表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/183

精霊の加護127 アクアビット号

精霊の加護

Zu-Y


№127 アクアビット号


 翌日から、俺は王宮内での待機を命じられた。

 王太子殿下が、4人の公爵様方と宰相様とともに、帝国大使と教国大使と、帝国の謀反貴族たちの子息子女の受け入れについて、仲介交渉をしているのだ。

 交渉が停滞したら俺を呼ぶので、いつでも来られるように王宮内で待機しろとのご命令だ。

 なお、王宮内にいれば、どこにいてもいいらしい。


 働き者のわが妻たちは、当然の如く俺を置いてクエストに行ってしまった。俺を除くスピリタスメンバーは、ワルキューレとのサブパーティ名を持っている。

 王宮で待機しなければならない俺に付き合っているより、ワルキューレとして、活躍する方がいいに決まってる。泣


 わが妻たちを送り出して、王宮内をぶらついた。

 宮廷魔術師の訓練場で、王国7精霊たちの属性攻撃魔法を、加減しながらぶっ放し、騎士団と近衛隊の状態異常対策訓練では、ダクの状態異常魔法を掛けてやった。もちろん訓練でのケガ人には、ソルの回復魔法で瞬時に治してやった。

 これが騎士団と近衛隊に重宝され、翌日から正式に協力要請が舞い込んだ。まあ、暇だからいいけど。


 王宮で待機すること3日目。殿下からお召しが掛かったので、殿下の執務室に行くと、いつものメンバーの殿下、4人の公爵様方、宰相様に加え、教国大使、帝国大使もいた。

「殿下、お召しにより、ゲオルク・スピリタス、参上致しました。」

「大儀。話はまとまったぞ。

 宰相、説明せよ。」殿下の説明が、超短い。笑


「はっ。承知しました。

 ではスピリタス卿、御説明申し上げる。」

 おや?いつものゲオルク呼びじゃないぞ。あ、そうか、大使たちがいるから外向けなんだ。宰相様はきっちりした性格だもんな。笑

 宰相様が続けた。


「帝国で準備が整い次第、新皇帝どのの戴冠式が帝都モスコペテブルで行われる。戴冠式には、帝国から王国に招待状が届くが、スピリタス候を、王太子殿下の名代として帝都へ遣わす。

 戴冠式の後、特赦が発表され、謀反貴族の子息子女9名を、教国での出家を条件に、助命することを発表する。スピリタス候はパーティを率いて、子息子女9名を帝都から教都イスタナンカラまで護衛してもらう。

 帝都から国境の町バレンシーまでは帝都騎士団、バレンシーから西部の間は西府騎士団、中部では王都騎士団、東部から国境の町ミュンヒェーまでは東府騎士団、ミュンヒェーから教都までは教都騎士団が、それぞれスピリタス候のパーティに同行する。

 スピリタス卿は、教都イスタナンカラでの、謀反貴族子息子女の出家の儀を見届けた後、王都へ帰還。

 スピリタス候の報告を受けて、王都では、殿下、教皇名代教国大使どの、皇帝名代帝国大使どのの3名で、王国を盟主とした三国同盟に調印する。

 以上だ。質問は?」


「てことは、俺は帝国からの招待状が来るまで、王都にいるんですか?新帝のイゴールどのは、戴冠式は地固めをしてからだから、半年くらい先になると言ってましたよ。」

 この質問には殿下が答えてくれた。

「いや、領地に戻って内政に勤しむがいい。その代わり、すぐに連絡が付くようにしておけよ。ふらふらとあちこちを出歩くんじゃないぞ。居場所を移動するときには、新たな居場所を必ず報告せよ。」

「承知しました。ちょっと北府に用事があるので、それからでも構いませんか?」

「それは構わんぞ。」

「では早速、明日、発ちます。」

「待て、ゲオルク。余も3日後に北府に向けて王都を発つ。折角だから北府まで護衛せよ。」北部公爵様からお声が掛かった。

「承知しました。」


 この日で王宮での待機は終わったので、北部公爵様のお供をして王都を発つ3日後までは、わが妻たちと一緒に、俺もクエストに参加しようかと思っていたのだが…。

 その夜、俺とわが妻たちが、互いに今日のことを報告し合うと、話は意外な方向に進んだ。


「ねぇ、あなた。北部公爵様にお供するのよねぇ。一応、侯爵様になったんだし、騎馬とかじゃなくていいのかしら?」リーゼがそんなことを言って来た。確かにそうかもしれないな。

