第16話
鬼ヶ島へ向かう山道。
四人は、以前よりも自然に並んで歩いていた。
誰が前でも、誰が後ろでもない。
だが――
最前列に立つのは、いつも虎だった。
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猿が言う。
「近いぞ!
鬼が来る」
一瞬後。
岩陰から鬼が飛び出す。
だがその瞬間にはもう遅い。
虎が踏み込んでいる。
一撃。
鬼は地面に叩きつけられる。
虎の圧倒的戦闘力。
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「さすがだぜ。
お前がいれば酒呑童子なんて
敵じゃねえな」
猿が。強気な表情で言う。
虎は短く答える。
「だといいがな」
その言葉に、桃太郎が少し心配そうに言う。
「虎、お前のことは頼りにしてる。
でも、決して無理はしないでくれよ。」
虎は振り返らない。
「ああ、わかってる」
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夜。
焚き火を囲む。
キジが空を見張る。
猿が地図を広げる。
桃太郎は剣を磨く。
虎は、皆から少し離れて座っている。
だが視線は常に周囲を見ている。
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「寝ないのか?」
桃太郎が聞く。
「お前らが寝てからだ」
「俺は夜目が利く」
「盾は起きてるもんだ」
軽く言う。
だが、その言葉に嘘はない。
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キジがふと呟く。
「無理してないか?」
虎は少し黙る。
焚き火の火が揺れる。
「俺はな」
「昔、守れなかった」
「もう誰も死なせたくない。」
(俺はどうなってもいい。)
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翌日。
鬼の群れが現れる。
数が多い。
猿が叫ぶ。
「囲まれた!」
キジが空から叫ぶ。
「後方にもいる!」
桃太郎が前に出る。
だが――
虎が腕を広げ、三人の前に立つ。
「下がれ」
「ここは俺が受ける」
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鬼の棍棒が振り下ろされる。
虎が受け止める。
衝撃で地面が割れる。
だが、退かない。
二撃目。
三撃目。
それでも動かない。
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「今だ!」
虎が叫ぶ。
その隙に猿が背後を断ち、
キジが上空から吹き飛ばし、
桃太郎が炎で切り裂く。
連携。
完璧だった。
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戦いが終わる。
猿が息を吐く。
「お前がいなきゃ終わってたな」
キジが言う。
「真正面から受け止めるなんて無茶だ」
虎は肩を回す。
「心配するな。
俺は硬い。
強い。」
桃太郎が静かに言う。
「いつも負担を掛けてしまってすまない。」
「桃太郎。
お前の剣は酒呑童子だけに向けておけ。
雑魚は俺に任せてくれ」
虎は静かに力強く言った。
「大丈夫。
俺の体はそんなにやわじゃない」
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だがその夜。
虎は一人で空を見上げる。
鬼ヶ島の方向。
低く呟く。
「順調に進んでいるな。」
「このまま何事もなく
酒呑童子のところまで行けると
いいんだが...」
虎が少し遠くを見るような表情で言う。
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遠く。
鬼ヶ島。
「四匹か」
低い声が響く。
「なかなか調子に乗っているようだな。
フフフ、
そろそろ絶望を味わわせてやるか。」
「行け」
「ハッ」
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知らない。
桃太郎も。
猿も。
キジも。
虎だけが、嫌な予感を感じていた。




