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精霊の加護165 Aランクパーティ

精霊の加護

Zu-Y


№165 Aランクパーティ


 翌朝、完徹明けでわが妻たちと合流。

 俺はルードビッヒ教授によって東府魔法学院の研究室に軟禁され、喜々として研究に協力する精霊たちにひたすら魔力を供給し続けた。そのせいで完徹である。

 わが妻たちは、教授に捕まった俺をとっとと見捨てて、東部公爵邸にゆっくり泊まった。俺としては悲しかったが、これが正解である。


 ところでわが妻たちは、昨日、俺を見捨てた後に東府ギルドに寄って、リーゼとジュヌとカルメンがAランクに、ドーラとトーラがAランク相当に昇格したそうだ。

 これでわがスピリタスのチームランクがAランクに上がった。


 東府から王都への数日間の馬車旅は、非常に順調で魔物との遭遇ほとんどはなかった。

 初日こそ、完徹明けのために、アクアビット号内で爆睡した俺であったが、それ以降は、屋上の見張台に上がり、ガキンチョ5人組と一緒にしっかりと見張りに励んだ。

 まぁ、ぶっちゃけて言うと、精霊たちが索敵してくれてるんで、見張はしなくても大丈夫なんだけれどもね。でも、普通の冒険では見張は非常に大事だから、ガキンチョ5人組のために、しっかり見張をさせていた。


 この旅が終わって、王都で、教国と帝国の外交使節団同士による、教帝同盟の調印が終われば、俺たちスピリタスと、ガキンチョ5人組の臨時合同パーティは解散である。


 その後、俺たちは、ラスプ・デルスゥデ島に行って、腰を据えて開発を進めることになる。

 もちろんバカンスを兼ねるけれどもな。

 南部湾に面した珊瑚の砂の白浜ビーチで、特注しておいた水着をわが妻たちに着させて、ゆるり、のんびりと過ごすのだ。ふふふ。今からむっちゃ楽しみである。


 王都への道中で、ブラッディベア1頭と遭遇したが、なんとガキンチョ5人組だけで倒してしまった。こやつら、成長著しいではないか。もちろん支援魔法は、カルメンとソルで二重掛けしたけれども。


 最初は先頭を行っていた王都騎士団員たちがブラッディベアと遭遇して交戦となった。この王都騎士団員たちは、マリー護衛のために帰国する本隊と別れて俺たちに同行していた5名である。

 ブラッディベアの攻撃をしっかり抑え、タンクとしての働きはこなしていたが…、ブラッディベアの攻撃で、ひとり、またひとりと負傷して行った。当然、間を置かずにアイチャがヒールとリペアを掛けて回復させたけどな。


 ガキンチョ5人組が俺を見上げた。

「ゲオルク様…。」マリーが言いたいことは分かる。

「やってみな。でもヤバいと思ったら、すぐ引くんだぞ。」

「はいっ。

 ヘルムートとディエゴは、騎士団に代わってブラッディベアを抑えて。リーナはヘルムートとディエゴの後ろで待機。チャンスがあったら反撃して。わたくしは後方から魔法を撃ちます。アイチャはリペアとヒールを。」

