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精霊の加護107 臣従か同盟かの攻防

精霊の加護

Zu-Y


№107 臣従か同盟かの攻防


 俺たち同盟締結使節団一行は外交馬車2台で、高級宿屋を出て帝宮へと向かった。


 大手門は厳重に警備されている。警備兵たちは敵意むき出しで俺たち一行を睨んで来る。俺が西の塔を倒壊させたことを知っているのだろう。

 まあ予告したしな。


 門の警備隊の前で外交馬車を停めると、同行の役人たちが取次ぎを依頼した。

ひとりが取次に行ったものの、相変わらず警備兵たちは俺たちを睨んでいたので、少し遊んでやることにした。笑


「おい、そこの警備兵。ちょっと来い。」俺を睨み付けていた警備兵たちのひとりを呼び寄せた。

「何か用か?」

「同盟締結の使者にその目付きはなんだ?お前らは戦を望んでいるのか?」

「同盟だと?昨日、お前は西の塔を破壊したではないか!」

「そりゃあ、今日の交渉を有利に進めるためだ。だからケガ人が出ないように予め教えてやっただろ?」

「なんだと?」

「今日話が纏まらなければ、今夜はあの東の蔵を潰す。貴重品があったら運び出しとけよ。」

「いい加減にしろ!」

「その台詞はお前らの皇帝に言えよ。早く王国に恭順しろとな。」

「おのれ!」剣の柄に手を掛けた警備兵だが、抜く前に地面から生えて来た蔓で拘束されて転がった。

「ツリ、よくやった。」『えへへー。』

 ばっと寄って来た他の警備兵たちも、すべて蔓でぐるぐる巻きにしてやった。


 で、俺たちは帝宮の大会議室にいる。

 俺たちは、わが妻たちと精霊たちに役人たちが交渉の席にいる。ゲオルク学校の連中は、控室で待機中だ。

 帝国側は、皇帝、帝太子、第二帝子、エカチェリーナ姫、そして宰相の5名が、交渉の席に着いている。その他は侍従らしい奴らとか衛兵らしき奴らがそこそこいて、皆、直立不動で壁際に立っている。


 まず、宰相が帝国側の5人を紹介したので、それを受けて俺が応じた。

「俺は王国の同盟締結使節団正使、ゲオルク・スピリタス伯爵だ。

 早速だがこちらの要求を告げる。俺の帝国内自由行動権。反王国分子の幹部の引き渡し。エカチェリーナ姫の王国留学。虎林の里の解放および、ホワイトタイガー獣人隊の即時解散と隊員の兵役終了。」


 すぐさま帝国の宰相が反応した。

「待たれよ。正使どの。当初の要求に虎林の里とホワイトタイガー獣人隊のことはなかったはず。」

「ああ、昨日俺が加えた。俺には交渉に関して自由裁量権があるのでな。」

「虎林の里のこともホワイトタイガー獣人隊のことも帝国の内政ゆえ、干渉しないで頂きたい。」

「ホワイトタイガー獣人隊は、わが王国に対しての備えであろう?ならば、同盟する以上、不要ではないか。それに虎林の里はわが妻の郷里。帝国の配下に置かれるは不愉快だ。」


「わが妻だと?

 ん?お前はエカチェリーナの従者のトーラではないか!」

 第二帝子が俺の後ろに控えるトーラに気付いて、問い質して来た。

「ああ、昨日、エカチェリーナ姫より貰い受け、昨夜、わが妻とした。」

 この台詞の意味を悟ったのだろう。エカチェリーナがとても切なそうな顔をして俯いた。

 もちろんトーラとは合意の上だが、エカチェリーナは、俺が無理やり犯ったと思ったに違いない。


「なんだと?」

「第二帝子、お前が余計な小細工をするからだ。妹とその従者を犠牲にして、王国と帝国を戦に引きずり込もうとは、信じられん暴挙だな。」

「どういうことだ?」帝太子が尋ねて来たので、俺は事情を説明した。


「昨日、第二帝子が放った未熟な暗殺者がふたり、俺たちを襲いに来たのだ。もちろんそのふたりは捕らえた。殺してもよかったのだがな、同盟交渉を行う前に決裂させてもいかんので、暴挙を水に流すための代価を要求したのだ。

 こちらの要求通り、トーラを譲り受け、エカチェリーナ姫は王国への留学を承知した。」


 この情報に、帝太子と宰相は驚いていた。一方で、皇帝は無表情。知らなかった情報なら皇帝のポーカーフェイスは流石としか言いようがないが、エカチェリーナから内々に報告が行っていたと言うのが妥当だろうな。

