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転生うさぎは異世界でお月見する  作者: 白黒兎
第四章 居場所
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90話 転生うさぎの新たな目覚めと領域の再生

 パチッと目を開けると見知らぬ天井が目に入りました。こういう時はなんて言うのが定番でしたっけ?・・・あ、そうそう。



「・・・知らない天井です」



 合ってますかね?この世界の人にはこのネタは通じないので無駄ですが。



 わたしはゆっくりと体を起き上がらせます。あの時の家を修復したのでしょうか?微妙に家の造りが変わっているので細かいところまでは再現出来なかったようですね。その辺りはあとで直しましょう。



 わたしが少し大きくなった手をにぎにぎとしていると、すぐ近くからぴょんと丸いフォルムが飛び出してきてわたしの肩に乗ってきました。そのままひんやりとした体ですりすりとしてきます。



「・・・スライムちゃんですか。ずっとここで待っていたのですね」



 わたしがそう言うと、「当たり前だよ!」というふうに体をぷるんっとさせます。とりあえず、ひんやりとして気持ちいいのですが、ちょっと邪魔なのでスライムちゃんを頭の上に移動させました。頭の上はこの子の指定席なのでとても喜んでいます。ちょろいです。



 いろいろと確認したいことはありますが、まずはわたし自身の状態を確認することにしましょう。卯月がわたしが起きたことに気付いて突進してくるまでにあまり時間が無いので、手早く終わらせておきたいです。



 まず見た目ですが、十三歳ほどの見た目だったのが十五、六歳ぐらいの見た目に成長しました。中学生から高校生に進学です。



 進化しているのは明らかなのでスキルを確認してみます。コモンスキルは近接戦闘関係のレベルが微上昇していて、エクストラスキルは特に変わりはありませんでした。そして、固有スキルが変化しています。


【コモンスキル】


〈原初魔法レベル8〉〈潜伏レベル3〉〈精密索敵レベル7〉

〈神足レベル4〉〈空間跳躍レベル3〉〈魔力自動回復レベル10〉

〈料理レベル4〉〈舞操術レベル6〉〈体術レベル8〉

〈柔術レベル7〉〈姿勢制御レベル4〉〈投擲レベル8〉

〈痛覚遮断レベル3〉〈武具生成レベル5〉〈並列魔法レベル10〉

〈魔法複製レベル7〉〈精神強化レベル6〉


【エクストラスキル】


〈人体変化〉〈魔力返還〉〈聖魔混成体〉

〈魔力感知〉〈魔力眼〉〈魔力物質化〉

〈魔力操作〉〈並列思考〉〈念話〉

〈思念伝達〉〈精神干渉〉〈魂干渉〉


【ユニークスキル】


〈永久〉〈月の女神〉〈全知の悪魔の加護〉



 〈異世界からの来訪者〉が無くなった代わりに新しく〈永久〉というスキルになっていますね。永久(えいきゅう)ではなく永久(トワ)と読みます。自分の名前のスキルってなんだか恥ずかしいですね。



〈永久〉・・・異世界から来た来訪者。今の自分と過去の自分を繋ぐ能力。スキルのレベルが上がりやすくなり、スキルを習得しやすくなる。また、以下の能力を得る。


〈偶像〉・・・魔力を分けて偽りの自分を生み出す。生み出せるのは一人のみ。


〈異世界魔法強化〉・・・異世界の知識を使った魔法を使用時、威力が上昇する(大)。


〈異世界武術強化〉・・・異世界で使われる体術を使うときに性能が強化される(大)。


〈月の光〉・・・月に愛されし者。常に〈月光浴〉の効果を得られる。一定範囲の〈月光浴〉スキルを持つ者にスキル効果を発動させることが可能。



 〈全知の瞳〉を用いてスキルの鑑定を終わらせます。以前に比べて断然使用が楽になりましたね。これも進化の影響でしょうか?