「「おう。」」「「はい。」」


 アクアビット号から出撃する5人に、カルメンとソルが各種バフを重ね掛けし、さらにカルメンとダクが各種デバフをブラッディベアに掛けた。

 見る見る動きが鈍るブラッディベア。


 マリーがファイアボールを連発で放って、ブラッディベアを牽制した。

 これでブラッディベアの騎士団員たちへの攻撃が一旦やむと、その隙にヘルムートとディエゴが前に押し出して、ブラッディベアを抑え込んだ。


 再び放たれるマリーのファイアボールが、ブラッディベアの顔面で次々と小爆発を起こし、目潰しの効果を発揮している。

 マリーは、魔力量はかなり多いんだよな。精霊とも話せるけど、いかんせん、魔力の回復量が少なくて精霊魔術師にはなれないのだ。

 怯んだブラッディベアの隙を突いて、エカチェリーナが決定的な斬撃を加え、横転したブラッディベアにヘルムートとディエゴが槍を突き入れてトドメを刺した。

 おお、なかなかの連携じゃん。

 押されていた王都騎士団5名は、ガキンチョ5人組の働きに、眼を剥いている。まぁ驚くわな。もっともこの働きは、バフとデバフのお陰なんだけどね。


 俺はアクアビット号から降りて、ガキンチョ5人組の所に駆け付けた。

「いい連携だったぞ。」

「皆がイメージ通り動いてくれました。」マリーが誇らしげだ。

「思ったより手際よく片付けたが、その勝因は?」

 ヘルムートとディエゴはちょっとドヤ顔をしている。自分たちがタンクとして、ブラッディベアを足止めし、さらにトドメを刺したことが、手際よく片付けた勝因だと思っているに違いない。この旅でふたりとも成長はしたが、こう言うところが、まだ甘ちゃんなんだよな。


「バフとデバフです。私は物凄く体が動きました。」きっぱり言い切るエカチェリーナに「「え?」」と反応するヘルムートとディエゴ。

「私もそう思います。ブラッディベアは明らかに動きが落ちました。」エカチェリーナにすかさず賛同するアイチャ。そしてマリーも、

「そのお陰で、撹乱のファイアボールもよく当たりました。」

 やはりバフとデバフを評価する。

 ヘルムートとディエゴのふたりは明らかに気落ちした。婚約者のエカチェリーナとアイチャからの賞賛がなかったからだろう。


「うん、そうだな。目立たないが、バフとデバフは戦況を一変するんだ。

 それとヘルムートとディエゴがしっかりブラッディベアを止めたのも効果的だったぞ。」

 わざと、ふたりを持ち上げてみた。

「いえ、それもバフのお陰です。」

「そうです。バフがなければ押し込まれていたでしょう。王都騎士団ですら押し込まれましたから。」

 おお、ふたりとも気付いたようだな。女子3人に言われてからだけれども。笑


「その通りだ。皆、よく勝因を見極めたな。決して自分たちの力と奢るんじゃないぞ。奢ったら命を縮めることになる。いいか?」

「「「「「はいっ。」」」」」


 それから俺は、ガキンチョ5人組にブラッディベアを解体して見せた。特に男ふたりには。

「いいか?こう言う汚れ仕事は、男が率先してやるんだ。女の子たちのポイントが上がるぞ。」

「「なるほどー。」」ヘルムートとディエゴが手伝い出した。こいつら、案外ちょろいな。笑


 一行は王都に向けて出発した。俺はマリーを手招きして、呼び寄せた。

「マリー、結構魔力を使ったよな。」

「そうですね。1割弱ぐらいでしょうか。」

「お前は回復量が少なかったが、これが回復するのにどれくらい掛かる?」

「10日くらい掛かると思います。」

「ならば、魔力回復薬は必須だな。連戦になると、魔力切れになり兼ねん。」

「はい。」

「今は俺が補給してやろう。」

「え?」

 マリーを抱き寄せて魔力補給=べろちゅーをしたのだが…、マリーは真っ赤になってしまい、エカチェリーナとアイチャは目を丸くし、ヘルムートとディエゴが同時にそれぞれの婚約者を見た。男の子ふたりの反応が何とも笑えるではないか。


 東府からの数日の旅を終え王都に着いた。

 俺は、王宮に伺候し、まずは直属の上司である王太子殿下の執務室へ、旅の報告に行った。

 当然のことながら、精霊たちとわが妻たちも同伴だ。それと正妻候補のマリーが、ガキンチョ5人組の仲間たちを率いて、一緒に来ていた。

 殿下の執務室には、いつも通り、4人の公爵様方と宰相様がおられた。


「殿下、帝国謀反貴族の子息子女を、無事、教国へ届けて、出家と聖山への入山を見届けて来ました。」

「大儀。帝国からの外交使節団も数日前に到着したゆえ、その旨伝えよう。」

「教国からの外交使節団も伴って来ております。」

「うむ。明日は王国の仲介での教国と帝国の同盟締結を、調印式で派手に演出しよう。これで念願の三国同盟が成立だ。

 ところでマリー、そなた、この数ヶ月で随分成長したな。逞しくなったし、なかなかの面構えになったではないか。」


「兄上様、逞しくなったとか、面構えがどうとか、それって褒めてますの?」マリーはちょいおこだ。笑

「もちろんだとも。冒険者の真似事はできたのか?」

「真似事ではありません。ゲオルク様たちのサポートで、それなりに経験を積んで来ました。」

「ほう、ゴブリンくらいは倒せるようになったか?」

「東府から王都への帰り道では、ブラッディベアを倒しました。」

「なんだと?

