで、思った以上の魔力を感じて驚いていました。



――セラさんと同じSランクということで薄々感じてはいましたが、この人も大概化け物ですね。



 天使化していない普段のセラさんよりも魔力量が多くて、漏れ出した魔力からは強烈な威圧を感じます。恐らくはBランク以下の冒険者ではこの威圧だけで動けなくなるでしょう。現に、Aランクになって日が浅いというクーリアさんは少し辛そうに顔を歪めています。



 一触即発の空気の中、突然ぱんぱんと手を叩いた音がしたかと思うと、目も開けられないほどの桜吹雪がわたし達を覆いました。桜吹雪が晴れると、春姫さんがわたし達とゼストとの間に腰に手を当てて立っています。



「こらこら~。わたしの領域で暴れるのは許さないぞ~。最初は今ので勘弁してあげるけど、次は数日間は動けなくするからね?それでも言う事聞かないでもしも被害が出るようなことをしたら・・・・・・殺すよ?」



 最後の台詞はわたしでも背筋がゾッとするほど冷たい声でした。ゼストもさすがにその雰囲気にのまれたようで、チッと舌打ちをしてから魔力を押さえました。セラさん達も深く溜息を吐いて臨戦態勢を解きます。



――普段にこにこしている人ほど、怒ると怖いって言いますからね。身をもって知りました。



「ふむ。こやつの面倒は儂がしっかりと見ておくので安心せい。それよりも、儂らの今後のことについて話をしておきたい。よろしいかな、春姫殿?」


「もちろんだよ!その為にここまで来てもらったんだからね。それじゃ、場所を移そうか。セラちゃん達に絡んで険悪な空気の中お話なんて嫌だからね!」


「ふむ。助かりますな。行くぞ、ゼスト。セラも悪かったのう。今度埋め合わせをしよう」


「そいつが妙なことをしないように、しっかりと見張っていてくださいよ」


「ふむ。任された」


「はん。じゃあな『白の桔梗』。また近々会おうぜ」



 春姫さんを先頭にグレンとゼストが見えなくなるまで見送ると、はぁっと大きな溜息を吐いて皆さんが緊張を解くように縁台に座りました。



「まさかゼストが来ているなんて、ね」


「驚いたな。いくら非常事態とはいえ、あいつを国外で自由に行動させるなんて。帝国ギルドは何を考えているんだ?変異種よりも危険な奴だろう」


「でも、どのギルドでもあの人が帝国を出たことの情報なんてありませんでしたよね?」


「確かにそうね。知っていればもう少し警戒が出来たものを・・・」



 そういえば、あのゼストという人が帝国から外に出る時は必ずギルド同士の連絡で全国通知されるというお話でしたね。確かにギルドで情報収集している時そんな話は出てきませんでした。



「その理由は簡単明瞭だよ。今はどのギルドも変異種の情報を優先的に多くかき集めているから、その他の情報までギルド職員全てに周知されていないんだろうね。実際に、この間の国境門防衛戦の情報も、情報量に差があったでしょう?」


「そう言われてみればそうでしたね。もっと視野を広げて情報をギルド職員から聞いていれば、ひょっとしたら知っていた人も居たかもしれませんね。もう今更ですが」


「出会ってしまったものは仕方ないよ。トワちゃん、常春の領域に居る間は必ず私達の内の誰かと行動するようにしてね」


「・・・いつものことですね」


「今回は最低でも私かエルのどちらかが一緒で尚且つ出来ればクーちゃんかリンナも連れて二人以上は傍に居るようにして。あいつが何をどういう風にちょっかいを出してくるか分からないからね」


「それが良いわね。出かける時は私かセラに必ず声を掛けてちょうだい。分かったわね、トワちゃん?」



 わたしはこくりと頷きます。わたしとしてもあの戦闘狂(バトルジャンキー)な感じの人に絡まれるのは勘弁願いたいです。セラさん達が対応してくれるのならばそれに越したことはありません。わたしはすっかり冷めてしまった残り少ないお茶を飲み欲しました。



「あいつが居るからすぐにでもこの街から出たいけど、さすがに春姫さんが近くに居る春の都で何か仕出かすとは思えないし、せっかくだからトワちゃんに和服でも見繕ってから宿に戻って、明日ここを発とうか」


「良い案ですねっ。和服のトワちゃんも絶対に似合いますよっ」


「もう結構な時間が経ってしまったし、早速行きましょうか?今日はリンナも付き合いなさいな」


「あ~はいはい。わかったわかった。私としては武器屋で刀でも見たかったんだがな。私の技量じゃあ扱えないけど綺麗な武器だからなあ」



 刀ですか。わたしも武器として作り出せますけど、折角ならば本物も見てみたいですね。・・・その前に着せ替え人形の時間が待っていますが。



 その後はリンナさん以外の三人がキャッキャウフフしながら洋服店にわたしを連れまわして、たくさんの衣装がわたしの収納に蓄えられることになりました。リンナさんの要望で途中で武器屋に立ち寄って、各種刀剣類の他に手裏剣や鎖鎌といった特殊な武器も見ることが出来ました。



――ていうか、忍者、居るのですかね?



 居たとしても諜報関係の業種でしょうし、一般的には知られていない人達でしょう。セラさんやエルさんに聞けば実際に存在するか分かりそうですが、居ても居なくても質問したら何故知っているのかみたいな流れになりそうなので質問はしないでおきました。



 次の日、わたし達は満開の桜並木を並んで歩いて街の外まで出ます。街の外でもこれでもかというほどにいろんな種類の桜の花びらがあちこちで舞っています。余談ですが、常春の領域内は常に桜が満開でその花びらが舞っているため、とてもお掃除が大変だそうです。ほぼ毎日清掃しても一日で桜の絨毯が出来ると想像していただければご理解頂けると思います。街中は街の業者が掃除しているそうですが、街の外は魔物が居るので冒険者が依頼を受けて定期的にやっているそうです。



――しかし、一年中咲いている桜の国ですか。流石に見飽きてしまいそうですね。



 違う街に着いても、種類が違うだけで同じように桜が永遠と咲いている光景を見て、やっぱり、四季というのは廻ることに意味があるんだなぁと思いながら常春の領域を通り過ぎていきます。



 そして、常春の領域から出ると今までのがまるで夢だったかのように新緑の世界が目の前に広がりました。



「本当に何度体験しても領域って不思議だよね」



 セラさんの呟きにわたしも含めて他の皆さんも頷きました。わたしはこの先の日本っぽいけどやはり異世界な光景を、ほんの少し楽しみにしながら皆さんと一緒に常秋の領域に向かいました。




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