表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
179/183

精霊の加護176 エビの養殖場

精霊の加護

Zu-Y


№176 エビの養殖場


 翌朝、南の港の外洋漁業の網元宅…と言うか網元邸で朝餉を頂いていたところ、網元が遠慮なくぶっ込んで来た。

「それにしてもご領主様はやはり英雄でやしたね。」

「英雄?」リヴァイアサンを倒したからか?でもあれって精霊たちの仕事だけどな。

「そうですぜ。『英雄色を好む。』って言うじゃねぇですか。昨夜は随分お楽しみだったようで。」あ、そっちか?苦笑


「これだけ愛しい妻たちがいるからな。毎晩ひとりずつって訳には行かないさ。一応、ひと晩3人までって決めてるけどな。」

「おお、流石に英雄でやすね。シレっと言うなんざ、やっぱりご領主様は大物ですぜ。これが小者なら惚けるか、聞こえないふりをするところでやしょうね。」


「網元ー、分かってるじゃないか。何を隠そうゲオルクと来たら、王宮でもまったく遠慮しないで、気の向くままにやりたい放題だからね。」とラモが言うと。

「そうだな。王宮では宿泊者に監視が付くのだが、それを知ったゲオルクは、奥方たち全員と、とことん痴態を演じたと言うではないか。まったく開いた口が塞がらん。」とリチャードが応じた。

「酷い言われようだな。でもさ、あれは報告する痴女たち…じゃなかった侍女たちと、報告を聞く殿下が赤面したら面白いかな、と思ってな。」

「わっはっはっ。お見逸れ致しやした。流石、われらがご領主様で。」そう言って網元が頭を下げた。


「それにしても、網元よ。俺たちの声が聞こえるとは、壁が薄いんじゃないか?」

「そんなことはねぇですぜ。奥方様たちのお声が大きいんで。」

「仕方ないのじゃ。主様が攻めまくるゆえ、思わず出てしまうのじゃ。」

「声を、我慢すると、お頭様は、もっと、攻めて来る。」

「ちょっと、ドーラにトーラ、明け透け過ぎるわよ。」

「そう言う、リーゼが、昨夜は、一番、乱れてた。」

「そうじゃのう。」

「そうだったかしら。でも否定はしないでおくわ。」わが妻たちが爆笑した。


 初物食いが好きで、散々いろんな男を食いまくって来たわが妻たちは、下ネタについては非常にあっけらかんとしている。ちなみに俺も、会ったその日のうちに、全員に食われたものな。笑


「でもさ、網元、やっぱ壁は薄いよ。両隣でラモとリチャードが頑張っていたのも聞こえたぜ。」

 ナディア様とペリーヌ様が、シンクロして真っ赤になって縮こまった。流石、姉妹。

「ゲオルク、よく言うよ。そっちから先に聞こえて来たんじゃないか。」

「まったくだ。あんなに延々と聞かされては、こちらも頑張らねばならん。」

 さらに赤くなって、縮こまるナディア様とペリーヌ様。

「姫たちは初々しいのう。見ておると身悶えしそうなのじゃ。」と言ってドーラが胸の前でクロスさせた両腕で自身の両肩を抱いて、くねくねし出した。笑


「ちょっと、ドーラ、姫様たちをあまり弄らないで下さいな。」すかさずジュヌが姫様たちを庇った。王都で育ったジュヌは、王家の姫様たち贔屓なのだ。

「でも姫様たちも、生娘って訳じゃないんだからさ、こう言う話にも慣れといた方がいいんじゃないかい?」

「そだよー、ベス。大人の会話じゃん。」


「いやいや、カルメン、ビーチェ、何を言う。王家出身の姫様たちであるぞ。王家の姫君や貴族の令嬢たちには慎みも必要なのだ。」

「えー、でもさ、伯爵家御令嬢のベスはそうじゃないじゃん。それから、ミュンヒェー辺境伯様とかもさ。」

「あのお方は特別なのだ。まあ、私もそう言う意味では特異な方ではあるがな。」

「わっはっはっ。いずれにせよ、すぐにお世継ぎができやすな。」最後に網元が上手くまとめた。


 午前中に、南の港のフォンターナ港の漁師集落の網元邸を発って、島の周回道路を移動すること1時間。島の西のマングローブ林に付いた。


 遠浅の海で下が砂地の南国には、ヒルギかの植物がマングローブ林を形成する。ヒルギ科の植物は、根が砂地を掴むように生えるので、ネト砂地が作る空間に、エビや小魚が棲み付くのだ。