 さて、〈永久〉の能力ですが、基本能力は〈異世界からの来訪者〉と変わりませんね。スキルの成長、習得補正です。それに加えて特殊な能力が付属されたようです。



 まず〈偶像〉。説明を見た感じや固有スキル特有のなんとなく理解出来る感じを合わせると、〈分身体〉スキルに近い能力のようです。ただ、この〈偶像〉スキルで呼び出せる偽者の自分というのがちょっとアレなのですが・・・。



 わたしは早速魔力を半分に分割して〈偶像〉スキルを使いました。すると、わたしの目の前に黒髪黒目のわたしが現れます。そうです。永久です。



「・・・とりあえず、今はスキルの確認中なのでそこで待っていてください」


「そんなことだろうとは思いましたが、呼び出しておいて放置されるとこうイラッとしますね」



 そう言いつつも永久は大人しく窓際に移動して外を眺め始めました。彼女のことは後回しです。何ならば面倒なことになりそうなので一度帰しましょうかね?魔力は帰ってくるようですし、無駄にはなりません。



「早くしないと卯月が突撃してきますよ?」


「・・・おっと、そうでした」



 永久に急かされたのでスキルの確認の続きです。



 〈異世界魔法強化〉は説明するまでもなく内容そのままですね。わたしが魔法で再現した異世界知識の現象の威力が上がる能力です。ウォータージェットカッターとかも威力が上がります。何をもって異世界魔法なのかどうかは不明です。わたしが前世の知識で作った魔法全てが対象なのでしょうか?似たような魔法がこの世界にあったりするんですけどね。



 〈異世界武術強化〉は前の世界でわたしが習っていた色々な体術や武術が扱いやすくしたり、より能力が上がるスキルですね。もともと、身体能力とスキルを合わせることで凄まじい効果を発揮させていましたが、このスキルの補正が入り、更に凄いことになる・・・のかも知れません。



 最後に〈月の光〉ですね。何故わたしの名前のスキルにこの能力があるのかは全くもって謎ですが、能力はわたしの〈月光浴〉が月が出てなくても発動し、常に最も月明かりを浴びている状態になっています。また、わたしの一定範囲内に居る同スキル保持者にも同じ恩恵を与えるようですね。わたしや、わたしの眷族を強化する能力です。有り難いですが、存在理由はやはり謎です。



 スキルの確認を一通り終えると、下の階からドタドタと騒がしい音が聞こえてきました。卯月達が帰ってきたようですね。



「・・・すみませんが、混乱させたくないので一度戻ってもらえますか?またあとで呼び出します」


「結局こうなりましたか。まぁ、構いませんよ」



 永久と手を合わせると、永久の体がわたしに吸い込まれるようにして消えていきました。自分が消える瞬間を見るのはなんというか不思議な感じがします。今後も使うことになるでしょうから慣れておかないといけませんね。



 彼女を帰し終えたタイミングで大きな音を立てて部屋のドアが吹き飛ばされました。ドアを吹き飛ばした勢いのまま卯月がわたしに突進してきます。



「あるじさまーー!!」



 わたしは本能的に危険と判断して、反射的に卯月の突進を受け流すようにして軌道を逸らしました。



「・・・あ」



 〈異世界武術強化〉のせいもあって、いつもより綺麗に受け流されて勢いを殺し切れなかった卯月は、そのままどーんと音を立てて壁にぶつかりました。よく壊れませんでしたね。うちの家の壁はとても頑丈です。



「うぅ~あるじさま酷いのです~」


「・・・いえ、なんとなく、反射的に動いてしまいました。大丈夫ですか、卯月?」



 この程度で怪我をする卯月ではありませんが、一応心配する振りをしておきます。わたしがベッドから起き上がって近付くと、卯月は素早くわたしに抱き付いてきました。今度は避けずに正面から受け止めます。



「あるじさまあるじさまあるじさま~♪」


「・・・はいはい。心配かけましたね。もう大丈夫ですよ」



 顔をぐりぐりと押し付ける卯月の頭を優しく撫でていると、壊されて開放的になった入り口に弥生と如月がやってきました。わたしを見た如月が泣きながら抱き付いてきて、弥生も少し涙ぐみながらも綺麗に礼をしました。



「お帰りなさいませ。主様」


「・・・ええ。ただいま戻りました」



 弥生達が落ち着くまでしばらくの時間を要してから、わたしは一階のリビングで食事を取りつつあれからのことを聞きました。あ、卯月が壊した扉も直しておきましたよ。



 わたしがフェニさんの能力で眠ってからは、皆さんでボロボロになったわたしの家を建て直して、わたしを部屋で寝かせてから解散となったそうです。セラさんやエルさんはそれぞれ大事な用事の途中で抜け出してきたそうなので、戻ったら大変だと愚痴をこぼしていたそうです。そのうち埋め合わせをしないといけませんね。