 なお、第二帝子は苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。


 宰相が皇帝とコソコソと会話している。そして宰相が答えた。

「分かりました。姫の王国留学と、虎林の里の解放は受け入れます。ホワイトタイガー獣人隊も解散しましょう。その代わり、帝国内自由行動権はご容赦を。そして、反王国派の処罰はこちらに任せて頂きたい。」


「その要求は呑めない。それから、王国へ連行する反王国派には、第二帝子も入れて頂く。」第二帝子の顔が蒼褪めた。

「それでは交渉になりませんぞ。」宰相がムッとした。

「交渉?そちらがこちらの条件を呑む決心をするだけだと思うが?」

「話にならんな。」皇帝が呟いた。

「そうか。皇帝がそう言うなら、今日の会合はここまでにしよう。まあ、ゆっくり話し合ってくれ。続きは明日。それから今宵は、東の蔵の倒壊にご注意召さるるようにな。」


「待たれよ。」宰相が気色ばんだ。

「何かな?気が変わったのかな?」

「昨夜の西の塔の倒壊は、そなたらの仕業か?」

「われらは宿屋を一歩も出ておらんが?それに昨夜の俺は、トーラを思う存分堪能していたのだがな。」帝国側の連中がギョッとした。俺のこの切り返しを想定していなかったのだろう。笑

「お頭様、言わないで。恥ずかしい。」トーラが俯いた。エカチェリーナが、再び切なそうな顔をしてトーラから眼を逸らした。

「トーラ、今宵もたっぷりかわいがってやるぞ。東の蔵の倒壊まで、俺のせいにされたら堪らんからな。」


「トーラ。」エカチェリーナは目尻に涙を浮かべている、その後、俺をキッと睨んで来た。

「姫、ありがとう。トーラは、大丈夫。」トーラのこのひと言に、エカチェリーナは、ぽろぽろと涙を零した。

 なんか、俺、エカチェリーナから物凄く悪者認定されている気がするんですけど…。


「それではまた明日。」俺たちが席を立つと、

「待たれよ。」また宰相が止めて来たのだが、

「お前、宰相の分際で皇帝の意向を無視するんじゃねぇよ。分を弁えろ。」

 皇帝と宰相が、ぐぐっと歯を噛み締め、帝太子は、なぜか感心した表情をしている。第二帝子はまだ蒼褪めており、エカチェリーナは涙をぬぐっていた。


 俺たち同盟締結使節団は、帝宮を後にして高級宿屋に戻った。

 同盟と言う名目の臣従交渉が纏まらなかったため、早々に交渉を打ち切って宿屋に戻ったから、まだ昼前である。

 お微行で帝都観光でもしてみたいが、同盟締結までは敵対関係ゆえ、そうも行くまいな。


 さて、4つの条件のうち、エカチェリーナの王国留学と、トーラの故郷の虎林の里の自治権回復は取り付けた。トーラに関する条件は俺が加えたものだから、王太子殿下からの3条件については、ひとつしか達成できていない。

 残る条件は、俺の帝国内自由行動権と、反王国派幹部の引き渡しである。


 今宵、東の蔵を倒壊させたら、言うことを聞くだろうか?それとも明日は帝宮内で暴れてやろうか?

 今日、反王国派幹部の引き渡しについて、第二帝子も加えるようにと、ハードルを上げてやった。第二帝子はエカチェリーナとトーラを捨て駒にして仕掛けて来た訳だから、許す訳にはいかない。

 ハードルを上げたことで容易に合意できなくなった訳だから、ひと晩にひとつずつ倒壊させる建物の数が増えることになる。そうすると皇帝の威信は落ちるし、帝都の民へのプレッシャーも大きくなる。


 一方で、とっとと同盟を締結して、帝国内にいると言う闇の精霊を探しに行きたいと言うのも本音だ。帝国内自由行動権だけでも得られれば、反王国幹部の引き渡しは帝国内の行動を終えてからでもいい。教国のときもそうだったしな。

