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ヤンデレを更生させよう!  作者: へんなひと
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姉という存在

 しかし更生と言っても何をしようか悩むところが博己の心境だ。

 彼女は丁重に先生に扱ってもらい、博己は一旦策を練ろうと家に帰らせてもらった。


 博己はそのガタイ故に、空手や柔道の助っ人に良く参加していた。

 今、博己は帰宅部であり何を考えているのかと部活の先輩から詰め寄られてはいたが、「元々なんとなくでやっていたものでして、そんな気持ちで競技に挑むのは大変失礼に値します」と返し、今は孤高の帰宅部ライフを満喫しているが、果たしてそれらは役に立つのだろうかと博己は思う。

 とは言っても、助っ人が必要な時には博己は行くが。


 ヤンデレについても博己は知識が乏しいにも程がある。

 後で、全知全能なんでも知っている我が師に教えてもらおうと愛する家の前まで来た。


「ただいま」

「えへへーお帰りー」


 家の玄関をくぐると、ショートの茶髪、エプロン姿で胸はデカく、モデルのような美女が博己を出迎え、博己に抱きつく。


「姉さん離れてくれない?」

「やーだー、仕事で疲れた分の博己ちゃんエナジーを吸収するのだー」


 えへへーと可愛らしい笑顔を見せる。

 この女性は博己の姉の稲垣静香(いながきしずか)、両親が居なくなってからはこの姉だけが博己の家族だと思っていい。

 仕事は博己には内緒にしているが、かなりの額の収入を得ており、現在の家計を支えている。

 そのことに博己は申し訳なさを感じてはいるが、高校はバイト禁止であり、流石に今は甘えている状態だ。


 前に博己が、一人暮らしをしたい旨を伝えると「お姉ちゃんを一人にしないで…」と泣き始めた重度のブラコンである。


 博己には良き相談相手であり…


「どーしたのー?なんか元気ないねー?悩み事?」

「あ、やっぱりバレたか」

「分かるよ!だってお姉ちゃんだもん!」


 大きな胸をぶるんと揺らし、胸を張る。

 博己にとっては唯一の大人だ。


「で、なになに〜?」

「ああ、実は…」


 博己は静香に今日会ったことを話す。

 そうしたら静香はびっくりした顔になったり、悲しそうな顔になった。


「あーやっぱりそうだよね…博己ちゃんはいつか大きくなって彼女さん作ってお家から出て言っちゃうんだ…」

「な、何言ってるんだ!姉さんがお嫁に行くまで家にいるよ!」

「そう?だったら博己ちゃんのお嫁さんになって一生ここに居てもらおっかなー?」


 博己は本当に心配になる。

 好いてくれるのは弟冥利に尽きるが、いくらなんでも甘えすぎではなかろうか。


「でも分かっちゃうなーその子の気持ち」

「え?」

「だって博己ちゃんのこと好きで好きで堪らなくてそうなっちゃったんでしょ?私も同じ立場だったら、その子と同じようになっちゃったし」

「…」


 静香は真剣な表情で博己に話す。


「例えば、その子が博己ちゃんの事好きだー!って言うのなら、博己ちゃんも俺もこれが好きだー!って好きなものとか紹介したらどう?」

「それって?」

「例えば、好きなスポーツとか!ほら!博己ちゃん空手とかやってたでしょ!その子の空手をする事の楽しさを教えてあげなよ!きっと、身体を動かしたら嫌な妄想だって消えちゃうよ!」


 その話を聞いて博己は流石俺の姉だなと思った。

 やはり、唯一の大人というのは説得力が違うと思った。

 本当に信頼できる人に話を聞いてもらってスッキリした博己は「ありがとう姉さん!まあ、程々に頑張るか!」と言い自室に戻って行った。


『分かるよ…だって同じだもん』


 静香のポツリと呟いた言葉を拾わずに。


 ◇


 姉の静香は弟が自室に篭ったのを確認して鍵を取り出し、自分の部屋に入る。

 薄暗い部屋に光を灯す。

 そこには博己の幼少期から今の高校生までの写真が至る所に貼ってあった。


「分かるよ、分かるよだってその子は私と同じ、博己ちゃんを病的なまでに愛してるもん」


 さっきまでの博己と会話して居た優しい表情の静香はおらず、冷たい空気が漂うような威圧的な表情をした美女がそこには居た。


「愛してるもん、博己ちゃんの事大好きだもん…」


 静香はお手製の博己抱き枕を抱き抱えスーっと大きく息を吸う。


「はあああ♡♡♡博己ちゃんの匂い♡♡」


 ベッドに倒れこむように寝そべる。


「しゅきっ!だいしゅき!」


 激しく身体をくねらせ、博己の抱き枕に精一杯の愛情表現をする。


「んはぁ!はぁ…はぁ…カバーダメになっちゃった…」


 静香は賢者タイムかは知らないが、ベッドの上で仰向けになる。

 ここまで博己の事を好きになったのはいつからだろう。

 もう生まれた時から好きだったような気がする。


 そして、今日の話に出た博己が言っていた彼女。

 恐らく私と同類なら助言した方法で病むことは無くなるだろう、と静香は思う。

 それは同類だからこそ分かる事だった。


 でも、ね。

 もし、それでもその子が博己ちゃんの事好きなのならば。


「私、その子の事殺しちゃうかも…」


 その明確な殺意は夜の暗闇へと消えて行った。

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