精霊の加護172 満天の星空でのグランピングとペガサスたち
精霊の加護
Zu-Y
№172 満天の星空でのグランピングとペガサスたち
翌日も北の白浜で海水浴を堪能し、ビーチバレーを楽しんだ。ビーチバレーと言っても、トスとレシーブで繋ぐだけの簡単なやつだけどな。
驚いたことに、このビーチバレーに精霊たちが加わったのだ。ボールを落とさないようにパスで繋ぐのが、精霊たちのツボに入ったらしい。
しかも、精霊たちはふわふわ浮いているから、飛んでるボールを追い掛けるのが実に上手い。
改めてここで思い知ったのだが、パスの回数を競うこの形式は、誰かがしくじることで中断するから皆が休めるのだ。当たり前だけど。
ところがだ。精霊たちが加わっていると、誰かがしくじって変な方向に飛ばしてしまっても、浮かんでいる精霊たちが追い付いて繋いでしまう。
つまり、休めないのである。これは思いの外きつかった。
早々に姫様ふたりがへばってしまい中断。まあこれは仕方ないわな。笑
それから、術士のリーゼ、ジュヌ、カルメンが脱落し、その後は俺が脱落。まあ射手も精霊魔術師も直接格闘することはほとんどないからな。
しばらくして軽装備の刀剣士ビーチェが脱落し、その後、タンクのベスが脱落した。ベスは普段重鎧を着てる分、持久力が付いてるのだ。
意外なことに普段はチャラいからすぐ音を上げると思っていたラモが、近衛隊のリチャードとずっと競り合っていた。ラモはああ見えて、やはり海の男なのだ。
結局、最後まで残ったのは、ドーラとトーラのふたり。流石、体力のある龍人と獣人である。
トーラは、途中からスイッチが入ってブーストモードに変身。体が2倍の大きさになったのを見たリチャード夫妻とラモ夫妻は大層驚いていた。
「ご存知かとは思いますが、トーラの正体は聖獣ホワイトタイガーなんですよ。獣人形態には普段のノーマルモードと、体が倍になるブーストモードがあります。これらの他にホワイトタイガーの形態にもなります。」
一応解説しておいた。
ちなみにワルキューレスタイルの水着の生地は伸縮性で、さらにドーラの水着は、ブーストモードになっても破れないように、形状変化の付加をしてある。
精霊たちとドーラとトーラになってからは、一向にボールを落とす気配がない。
「おーい、そろそろ終わろうぜ。」
『『『『『『『『『はーい。』』』』』』』』』精霊たちがすぐ反応したが、ドーラとトーラは取り残されていた。まだ続けたかったっぽい。笑
「しかしビーチバレーがあんなにしんどいとはね。」
「精霊たちのお陰でボールは繋がり続けたもんな。」
「明日の僕は間違いなく筋肉痛だよ。」
「俺もだな。」
ラモもリチャードもなぜ楽しそうなんだ?このふたりは筋肉痛になるのを楽しみにしているのか?