 フェニさん達のおかげで領域内外に居た魔物は一掃され、領域近くに設置されていたという、魔物を呼び込んでいたゲートとやらを破壊してくれたらしいので、とりあえずの平穏を取り戻したようです。本当に感謝ですね。



 わたしが眠った後の領域内は教会に集まった動物達の開放や怪我をした神獣達や動物達の治療、破壊された教会の修復などを行ったそうです。後はわたしが礎の核を使って、領域内のあちこちに残っている戦闘の跡を修復すれば全て元通りになるそうです。ちなみに、動物達も含めて犠牲者は出なかったらしいです。わたしを気遣って嘘を吐いていないか、念のためわたし自身も索敵を使って確認しましたが、本当に大丈夫だったようです。これについては本当に安心しました。



 それで、わたしの目覚めを今か今かと待ちつつ、眠りについてから三日間が経過してようやくわたしが起きたみたいです。眠っている間に様子を見に来たフェニさんの話では、膨大な魔力の暴走や正式な手順を踏んでいない強引な進化によってかなり精神的に衰弱したのが長い眠りの原因ではないかとか。



「一週間以上眠る可能性もあると言われましたが、早くに目が覚めてとても嬉しく思います」



 弥生がわたしに料理を運びながらそう話を締めくくりました。



「・・・では、これを食べたらまずは領域の修復をちゃちゃっと終わらせましょうか」



 弥生達との食事を終えて外に出ると、ベガとミラーが家の前で待っていました。わたしの姿を見て二匹が跪きます。ミラーはうさぎなので伏せているようにしか見えませんけど。



(我が主よ。お目覚めして安心いたしました)


(その、あたしのせいでトワ様が暴走したのでしょう?心配をおかけして申し訳ありませんでした)



 ミラーのボロボロになった姿を見たのが発端ではありましたが、それまでに積み重なった様々な要因でわたしは暴走したのです。自己管理が出来ていないわたしが責められるならば兎も角、被害者であるミラーが謝る必要はありません。ということなので、わたしは伏せているミラーを持ち上げて目を合わせます。



「・・・あなたが無事ならばそれで良いのです。わたしの領域を守ってくれてありがとうございました」


(っ!勿体ないお言葉です)



 話が終わったので感動で目を潤ませているミラーをポイっと卯月に投げ渡しました。



「・・・それでは、わたしは礎の核に向かいます。卯月はミラーと遊んでいてください。弥生と如月、ベガは領域の修復をすること各地に知らせてください」


「きゅい!?」「わかったのです!」「承りました」「任せてください!」(御心のままに)



 それぞれがわたしの指示通りに動いたのを確認したわたしは結界で守られている社に向かいました。



 社の一番奥の部屋に安置されている礎の核の前に立ったわたしは、目の前にある制御盤に手を当てて目を瞑ります。修復と言いましたが、正確にはわたしの記憶から魔力を使って以前の状態に再生します。使う魔力は礎の核の中に入っている貯蔵魔力を使います。かなりの魔力を使いますが、放っておけばそのうち回復するので再生後に魔力を入れる必要はないでしょう。



 再生がどのように行われるのか分からないので、沢山の監視カメラのモニターのように領域のあちこちの様子が見えるようにしてから再生を始めました。



 すると、領域全体が光の粒子に包まれていき、光の晴れたところが次々に真新しくなります。薙ぎ倒された木々や、戦闘で大穴の空いた地面も修復されて元通りに戻っていきます。こういうのを見るととてもファンタジーな気分になりますね。



 再生は十分ほどで思っていたよりもあっさりと終わりました。



 一仕事終えて社の外に出たわたしは念のために領域のあちこちに視察しに向かいました。どこに行っても動物達や聖獣達に囲まれてしまい、一周するのにとても時間が掛かりました。



 領域を一周するころには外の世界はすっかりと遅い時間になってしまったので、その日はわたしの快気祝いということでプリシラさんも招いて豪華な夕食を食べてから(食事は弥生が張り切って作りました)、弥生と卯月と如月とスライムちゃんと一緒に寝ました。寝る必要はないのですが、卯月と如月に挟まれた状態でお願いされ、弥生にもお願いされてしまったので、うさぎの姿でみんなでベッドの上で丸くなったのです。沢山心配をかけましたし、また明日からは忙しくなると思うので快諾することにしました。



 そして次の日、わたしはフェニさん達とセラさん達に声を掛けて話し合いをします。



 内容はもちろん、わたしを散々と煩わせてくれたあの忌々しい悪魔を討伐する話です。




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