「うむ。北部公爵様は私の主筋ゆえ、私はスノウに騎乗して本来の騎士としてお供するつもりだ。残るはナイトのみゆえ、皆が乗るには馬が足りぬな。」

「え、あたしたちも馬に乗るのかい?」

「うむ。側室とは申せ、一応侯爵夫人ゆえなぁ。北部公爵様の護衛に就くなら、流石に徒歩と言う訳には参るまい。」

「わらわは馬はいらぬじゃ。いざとなったらドラゴンに変身すればよいのじゃからのう。」

「トーラも、馬は、いい。ホワイトタイガーに、変身する。」

「でしたら馬車ではいかがですの?」

「うむ。馬車なら問題はあるまい。」

「僕も馬車の方がいいなぁ。ねえ、ダーリン。馬車買おうよ。」

「そうだな、買うか。」


 そう言う訳で、翌日、馬車を買いに行くことになった。そして、王宮御用達の馬車屋にやって来た。

「いらっしゃいまし。」

「王宮からの紹介で来た。10人乗り程度の馬車が欲しい。」精霊たちは浮いているから数に入れなくてもいいだろう。

「送迎用ですか?行商用ですか?冒険用ですか?」

「え?馬車にそんな用途があるのか?」

「そりゃそうですよ。送迎用なら座席だけでいいですし、行商用なら荷台が多く必要です。冒険用なら野営に備えて簡易ベッドが必須ですね。」

「だったら冒険用だな。ベッド付きのにしてくれよ。」


「そうですねぇ。これなんかどうです?

 御者台は除いて、2人掛け座席が左右に2つずつ。室内の前2/3は仮眠スペースでセミダブルの二段ベッドが2台です。詰めれば8人寝られます。後ろ1/3は簡易トイレと倉庫エリアで、飲料水や食料、曳馬の秣が積めます。4頭立てです。

 室内と車外から、屋上も登れまして、屋上は見張台として使えます。」

「いいね、これ。」俺は一発で気に入った。

「お客さん、まだ説明は終わってませんよ。車両の横の壁がですね、こうしてやると…。」

「おお、開くのか!」

「はい。野営に折には重宝かと。

 それから車内への入口の脇のここの台に魔石を置くと、室内に冷暖房が入るんですよ。魔力を流してもいいですよ。」

「こりゃいいね。」フィアとチルに冷暖房をしてもらおうっと。

『『任せて!』』俺の心を読んだフィアとチルが、サムズアップをしながらそう言って来た。笑


 わが妻たちもこの馬車を大いに気に入ったので、この馬車を買うことにした。大金貨6枚なので、なかなかのお値段である。

「旦那様、馬車にお名前を付けて下さいな。」

「え?俺が?うーん…、

 アクアビットでどう?スピリタスは精霊から取ったけど、スピリタスにはお酒の意味もあるだろ?お酒は生命の水って言うからさ、古語で生命の水を意味するアクアビット。」

「あら、素敵。」「とてもいいお名前ですわ。」「ほんとだねぇ。」「わが君は古語にも通じておるのだな。」ちょっと得意になってしまった俺。苦笑


「ところで馬車屋さん、馬も売ってるのか?」

「馬は隣の馬屋でお買い求め下さい。」


 で、隣の店舗に行くと、

「いらっしゃいまし。」

「あれ?馬車屋さん?」

「いえ、兄弟なんですよ。」

「似てるねぇ。って言うより、そっくりじゃないか。」

「三つ子ですから。」

「え?じゃあもうひとりは?」

「隣で馬具屋をやってます。」マジか!笑


 で、馬車屋で購入を決めた4頭立ての馬車を曳く馬を買い求めたのだが、馬の見立てはベスに任せた。

 ベスは念入りに馬たちを見て回って4頭を選び出して来た。

 どれも珍しい毛色で、クリーム色の月毛、黄色掛かった明るい茶色の栗毛、うっすらとピンク掛かった佐目毛、グレーの薄墨毛である。4頭とも牝馬だが、曳馬なので、馬体ががっしりしていて大型だ。すっかり成長したスノウやナイトも、騎馬としては大型の方だが、4頭ともスノウのナイトよりもさらにひと回り大きい。