 マングローブ林から落ちた枝葉は、南国の暖かい海水温で速やかに分解されて養分となり、プランクトンを育む。これがエビや小魚の格好の餌となるのである。

 つまりマングローブ林は、そこに棲み付くエビや小魚に、外敵から身を守るための快適な住居と、豊富な餌を供給しているのだ。


 俺は、マングローブ林の海に面する外縁をそのまま残し、マングローブ林の内部に格子状の水路を作るように指示していた。

 樹々から落ちた枝葉が波の満ち引きでこの水路の窪みに溜まると、そこで分解され、その養分でプランクトンが発生する。するとエビや小魚は餌を食いに水路に出て来るが、海に面する外縁はマングローブ林で閉ざされているため、大きな魚は入って来ない。

 エビや小魚たちは水路で飯を食い、マングローブ林で休むのである。筒状の網をカヌーで引いて、この水路を通れば、筒状の網の中はエビや小魚で一杯になると言う寸法だ。


 生簀(いけす)を使って高密度で育てる方が効率的かもしれないが、この方法だと養殖物ではなく天然物と言うことになる。活きがまるで違うし、天然物と言うだけで付加価値が付く。


「これはラモ様。いらっしゃいやし。」

「ゲオルク、西の網元だよ。エビ養殖場の世話役さ。

 網元、こちらがご領主様のゲオルク・スピリタス卿だよ。」こっちのボスも網元か。南のボスも網元だし、なんかややこしい。苦笑


「これはこれはご領主様で。お初にお目に掛かりやす。」口調まで一緒かよ。漁師は皆こんな口調なのかな?

「網元、よろしくな。で、どうかな?エビ漁の状況は?」

「順調でやす。ただ、水路造りにはいささか骨が折れやして。まだマングローブ林全体の1/5程度しか、水路を引けていやせん。それとエビと一緒に獲れる小魚の処理が面倒なんで。」