 あれこれ考えている間に、昼餉の準備が整った。


 昼餉には、ゲオルク学校も呼んだ。役人たちは呼ばなかったがな。

「帝都はどうだ?」

「んー、護衛で帝宮に行く以外は外出できないんで何とも言えないっすね。」ま、そうだわな。

「なんか、こう、ちょっとは外出したいかなって思いますね。

 なあ、皆。」

 ホルヘの問い掛けに、残りの4人が頷く。

「同盟が締結出来たら外出制限もなくなると思うぞ。」

「そう言えば、なんですぐに同盟締結にならなかったんすか?」

「条件が合わないんだ。互いの要求が対立しててさ、摺り寄せ中なんだよ。」

「師匠、一発、ぶち込んじゃえば?」

「おいおい、話し合いに来てるのに、そんな乱暴なこと言うなよ。」

 それを聞いたわが妻たちが、ぷっと吹き出した。苦笑


「そう言えば、トーラさんって、帝国の姫さんの従者さんですよね?ここんとこ、ずっと師匠んとこに詰めてますけど、つなぎ役で来てるんすか?」

 アルフォンソの問い掛けに、トーラがこっちを見る。

「いや、俺の従者として貰い受けて、わが妻に加えた。」

「「「「「はあ?」」」」」

「いやいや、師匠、それはちょっとヤバいんじゃないですか?」ホルヘが突っ込んで来た。こいつ、真面目だしな。

「なんで?」俺はホルヘに聞き返す。

「いや、なんでって…、流石に昨日の今日でそれは…。」


「トーラがさ、従者だからって、いちいち遠慮してたんだよ。食事も一緒に摂ろうとしなかったんだぜ。でな、だったら妻に加えりゃ、遠慮しなくなるんじゃないかって思ってな。」

「「「そんな理由?」」」マチルダとレベッカとルイーザがハモった。

「それだけじゃないよ。ロリ巨乳のトーラは俺の好みにどストライクだったし。」

 トーラが赤くなった。笑


「しっかし、師匠も龍人のドーラさんに、獣人のトーラさんって、守備範囲が広いっすね。」

「何言ってるんだ?人と変わらんぞ。ドーラは角があるだけだし、トーラは耳と尻尾はもふもふでな、手触りが堪らんのだ!」

「まじっすか?」

「そのうちエルフとかドワーフとかにもちょっかい出しそう。」

 ジト目のゲオルク学校とは対照的に、笑いを堪えるわが妻たちなのであった。


 昼餉の後、ゲオルク学校が部屋から出て行ってしばらく経ってから、ノックの音がした。

「スピリタス卿、よろしいですか?」

 役人たちがぞろぞろとやって来たので、俺はスイートルームのひと部屋に、役人たちを招き入れた。


「で、何かな?」

「今日の交渉ですが、あれでは纏まるものも、纏まらないかと。」

「ほう。どう言うことかな?」

「反王国派幹部の引渡しですが、第二帝子を名指ししたためハードルが高くなってしまいました。」

「そうだな。あっさり承諾されても困るからな。」

「どういうことです?」

「帝宮を半分くらいは倒壊させたいのさ。皇帝の威信を落とし、帝都の民にプレッシャーを与えるためにな。」

「なるほど。」「妙手。」「そう言うことか。」役人たちが口々に感想を漏らす。


「第二帝子を条件に付けてハードルを上げたから、帝国が一番譲れない条件は反王国派幹部の引渡しになっただろ?そうするとさ、次に譲歩して来るのは帝国内自由行動権だよな。俺としてはとっとと同盟を締結して、帝国内を回りたいんだよ。」

「では、帝国内自由行動権を承諾したら、反王国派幹部の引渡しは譲歩して、同盟を締結されるんですか?」

「いや、俺が帝国内の行動を終えるまでに、第二帝子以下、反王国派幹部を捕えておくと言う付帯条件を付けるのさ。」

「なるほど。」

「この条件を呑むまでに数日掛かろうな。その間に帝宮の建物もいくつか潰せるだろ。」

「分かりました。そこまでお考えとは、感服致しました。」

 役人たちは納得してスイートルームから出て行った。


 午後は、わが妻たちとむふふタイムだ。

 昨日、トーラとの初夜と言うことで遠慮してくれたわが妻たちを、取っ替え引っ替え、お礼と称して大サービスをしたのだった。当然、魔力上限まで到達していないリーゼ、ジュヌ、カルメンの上限を100ずつ上げた。


 最後に発情期のトーラとは最後まで行った。

 ホワイトタイガーで獣人のトーラと、エンシェントドラゴンで龍人のドーラは、俺の子種を望んでいるから、生でいい。妊娠したら里に帰って子を産むのだそうだ。

 ちなみに龍人は遺伝子が強いため、人と交わっても生まれるのはドラゴンだそうだ。獣人は人とのハーフが産まれるらしい。

 どちらも人とは種族が違うので、人との間に子供はできにくい。


 わが妻たちとの情事は夕刻まで続いた。だって7人だもんな。笑


設定を更新しました。R4/8/28


更新は火木土の週3日ペースを予定しています。


2作品同時発表です。

「射手の統領」も、合わせてよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n2002hk/


カクヨム様、アルファポリス様にも投稿します。


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