「お客さん、随分と目利きですねぇ。4頭とも、うちではトップクラスにいい馬ですよ。どれも牝馬ですから、気性もおとなしくて従順です。それに3歳馬ですから若いですしね。長く使えますよ。」馬屋さんがベスに脱帽した。

「うむ。これでも一応、騎士をしていたのでな。」

「はて?王都騎士団の女性騎士は少数ですから、全員存じ上げてるつもりでしたが…。」

「いや、私が所属していたのは北府騎士団だ。」

「え?ではあなた様は、まさか北府騎士団のワルキューレ様で?確か、伯爵家の御令嬢様であらせられますよね?」

「…。」無言で、恥ずかしそうに、鼻の頭をポリポリと掻くベス。かわいい。笑


「え?何それ?ベスったら、僕が名乗る前に、ワルキューレを名乗ってたの?」

「ち、違うぞ。私は名乗ってなどおらぬ。しかし、北府の民が私のことを、そのように呼んでいたのだ。」

「なーんだ。ベス、言ってよー。もう。

 ダーリン、ワルキューレって名乗ったの、僕が最初じゃなかったよ。」

「なっ!ビーチェ、違うと言っておろうが。私が名乗った訳では、断じてないのだぞ。」

「まあまあ、いいじゃない。俺、ワルキューレって呼び方、結構、気に入ってるんだよね。だって、皆にぴったりだもんな。」

「でしょ、でしょー。僕もさー、そう思ってたんだよねー。」

「うふふ、ビーチェったら、調子いいわね。」


 結局この4頭を購入することにした。4頭で大金貨4枚。こちらもかなりいいお値段だ。

 なお、4頭とも牝馬なので、ナイトが喜んでいた。気持ちは分かる。笑


「馬たちの名前は、主様が付けてはどうじゃな?主様は命名のセンスがおありじゃからな。」

「えー?またー?うーん…、

 月毛はカスタード、栗毛はモンブラン、佐目毛はサクラモチ、薄墨毛はゴマアンコでどう?」

「お頭様、それって、全部、スイーツ?」

「そう。皆、スイーツが大好きだろ?」

「「「「「「「…。」」」」」」」

「許してたも。わらわが余計なことを言ったばかりに…。」ドーラが4頭の鼻面を撫でていた。なんでやねんっ!


「馬屋さん、この馬たちは騎乗もできるのか?」

「もちろんですよ。ちゃんと騎乗も曳馬もこなせるように調教してますので。」

「じゃあ、次は馬具屋だな。」

「お前さん、馬具も買うのかい?」

「もちろん。場合によったらだけど、馬車を置いて、騎乗で出ることもあるだろ?ドーラとトーラは変身するからいいって言ってたけど、俺たちは騎乗も練習しとかないとな。」


 で、馬屋で購入した馬4頭の馬具を購入した。鞍、鐙、手綱、頭絡などの通常の騎乗用の馬具に加えて、戦闘時用の馬鎧も購入した。4頭分で大金貨4枚だ。馬の値段並みだが、馬鎧が高かった。

 ちなみに、馬具屋さんも、馬車屋さん、馬屋さんとそっくりだった。流石、三つ子。笑


 結局、この日のお買い上げは大金貨14枚、つまり、白金貨1枚と大金貨4枚である。スピリタスのパーティ資金を大量に使ってしまった訳だが、まあ必要経費だろう。


 4頭にアクアビット号を曳かせて王宮に戻り、その日の午後と翌日は、馬車と騎乗の練習に当てたのだった。


 ところで晩餐会後の俺の失言により、その夜はお預けとなったむふふタイムであるが、翌日からは無事復活した。この間ドーラの発情期もあり、非常に充実した王宮での夜だったのである。

 結局、この5日間で、リーゼとジュヌの魔力量を500上げ、ジュヌはとうとう潜在魔力量の上限に達した。


設定を更新しました。R4/10/9


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