「それよりゲオルク、もっとトレーニングしなきゃダメだよ。」
「そうだな。ベスやビーチェよりも早く脱落したろ。」
「俺はLレンジアタッカーだからな。」
「それでも鍛えとくに越したことはないよ。」確かに。
「それにしても、ラモはなかなかやるじゃないか。」
「これでも海の男だからね。そう言うリチャードだって随分粘ったじゃないか。」なんか話題変えたくなって来た。
「そう言えばさ、ふたりとも昨夜はぱふぱふ試した?」
「試したぞ。」「試したともさ。」
「どうだった?」
「そりゃ最高だったに決まってるじゃないか。」
「まったくだよ。また今夜もやってもらうんだ。」
こいつらチョロい。すぐに話題替えに乗って来やがった。笑
「まあ、あれだ。こっちが窒息しそうになる程の至福のぱふぱふをできる女性はひと握りだからな。ナディア様もペリーヌ様もその点は素質十分だ。」
「「だなー。」」
「そうそう、ぱふぱふな、お風呂でもいいぜ。お風呂なら絶対に生ぱふぱふだしな。」
「「だなー。」」ふたりとも、ニヤニヤしてやがる。笑
それから領主公邸に帰ってお風呂ターイム。この日はリチャード夫妻もラモ夫妻もお風呂の時間が、昨日の1.5倍はあったとさ。笑
俺もお風呂で7+6=13連生ぱふぱふと、3連もみもみを堪能し、夕餉で、両夫妻と大いに語らい、そして夜は輪番でベスとビーチェ、そしてドーラを飛ばしてトーラを頂いた。お口だけど。
ちなみにドーラを飛ばしたのは、
「もうすぐ満月じゃから、わらわは発情期に入るのじゃ。発情期の3日間を連続でかわいがってたも。」と言うことなのだ。
さて、今宵のベス、ビーチェ、トーラの3人には、今日のビーチバレーで敵わなかったから、せめてベッドではひぃひぃ言わせてやる。そして、明日、リチャードとラモに自慢してやるのだ!
でも流石に3人同時に相手したのはまずかった。敵いっこなかったのである。ちくしょう。次は各個撃破してやる。
翌朝起きたら、案の定、体中が筋肉痛であった。
ちなみに、朝餉の席で顔を合わせた皆も筋肉痛であった。ドーラとトーラを除いてだけど。
リチャードとラモも筋肉痛だったので、少しだけホッとしてしまった。俺、小っさいなぁ。泣
さて、今日は山頂のグランピング場に行って泊まる。
領主公邸のある、島の東のラスプ港から、山頂に向かって登山道が続いている。実は、この登山道と、島の周回道路は、最初にラスプ・デルスゥデ島に来たときに、精霊たちに切り開いてもらったものなのだ。
俺たちのアクアビット号を先頭に、リチャード夫妻の馬車とその護衛たち、ラモ夫妻の馬車とその護衛たちが続く。
この登山道は山頂までまっすぐ上るから、傾斜も結構きついが、曳馬たちが頑張っている。俺たちの曳馬たちは、アクアビット号とともに購入した。
月毛のカスタード、栗毛のモンブラン、佐目毛のサクラモチ、薄墨毛のゴマアンコである。ちょっと珍しい毛色だったので、毛色から連想したスイーツから、俺が名付けたのだ。
ただ、このネーミングは、なぜか、わが妻たちからの評判が頗る悪い。
曳馬たちが頑張ってグイグイと引いてくれたお陰で、領主公邸を出て小1時間、昼前には山頂のグランピング場に着いた。
大して高くないこの山の山頂は、元々は南国樹林でびっしり覆われていた。初めてこの島に来て、山頂付近を視察したときがたまたま夜だったのだが、その満天の星空に圧倒され、ひと晩中、星を見ながらキャンプと言うのを思い付いた。
そこで山頂から8合目あたりまでの南国樹林を一掃し、一面に牧草を生やした。山頂にはメインの宿泊施設を建て、そこを中心にコテージを点在させている。コテージでは、グランピングを楽しめると言う趣向だ。
今回コテージは3つ借りている。俺たち、リチャード夫妻、ラモ夫妻でひとつずつだ。両夫妻には、それぞれの護衛たちも付いている。
島に唯一の山頂からの景色は、当然だが四方が海である。そしていい潮風が通っている。暑いが爽やかである。
東には南部群島最大の島のリシッチャ島がでんと存在感を主張し、その双子山が高くそびえている。南は外洋で波が荒く、遠くに潮を吹いているクジラが見える。西には大きい島はなく、サンゴ礁が続いている。北は南部湾で波が穏やかだ。北の眼下には昨日海水浴を楽しんだ白浜が見える。
