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プロローグ

王国騎士団表彰で最も栄誉ある金賞を与えられた『天響騎士団』、その騎士団長たる父は、幼い頃からリリアンジェの誇りだった。


父に憧れ、敬い、「私も騎士になってお父様をお助けするのよ!」と、長い金髪を揺らしながら翠の瞳を輝かせたのは、リリアンジェが六歳になる誕生日のことだった。


その翌年、父は冤罪ですべてを失った。罪状は第一王子への不敬だ。「第一王子が王太子にもなれず、民衆の前に姿を見せないのは、彼が狂人だからだ」そう父が吹聴していると告発されたのである。


もちろん父は抗議したが、副団長ヒルドの奸計はすでに完成していた。高級官僚や裁判官に、彼らが充分納得するだけの金銭が贈られていたのだ。


異例の早さで裁判は進み、判決がでた。果たして父は、騎士爵位もあまたの称号も剥奪された。祖先から受け継いできた土地さえも。


住む家すらなくなったリリアンジェたちは追われるように王都を出た。二年ほどは各地を転々としていたが、帝国との国境沿いにある町で留まることとなってしまった。ヒルアナ王国とギリノス帝国が政治的に少し揉めただけで死人がでるような街だったが、母の調子が悪く、もう移動はできなかった。


ほどなくして母は亡くなった。父もそれからはみるみると弱っていった。


追い打ちをかけたのは王都からの知らせだ。ヒルドが乗っ取った天響騎士団が、王国騎士団表彰で金賞を取ったというのだ。半年ほどで隆々としていた父の筋肉は削げ落ち、肌も茶色く濁っていった。


父の最後を看とったのはもちろんリリアンジェだ。枯れ枝のような父の手をとり、最後の言葉を聞いた。


「リリよ。天響騎士団を超えてくれ」


はたから見れば、それは呪縛にすら聞こえるのかもしれない。だがこのとき、もはや生きる気力を失っていたリリアンジェに魂を吹き込んだのも事実だった。


天響騎士団を超えることを、私の天命としよう。だからその騎士団の名は『天命騎士団』! 目指すは天命騎士団にも金賞を! いいえ、お父様を超えるのですから、この世界すら救って歴史上最も偉大な騎士団にするのよ!


そう決意し、リリアンジェは前だけを向いた。


十歳になっていたリリアンジェは、父を慕っていた騎士のもとを訪ねた。以前はリリアンジェに優しかったその騎士からは、うってかわって冷遇をうけた。


『礼は尽くせ』という父の言葉を守り、形見の武具や宝石を換金して作った多額の持参金を、惜しみなく差し出した。それなのにリリアンジェには部屋が与えられず、母屋の通路や、厩舎で夜を明かす日々が続いた。


そんな状況の中でも、リリアンジェは剣の修行に勤しんだ。倒れるまで野を駆け、手のひらが血に染まるまで剣を振り続けた。そうやって目標に猛進しないと、心が壊れそうだったのだ。


リリアンジェの才覚も大きいが、その努力が実ったのは二年後のことだ。王都からずいぶん離れた地方ではあるが、歴史のある由緒正しき学園で、騎士コースに特待生合格した。特待生なので、学費も寮費も免除される。


さっそく入寮したリリアンジェは、それからも慢心することなく日々の鍛錬に励んだ。在学中に騎士ランクB級に合格したのは、学内でも十年にひとりでるかの快挙だった。


そして、卒業式を終えたその日のうちに、リリアンジェは王都を目指して旅立った。

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