ヤンデレの更生に取り掛かってみよう!
博己は朝、前から廊下を歩いてきた優子と出会う。
ちらほら人がいるのが影響しているのだろう、優子は博己に会釈し教室に入って行った。
内心、博己は優子の姿を見たとき焦った。
目がしっかりと俺の方を向いており、薄ら寒い笑みをこぼしていたからだ。
ここまで冷えてはいるが火照りを抑えられないかのごとくの笑顔を見たのは博己にはこれが初めてだった。
しかし、こんなところでめげてはならない。
先生の頼み事というのもあるが、ここで怯んでちゃ姉さんに失礼だ。
博己はそう心の中で思い、思い切って放課後、教室にに優子を呼び出した。
「博己様が直々に私をお呼びになるとは…何でしょうか?性奴隷の準備なら整っておりますよ♡」
「性奴隷?か何かは知らないが、一つ俺の言うことを聞いてくれ」
「何でしょうか?」
「一緒に身体を動かそう!」
博己がそう優子に伝えると、より一層優子はニヤニヤし出した。
まるで何かを勘違いして発情してるかのごとく。
「っああああ♡♡♡やっぱり性奴隷!!!いいです、博己様!来ちゃってください!その滾ったオスを私にください!あ、ちゃんと赤ちゃんは作りましょうね?絶対ですよ?いくらゴムつけたって無駄ですからね?小さな穴開けちゃいますね♪」
最初にあった時の黒い霧みたいなのが教室中いっぱいに広がる様子を博己は幻視した。
これはオーラみたいなものなのかな?とその中心にいる博己は思う。
「違う、一緒に運動しようと言う意味だ」
「はい!いっぱい子作りしましょう!」
噛み合わねーと博己は心の中でため息を吐く。
いやしないし、俺は初めては好きな人ってちゃんと決めているから。
「違う、運動というのはイヤらしい意味の隠語ではない」
「あははは……は?」
「空手をしよう!という意味だ」
黒い霧が一瞬で優子の元へ戻る。
そして心底冷めた目で…
「どうして?こんなに誘っているのに…」
「誘ってくれているのはありがたいが、俺の初めては好きな人と決めている」
「ならいいじゃないですか、私たちは両想いです」
「なにを根拠に?」
「貴方が消しゴムを不甲斐なく忘れた時に笑顔で貸してくれましたよね?」
「…確かそんなこともあったな」
入学当初、必要な書類とかを書く時に消しゴムを忘れてあたふたしている静香を見つけ、博己は自分の消しゴムを貸してあげたのだ。
そんな些細な事で…?
博己は驚愕する。
しかし、ヤンデレという人種はそういうものなのだろう、昨日予習してきておいて幾らかの心構えが出来ている、博己は少し驚いたがすぐに納得した。
「これが両想いじゃないんですか?」
静かに博己に問う。
「違うな」
「えっ!?」
「そのくらいでは両想いとは言わない、ただの知人だ」
「へっ!?は!?」
静香は酷く狼狽え始め、涙目になり始めた。
博己は心が痛むがそれでも続ける。
「そして俺は君の事を知らない」
「やめて…」
「だから悪いが今は君の気持ちに答えられない」
静香は手で耳を覆った。
なぜそんなに酷く泣いているのか知らないが、それでも心の内は早めに言っておいた方がいいだろう。
「嫌…嫌…もうやめて!やだ!聞きたくない!嫌!拒絶しないで!お願いだから!私と一緒にいて!」
「だから…」
静香は腹の底から絶叫する。
「やめてえええええ!」
「友達からで良いか?」
「…………え?」
博己の言った一言に静香が反応し、顔を上げる。
狂気の顔しか見たことがない博己は静香の綺麗な顔を見て感嘆のため息を吐く。
なるほど、この子はこんなに可愛かったのか。
博己は言葉を繋げる。
「君は俺のこと詳しいかは知らないが、俺は君の事をあまり知らない」
「…」
「だから、友達から始めて…俺に君の事を教えてくれないか?」
「……はい」
「ありがとう、話を聞いてくれて」
「はい」
「じゃ空手は明日にして、今日は帰るか!」
「はい」
「送っていくよ、荷物準備しな」
「は…えっ!?」
「なにやってんだ?」
優子はあたふたとしながら帰る準備をする。
こう見たら、ヤンデレという事を忘れてしまうなと、博己は思った。
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アクセス数を見ると初日に200人超えてビックリしました。
見た事ねぇよ初日でこんな数字…
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