 ゲオルク、そなたが付いていながら、そんなに危険な魔物とマリーを戦わせたのか?」


「いえ、マリーひとりではなく、ガキンチョ5人組で倒しました。」

「「「「「ガキンチョ5人組?」」」」」あ、やべ。ガキンチョ5人組が反応した。

「いや~、その、まぁ、なんだ…。」

「ゲオルク様は、私たちのことをそのように思ってらしたのですのね?」俺の失言に対するマリーのツッコミに、

「酷いですわ。」「悲しくなりましたわ。」エカチェリーナとアイチャも畳み掛けて来た。

 ヘルムートとディエゴはなぜかニヤニヤしている。ちくしょう、俺が3人娘にやり込められたのが、そんなに嬉しいか!

「すまん。」


「わっはっは。ゲオルク、心の中で思っていても、本人たちの前でそれを言うか?男ふたりはどうでもいいが、3人の乙女心を傷付けたのはいかんぞ。とくと反省するがよい。」殿下がトドメを刺して来やがった。ちくしょうめ。

「兄上様も、十分乙女心を踏みにじって下さいましたわよ。逞しいとか、面構えとか。それに、今、思いっ切り、笑い飛ばされましたし。」

「「そうですよ。」」エカチェリーナとアイチャが、マリーに同調し、殿下に矛先が向かった。ざ・ま・あ♪


 バツが悪くなった殿下が、すかさず話題を変えた。

「そうそう、ヘルムート。そなた、東部公に報告することがあったのではないか?」

「はい殿下。ゲオルクどのから殿下へのご報告が終わりましたら申し上げるつもりでおりました。

 父上、教皇猊下から、巫女見習アイチャ嬢との婚約を認めて頂きました。」

「ほう。話はすんなりまとまったのか?」

「いいえ。教皇猊下は最初、『アイチャを王太子殿下に嫁がせたいから、その仲介をして欲しい。』と仰せになりました。」

「ほう、それで?」


「殿下は、王教同盟と王帝同盟のバランスを重視するので、教国だけから嫁は取りませんと申し上げました。それと、東部は教国から見れば王国の玄関なので、東部と結ぶことは、教国にとって都合がいいと、アイチャと私の婚約の利を説きました。」

「それでご納得されたのか?」

「いいえ。『では、東部と教国が婚姻したとして、王国と教国が敵対したらどちらに付くか?』と聞かれました。」

「際どいことを。」殿下がボソッと呟いた。


「で、ヘルムート。そなたは何と答えたぞ?」

「そのようなことは起きないと申しました。まずゲオルクどのが王国と教国の敵対を望まないので、教国から敵対することはないですし、また、殿下が和平をお望みですから、同盟の盟主にはなっても、教国や帝国の主君にはならないはず。よって王国と教国の対立は起きないと申しました。そうしたら教皇猊下が、アイチャとの婚約をお許し下さいました。」

「なるほどな。」


「多分ですけど、最後はあっさり許可して下さいましたので、すでに了承するつもりでおられて、その上で、僕を試したんじゃないかと思います。」

と言って、ヘルムートは俺の方をチラッと見た。

 ヘルムートめ、俺から教皇様への根回しに思い至ったか。なかなか鋭いではないか。

「ヘルムート、よくやった。満点だ。

 東部公、遠慮はいらぬ。褒めてやるがいい。」

「はっ。殿下。

 ヘルムート、見直したぞ。」

「ありがとうございます。」

「ゲオルク…、いあや、スピリタス卿、世話になった。」と言って頭を下げる東部公爵様。

「いえいえ、東部公爵様、勿体のうございます。」


「皆の者、報告、大儀。下がってよい。

 ゲオルクは残れよ。」

 わが妻たちと、ガキンチョ5人組は退室して行った。精霊たちは俺のまわりでふわふわしている。


 半年間、ふらふらしてしまいましたが、週1ペースで連載を再開します。毎週火曜22時に投稿してましたが、次週から毎週土曜22時に変更します。


 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。

「射手の統領」https://ncode.syosetu.com/n2002hk/

「母娘丼W」https://ncode.syosetu.com/n9708if/


 カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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