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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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245 流民と治安維持(九)

 私が入学する前は、学生や教授が製作した魔術具で特許を取り、特許料の一部を学部や学科が貰えるなんてことは、ほぼなかったらしい。

 私が作った魔力量測定魔術具と空間拡張系の入れ物の特許料の一部が、現時点で発明学科と鑑定士学部に入金され、研究費が大幅に増えていることに、他学部の教授たちは羨まし過ぎて歯ぎしりをしていると、アレス君から聞いている。


 ……だから私は、複製に関わった全員が特許料をって、わざわざ前置きをして、流民問題解決の協力を積極的に行ってくれるよう、誘導しているのである。


 特許料獲得とか自分の学部に研究費が……なんて素敵な言葉で誘ってはいるけれど、皆さん学園で学生を教え導くという仕事を持っている。

 夢と現実の狭間で、どうしたものかと思案を始めるけれど、取り合えず地上に水を引くことと、農業開始に取り掛かって欲しいと言って、其々の専門分野を生かして作業を続けてもらう。


 僅か二日後、測量の魔術具を使ってロード内と地上を測量した結果、水道を地上に引く場所が決定した。

 ついでに、水源の近くを畑にする予定なので、一帯の測量も夜に行い、大体の場所と広さを確定できた。

 これで流民の皆さんを地上で働かせて、畑の外枠の工事を開始できる。


「でもなぁ、畑づくりを監視する人が居ない。最速踏破者の皆にも休みが必要だし、ロード内の治安維持にも人手が居る。

 なんだかんだ言っても、学園の皆さんは私の依頼を達成する仕事があるので、流民の世話どころじゃないからなぁ……は~っ」


「そうだねサンタさん。まさかここまで僕たちの指示を理解できないなんて、思ってもみなかったよね。

 エイバル王国では平民だって初級学校に行けるし、働きながら学ぼうとする。

 ギューメラ王国の王や貴族は、教育が国力を上げるって概念も持ってなさそうだ」


 問題が山積みの現状を嘆きながら、私はアレス君と一緒に一旦シャングラの町に戻ることにした。


 流民の中からリーダーを選出し、みんなを纏めて仕事をして欲しかったんだけど、村長や領主の指示に従い、自分で物事を考えることを放棄してきた流民たちに、リーダーとなる資質のある者が居なかった。

 いや、慣れてきたら居るって分かるかもしれないけど、あまりにも次元の低いことで喧嘩し、違う村や町から来た者とは対立ばかりしている。


 確かに教育らしい教育も受けず、創意工夫もせず指示に従って農作業だけをしていた農奴の皆さんに、大きな期待をするのは間違っていたのかもしれない。

 きっと、リーダーになれるような資質のある者は、領主から捨てられたりしないんだろう。

 教会だって数が少ないし、農奴や奴隷は教会で神父様の話を聞く機会もないらしい。


 ……困ったなぁ……身分や力で言うことを聞かせるのは嫌だし、大人を子ども扱いするのもなぁ……



 なんてことを考えながらシャングラの町に戻ったら、王都から食料を奪いに軍がやって来るとの噂が広まり、領主屋敷に住民が殺到して大混乱になったと教会長から聞かされた。

 当然、怒りが込み上げてきたけど、ぐっと我慢して最後まで報告を聞く。


「領主屋敷で代表者会議が行われ、住民を鎮める最良の方法として、大賢者様に付いていこう! ってことになったようです」


「はい?」


「自力で動ける流民全員を【サンアンシスロード】に移し終え、これ以後の流民は受け付けないと、大神官様とシャングラの領主が宣言し、城門を固く閉ざしました」


 これよりシャングラの町は立てこもり体制に入り、王族や高位貴族からの略奪行為に対抗する。

 町への入場は厳しくチェックされ、食料調達や避難目的の者の入場はできないと町中に告知したことで、町は平静を取り戻したのだと言う。


 シャングラの町の領主が、ここまで強硬な態度がとれたのは、いざとなったらシャングラの町ごと、神聖領ガイアスラーに組み込んでもらえばいいと、町の代表者たちが意見を出し、住民たちも同意したからだという追加情報には、怒っていいのか泣いていいのか迷ったわよ。

 

 ……いや、私がロードに潜っている間に、なんでそんなことになるのかなぁ?


「まあまあ大賢者様。そのお陰でシャングラの町の住民たちも、神聖領ガイアスラーの開拓に協力してくれることになったんですから、良い方に考えましょう」


 妙に明るい顔をして、大神官様が私を諭しに掛かる。


「はい、神聖領ガイアスラーに作る予定の畑は、シャングラの町の住民の食料にもなるわけですから、皆、張り切って協力いたします」


 領主までニコニコして、農具も提供するし町づくりにも協力するからと言って、説得しようとする。


「それに、流民の治安が心配で、ロードからなかなか戻ってこられなかったと聞いている。なに、うちのハンターたちが喜んでロード内の見回りをするさ。

 見回りなら、金級や銀級でなくてもいいだろう? 皆、新ロードに興味津々なんだよ。日当は必要ない。ボランティアだからな」


 一番黒く微笑んでいるのは、シャングラ支部のチーフだ。

 治安維持要員が居なくて困っているとの情報を掴み、痛いところを突かれてしまった。


「確かに助かる。本当に助かるんだけど、シャングラの住民は、本当にそれでいいの? 私、大賢者だけど九歳の子供よ?」


「ハハハ、今更何言ってんだか。あれだけ凶悪で凶暴な大トカゲをバンバン討伐し、身銭を切ってまで流民に尽くしていることを、住民はみんな知ってる。

 そんなサンタさんだからこそ、皆は将来を託してみようと思ったんだよ」


 サブチーフがハハハと笑いながら、皆で頑張ろうぜって言うもんだから、思わず涙が出ちゃったじゃない。

 

「良かったねサンタさん。町の人たちは、僕たちが頑張っていることを、ちゃんと認めてくれたよ。自分たちの運命さえも、託していいと信じてくれたんだ」


 私にハンカチをそっと差し出しながら、アレス君が止めを刺しに来た。


 ……もう、号泣しちゃうじゃない! みんな、期待が重いよ! でも、本当にありがとう。結構行き詰ってたんだよ。グスン。


 私が泣き止むのを待って、これからのことを話し合う。

 流民に関する治安維持は、トレジャーハンターたちが無料で請け負ってくれる。

 畑づくりは、シャングラの町で農業をしている人たちがリーダーとなり、警備隊の半数が見張りをしてくれる。 

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

次話から新章スタートします。


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