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三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~  作者: 杵築しゅん
神聖領ガイアスラー

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227/250

227 迫る大飢饉(六)

【サンタゲート】に到着した一向に、私はこれからの予定を告げる。


「ギューメラ王国の王族や貴族は、農奴や奴隷を自領から追い出し、無責任にもシャングラの町へ向かうよう命じました。その数は、およそ千人です。

 三日以内に流民となった者たちが、一気に押し寄せると先ほど報告を受けました」


「なんだと! 千人もの民が見捨てられたのか!」


 私の話を聞いて驚きの声を上げたのは、商業連合のエバリス副会長だ。

 他の者たちも信じられないと騒ぎ始め、無責任な王族や貴族に怒りを滲ませた。


「私が神聖領ガイアスラーの領主になったのは、そんな気の毒な流民をできるだけ多く救いたいと思ったからなのですが、現実は厳しいです。

 この大地には、まだ小屋さえ建っておらず、水源さえない。畑も無いし川もない。でも、流民はやって来るのです」


「千人もの流民を、どうやって助けるんですか大賢者さま?」


 そう質問したのは、ツクルデ教授の研究室で一緒に研究していたキンデル先輩だ。きっと、困難を予想して心配してくれているのだろう。


「フッフッフ、私はどんな逆境の中でも、使える人材をフルに使い、知恵を出し合い、技術を向上させ、資金さえも自ら作り出してきた少女です。

 ですから、今回の大逆境を乗り越えるために、皆さんの知識と労働力をお借りしたいと思います」


 当然ですよねって顔をして微笑めば、ほぼ全員が困惑しながら嫌そうな表情に変わっていく。

 軽い気持ちで調査に来たつもりでいる教授たちには、かなり耳の痛い話であり、巻き込まれたくない面倒ごとのはずだから。


 ……だからって、逃がしたりしないよ。


「もちろん、知識提供と労力提供には、相応の対価を用意しています。

 その対価こそが、これから向かう【サンアンシスロード】に眠っているお宝なのです」


 ……う~ん、いまいちな反応ね。でも、まだまだこれからよ!


「お宝といっても、先日お見せした高価な皿などはほんの一部で、遺跡そのものが芸術品でもあり、未知なる技術を学ぶ知の宝庫であり、そして、発見されている魔術具の多くは、今でも起動できる可能性が高いのです」


「ほう、それはいいな」

 つい声を出してしまったのは、鑑定士学部のシリテーナ教授だ。


「特に目を引くのは、地下水脈から水を汲み上げる魔術具と、水が通る未知なる素材のパイプという名の管。先日試しに起動させたら、見事に水が噴き出しました。昨日皆さんに検証していただいた、あの樽の水がそうです」


「なんと、あの美味い水は、高度文明紀の魔術具で得たものだったのか!」

 美味いと認めてくれたのは、農学部から唯一参加してくれたミーノデル准教授だ。

 飲めなければ農業用にすると言った私に、十分人間が飲めると太鼓判を押してくれ、こんな美味い水は初めてだと感動していた。


 ……よし、ちょっといい感じになってきたんじゃない?


「壁には、古代の生活が分かる色鮮やかな壁画が描かれ、空を悠々と飛ぶドラゴンの絵は、本当に素晴らしいものです。

 また、巨大な柱には、人々の生活の様子や錬金の様子などが記録として残されています。素晴らしい記録だと思われます」


「ほう、高度文明期の生活が描かれているのか……これまで知られていなかった謎を解明する素晴らしい記録だな!」

 歴史学科のターンキュウ教授は、高度文明紀が大好きだもんね。


 ……よしよし、乗ってきた乗ってきた。


「特に素晴らしいのが、直線に伸びる舗装されたロードに、他の古代遺跡とは違い、岩盤をくり抜いて作られている街並みが、そのまま残されていることです」


「なんと、岩盤をくり抜いて町を作ったのか?」


「はいそうです地質学科のカンドウ教授。しかも、全長は軽く二十キロを超えています。あまりにも高い技術に驚嘆し、地下都市の構造を解明したくなりました」


「なんだと!地下都市? 地下都市と言ったか?」


「はい、ミルベ教授。私の推測では、この地下都市に住んでいた多くの人々は、突然起こった大噴火から生き延びるため、最低限の物を持って移動したようで、まるで昨日まで地下都市で生活していたかのように、あらゆるものが残されているのです」


「「なんだと!」」

 エイバル王国から来た全員が、信じられないような奇跡の話に、驚きの声を上げる。


「もちろん、経年劣化はありますが、食器や鍋などの陶器や金属製品は、全くと言っていい程にそのままなのです。

 木製品は朽ちているものの、謎の金属で作られた箱などは、今でも現役で使用できるでしょうし、魔核が嵌め込まれた巨大な魔術具の扉など、圧巻過ぎて言葉になりません」


「巨大な魔術具だと!」

 我慢できないって感じで叫んだのは、発明学科のミルーメ教授だ。


「謎の金属? 今でも使えるだと」

 鍛冶学科のオーナシ准教授も、身を乗り出すようにして問う。

   

「先に数日だけ調査した教会大学の教授陣は、毎日感動の涙を流し、生涯の研究テーマにすると言っていました。

 全ての学問の常識を超え、これを知らずして何が学問か……とか言って、本格的な調査の準備をするために、飛んで帰りました」


「……生涯の研究テーマ……」

「飛んで帰った……」

「…………」


 ……よし勝った! このメンバーの殆どが【聖なる地】からのお付き合いだもん。皆の知りたいポイントなんて把握済み。



【サンタゲート】から【サンアンシスロード】までの道中、探求心が抑えられない気分がハイな状態の皆さんに、私は流民対策の相談をしながら歩いた。

 上機嫌な皆さんは、いろいろな案を出してくれるし、私の気付かなかった問題点なども指摘してくれた。

 途中、この連絡通路は、私とアレス君が十日間で掘ったのだと報告したら、全員に絶句され、久し振りに奇異の目で見られてしまった。


 また、これから夏本番の炎天下で、住む家もない流民の皆さんを、地下都市で生活させる予定だと告げ、全員を仰天させた。

 最低限必要な水が確保できることと、地下都市の気温は一定で住みやすく、一万人規模でも生活できるはずだって言ったら、大袈裟な……と笑われたけど、フッフッフ、見て驚け! 可能だから。


 そして【サンアンシスロード】に到着した皆さんは、その巨大さと素晴らしさに、言葉を失った。

 さあ、サクッと案内して、狩りに行こう!

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

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