「小魚か…うーん、そうだなあ…。何かいい利用法はないかな。」俺はわが妻たちにも聞いてみた。

「旦那様、干して粉末にして出汁にすれば、売れると思いますわ。」

「お、それいいね。」流石、美食の中部出身のジュヌだけのことはある。

「お前さん、甘辛く煮て酒の肴にするのもいいんじゃないかい?」

「なるほど、それもありだな。」流石、居酒屋大好きのカルメン。

「そいつあいい。煮干しや甘露煮だと日持ちもしそうだ。試してみやしょう。」

「じゃあさ、特産品の開発に掛かった費用は役場に請求してよ。」

「え?よろしいんでごぜぇやすか?」

「構わないよ。その代わりいい品を開発してくれよな。」


「ところでこれから猟師どもが、カヌーでエビ漁に出やすが、高台で食事をしながら御覧になりやせんか?」

「そりゃいいね。」

 で、俺たちはマングローブ林が切れた高台にある西の網元宅…と言うか網元邸に来ている。南の網元のとこと同じように、集落の集会場も兼ねてるのな。


「エビしかねぇんでやすがね、エビならたんとあるんで。」

 でーんとおかれた大皿には、茹でエビが山盛りに盛られていた。

「おお、これは凄いな。では頂くよ。」皮を剝いてぱくりと行こうとしたら網元に止められた。

「ご領主様、こうして背ワタを取ってくだせぇ。この手間をサボると、じゃりじゃりして塩梅がよくねぇんで。」網元は親指の爪ですーっと背ワタを取ってぱくりと行った。

 俺もそのまねをして背ワタを取ってぱくりと行く。

「うお!これは旨い。」

「でやしょう?お上品に味付けするより、塩茹でが一番旨えんでさ。それがほんまもんのエビの味なんで。」

 わが妻たちも、ナディア様もペリーヌ様も、リチャードもラモも大絶賛だった。


 その後、塩焼きやバター焼きも出て来た。エビ尽くしである。

「くー、旨え、堪らん。」ビールや白ワインがよく合う。

 俺、リーゼ、カルメン、ベス、リチャードはビール。

 ジュヌ、ビーチェ、ラモ、ナディア様、ペリーヌ様、網元は白ワイン。

 ドーラとトーラは蒸留酒のグラッパだった。

 精霊たちはもちろんアードベクである。エビは食ってないけどな。


「網元、出航しやす。」若衆が港のカヌーを指さしながら告げると、水路に向かってカヌーが漕ぎ出して行った。

「あのカヌーは円筒状の網を引いてやす。水路に出ているエビたちを網で掬うんでさ。」

 しばらくカヌーで網を引いた漁師たちは、網を引き揚げてカヌーに水揚げした後、帰路の間に結構な量をリリースした。

「あれは小せえのをリリースしてるんでさ。小せえのは碌な値が付きやせんが、リリースすりゃあ、じきに大きく育ちやすんで。それと小魚は大きめのエビが食いやすんで。」

「なるほどな。」


 エビ尽くしの昼餉を終え、水揚げされたエビを見に、船着き場に行った。大ぶりのエビが冷凍魔法で凍らせられている。

 チルが、ずいっと踏み出して来た。言いたいことは分かる。笑

「網元、手伝わせてもらっていいかな?」

「何をお手伝い頂けるんで?」

「冷凍だよ。」

「じゃあ、お願えしやす。」

「チル。」

『はーい。』喜々として精霊魔法を放ったチルは、エビと小魚を一気に冷凍させた。

「こいつは凄え。」網元をはじめ、漁師たちが絶句した。笑


 ところで、小魚と言うには結構でかくなったのもいる。

「網元、小魚はリリースするんじゃなかったのか?」

「いえ、ご領主様。ここまで育つと厄介なんでさ。小せぇエビを食っちまいやすからリリースはできねぇんで。この辺の大きさだと煮干しや甘露煮に使えそうでやすが、こっちのサイズまで育つと煮干しや甘露煮にするには、ちょいとでか過ぎるんで始末に負えねぇでさ。ブツ切りにして海に帰すぐらいでやすかね。」

「なるほどねぇ。」


「そうだ、網元。水路造りに難航してるって言ってたよな。」

「へい。そうなんで。」

「精霊たちに水路を造ってもらおう。」


 それから網元と一緒にカヌーでマングローブ林に出て、網元の希望に沿って、手付かずのままだったマングローブ林の4/5に格子状の水路を造った。クレがモゴモゴやるだけだったけどな。

 それから、マングローブ林をツリが活性化させ、作業中に満潮を過ぎて引き出した潮をワラが引き戻し、水路を造るために倒した樹々は、フィアが燃やすか、ウィンがスパスパとぶった切るか、メタが雷を落とすか、ダクが枯らすかして処分した。

 最後にソルがマングローブ林に棲むエビに回復の精霊魔法を掛けた。


 チルは水揚げのときにエビの冷凍で活躍したので、今回はすべての精霊たちに出番があった。このため精霊たちは頗るご機嫌であった。


 西の養殖集落でも大層感謝された俺たちは、北の白浜経由でおよそ2時間掛けて島を半周し、東の港の領主公邸に戻った。


 リチャード夫妻とラモ夫妻に、先に風呂に入ってもらった後、皆で夕餉。公邸の料理人たちの料理に舌鼓を打った。


 夕餉の後は、俺たちの入浴タイムである。

 まずは、今日頑張った精霊たちにご褒美である。隅々まで洗ってやってキャッキャ言わせつつ、7連虹色生ぱふぱふと、2連白黒もみもみを堪能した。それからわが妻たちとの7連生ぱふぱふ。

 マイドラゴンが『出番ー。』と、俺の頭の中に悲痛な叫び声を届けて来たが、むふふタイムまで我慢しろってのと、思いっ切りスルーしてたら、ぶんむくれて拗ねやがった。笑


 発情期のドーラと、輪番のジュヌとカルメンを連れてベッドルームに行くと、眼が血走ったドーラに押し倒されて、そのまま馬乗りになられて、マイドラゴンがドーラの蜜壺に捕食されてしまった。

 風呂場以降、ぶんむくれて拗ねていたマイドラゴンは、元気にホワイトブレスを吐き出したとさ。いや、搾り取られたと言うべきか。


 その後、ジュヌとカルメンにも、マイドラゴンは交互に搾り取られたのだった。お口でね。笑


 毎週土曜22時に投稿します。


 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。

「射手の統領」https://ncode.syosetu.com/n2002hk/

「母娘丼W」https://ncode.syosetu.com/n9708if/


 カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