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保護惑星の魔石採集者  作者: あおおに


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23/23

魔物は、みんな卵から?

 2日後の朝、中野姉妹に預けていた卵が孵った。

 生まれたのは、2体ともツインテール・フォックスと呼ばれる、ふさふさの尻尾が2本あるキツネだ。いや、仔ギツネだ。

 まだ四肢の短いコロコロした体型で、ふわふわした毛並み、つぶらな瞳のフォックスたちは、文句なしに可愛かった。ノウンもスーパー可愛いが、この2体の可愛さは筆舌に尽くし難かった。


 当のノウンが、2体の可愛さに参ってしまったぐらいだ。

「可愛いものだのぉ」とか言いながら、目を細めている。

 純白の天使猫獣人が、赤毛の毛玉みたいなフォックスたちを抱いている姿は、一幅の宗教画みたいに見えた。

「名前は、どうするのじゃ?」


「それは、シラヌイとカガリに決めました」

「ほぉ。火魔法を持ってる此奴らにはお似合いの名前じゃな」

「え?この子たちは、火魔法持ちですか?」

「あと、簡単な幻を見せる能力があるな」

「へー、さすがノウン、魔物の能力が判るんだな」

「それに、成長するに連れ、尻尾の数が増える様じゃ」


「じゃあ、何を食べさせたら良いか判りますか?」

 本当に動物が好きなのだろう。中野姉妹がメモを取りながら、ノウンに質問をする。

「肉でも魚でも、普通にやって大丈夫じゃぞ。卵から生まれるという事は、ミルクが必要な期間は卵の中で終えてるという事じゃからな」

「じゃあ……」

 と、榊原が小魚を2匹取り出すと、シラヌイとカガリが目を輝かせて、パクリと食いついた。


「お。いい食いっぷり!」

 小魚と言っても、自分の身体の三分の一ぐらいありそうな大きさだ。それを2体───いや、2匹でいいか───2匹は、「ウニャウニャ」言いながら、ムシャムシャと齧っている。

「くぅ、可愛い〜」

「俺、魚釣って来る」

 俺は腕輪の通販システムで釣り竿を買うと、湖に向かって走り出した。


 気がつくと、後ろからシラヌイとカガリが短い足で走って来る。その後ろから、中野姉妹が必死に追いかけて来る。

「お、おい、釣るのは、今から……」

 と、2匹は俺を追い越して、そのまま湖に飛び込んで行った。

「シラヌイちゃん!」

「カガリちゃん!」

 中野姉妹の悲鳴が響く。


 が、2匹は短い足でパシャパシャと泳いで行く。

 そして、適当な所で湖に潜ると、魚を追いかけ始めた。

「産まれ立てのクセに器用な」

 さすがに一回では獲れなかったみたいだが、何回か潜っているうちに見事に魚を捕まえた様だ。

「えーと、俺の釣りの意味は……」


「だ、大吉さん、期待してますから……」

 中野姉妹に慰められ、俺は湖に釣り糸を垂らした。





 そして、1時間。

「釣れましたか〜?」

 竜ヶ原さんがのぞきに来た。

 なぜかワンピースの水着姿でサングラスをかけ、丸めたマットを持っている。ちょっと、ドッキリする。

「釣れないよ、全然。つか、そこで日光浴をする気かよ」

「大吉さんも、1人じゃヒマでしょ?」

「そうだけどさ」


「釣り竿、わざわざ新しいの買ったんですか?浜部さんのがあったのに」

「なんかイヤじゃん、あの人のお下がりは」

「まあ、分かるけど。でも、あの人、釣りは上手かったですよ?」

「いいんだよ!どうせ、ただの趣味なんだから!」

「負けず嫌いなんだから」

「うるせー」


「地球じゃ釣りはしてなかったの?」

「釣りなんかする余裕はなかったなぁ」

「じゃあ、趣味とかなかった訳?」

「読書ぐらいかな」

「本が好きだったんだ。どんなの?」


「小説から専門書からマンガから、何でも読んでたなー」

「意外。そんなタイプに見えないのに」

「どんなタイプに見えるんだよ?」

「ちょいワル中年?」

「不良会社員ではあったけど、ワルくはなかったぞ?」


「モテた?」

「モテない。彼女なんか、何年もいなかった」

「本当に?」

「本当に。……そちらこそ、モテてたろう?」

「私?そんな事ないよぉ」


「モテそうに見えるけどな」

「お世辞はいいわよ」

「いや、お世辞抜きで良い女だと思うもの」

「あら……」

「どうした?褒められ慣れてないとも思えんが」


「褒められたら良いってものじゃないのよ!」

「んん?お気に召さなかったか?でも、お世辞抜きで良い女と思ったのは本当だからな」

「もう!いいから!恥ずかしくなる!」

 竜ヶ原さんは、両手で顔を覆ってしまった。

 変な風に焼けなきゃいいけどね。


 しかし、釣れない。何が悪いのか分からないが、全く釣れない。

 俺は、人工精霊───水スライムを創造した。

「あ、また変な事しようとしてる」

「うるさいやい」

 俺は水スライムを湖に放つと、「魚を獲ってこ〜い」と送り出した。


 竜ヶ原さんも立ち上がって来た。

 そんな格好で、隣に立たないで下さい。あなた、グラドルみたいな体型なんですから。心臓に悪いから。

 しばらくすると、水スライムが水中から浮かび上がって来た。

 バレーボールぐらいの大きさのその身体の中には、小魚が2匹閉じ込められている。

「本当に獲って来たよ」


「何それ、そんな事出来るの?」

 水スライムは湖から出ると、ペッ!と小魚を2匹吐き出した。

 地面に落ちた小魚は、ピチピチと跳ねている。

「これは、釣り竿いらないな……」

「そうね……」


 と、水スライムが魚を獲ったのを見ていたのか、シラヌイとカガリが走って来た。

「キュン」と鳴いて、こちらを見る。

「食べていいぞ」と言うと、躊躇いなく齧りつく。

 パタパタと振る尻尾の先に、小さな炎が浮かんでいる。

 喜ぶと、炎が勝手に出るのか?危なくない?ここは、湖のそばだから良いけど。


 2匹は小魚を食べると、またパタパタと走って行った。

 可愛すぎる。

 2匹が走り回っているだけで、拠点の雰囲気が明るくなりそうだ。

「大吉さんも、身体焼かない?」

「俺は良いけど、いいのか、おっさんと二人で?」

「いいのよ、おっさんとで」


 俺は安いマットとサングラスだけを購入すると、上半身だけ裸になって、竜ヶ原さんの隣に身を横たえた。

 彼女でもない女性と並んで身体を焼くなんて、妙にドキドキしてしまう。本当に俺はモテるタイプじゃなかったのだ。こういう機会は、四十数年で数える程しかない。それも、若い頃の記憶ばかりだ。

 このトシになって、一回りも違う美女と一緒に、肌を焼く事になるとは思わなかった。


「竜ヶ原さんは、ここと街だったら、どっちで暮らしたい?」

「え……。そうね。街も良いけど、意外とこちらも自由で良いかな」

「そうなんだよな。街じゃ、あんまり通販の品物を使えないかも知れないんだよなー」

「私は、大吉さんがいたら、どちらでも良いかなー」

「え?」

「え?」






読んでいただいて、ありがとうございます。

こんなお話でも面白いと思って下さったら、『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にしてポイントを入れてもらえたら嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
中年のラブラブが今始まる⁉ ねえ、本当に始まる? 大吉さんだからなあ。
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