リチャード夫妻とラモ夫妻も、俺たちのコテージに合流し、昼から一緒にBBQで楽しむのだ。
ラモが領主公邸の料理スタッフをふたり連れて来ていたので、BBQの準備と調理は任せっ切りだ。俺たちは食うの専門で、まさに至れり尽くせりだ。
昼間っから、エールを満たしたジョッキを片手に、肉汁の滴る肉の串焼きをガブリと行く。
「昨日のビーチもよかったが、ここでのBBQもいいな。島の山頂だけあって見晴らしが実にいい。今はまだ、ビーチほどは混んでないが、じきに評判になったら、混むだろうな。」
「リチャード、ここの売りは満天の星空だ。この見晴らしは序の口だぜ。」
「ゲオルクの先見の明だよ。星空がきれいだってところから、星空を見るために山頂一帯を大改造するって言うんだからね。最初に計画を聞いたときは、この僕ですら呆れたものさ。」
「でもイメージ通りだろ。」
「まあね。だけど、南国樹林が見る見るうちに牧草地に変わって行く様には、度肝を抜かれたよ。」
「その満天の星空、楽しみですわ。ね、ペリーヌ。」
「はい。姉上様。」
「それにしてもこうして見比べると、南部湾の穏やかな海と、外洋の荒れた海は全然違うのな。」
「そうですわね。あら、あれは何かしら?」ナディア様が南の海の一画を指さした。
「ああ、ナディア様。あれはクジラですよ。クジラが潮を吹いているんです。クジラにしてみれば、息継ぎですけどね。」と、海のことならなんでもござれとばかりに、ラモが説明した。
「まあ。クジラも見られますのね。」
「そうだよ。ペリーヌ。南の港からは外洋で回遊魚を獲る漁船の他に、クジラやイルカをウォッチングするための船も出ているんだ。」
「おお、それはいい。近いうちにその船に乗って外洋に出てみようじゃないか。」
「リチャード様、わたくしは怖いですわ。」
「大丈夫だよ、ナディア。私が付いてる。」こらこら、ふたりの世界に入るなっちゅーの。笑
「リチャード、お望みなら、マイハニーで外洋に出て上げるよ。」
「そうだな、クロチュデルスゥデ号なら大きいし、ナディアも安心だろう。」
BBQを楽しみながら、ゆったりと寛いでいるうちに日が暮れて来た。
「そろそろ一番星も出て来たし、BBQも終わるか。」と、リチャードが切り出すと、
「そうだね。たっぷり呑んで食べたよ。僕はもうお腹がぱんぱんさ。」とラモが応じた。
これを合図に、リチャード夫妻とラモ夫妻はそれぞれのコテージへと引き上げて行った。
このコテージには、ベッドルームの他に満天の星空を楽しみつつ寝られるように、折り畳みの簡易ベッドがある。
コテージに簡易ベッドを8つ並べ、わが妻たちと横になって星空を眺めた。精霊たちはふわふわと浮いている。
日が落ちて辺りがどんどん暗くなるに従って、満天の星は輝きを増して来ており、すぐ手が届きそうなところまで、星が降りて来たような錯覚を覚える。
あいにく、満月が近いので、月明かりにより星の明るさは減じているが、月の出ていない夜ならば、さらに星明りは強いのだろう。
「ほんとにきれいな星空ですわ。」
「だよねー。」
「あら?今何か夜空を過ったわよね。」
「うむ。何であろうかの?」
『僕の友達たちだよ。』ナイトの念話が届いた。
リシッチャ島の双子山から飛来したペガサスが数頭、放牧していた曳馬たちの中に紛れ込んで、一緒に牧草を食みだした。
「ナイト、お仲間たちにゆっくりしてってくれと伝えてくれ。」
『了解。』
それから満天の星空に包まれつつ、俺は眠りに落ちたのだった。
毎週土曜22時に投稿します。
以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://ncode.syosetu.com/n2002hk/
「母娘丼W」https://ncode.syosetu.com/n9708if/
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