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魔王の真実

文字数だけは膨らんだ感

「ふー、美味かった」

「相変わらずイガラシの料理は絶品だな。全く見た目によらないというかなんというか……」


 うん、それ分かる。


「本当じゃのう。人は見かけによらんとは正にこのことじゃの」

「うるせえな! 文句言ってやがると二度とつくらねえからな!!」


 あ、怒った。いや別に文句はないんですよ? 料理は美味しいんだし。


「サニー、調子はどうだ?」

「あ、はい。少し落ち着きました。大丈夫です。」


 まだ少し顔色が悪いようだが、本人がそう言うのならまだマシか。無理してるだけかもしれないが。


「分かった。すまないが少しの我慢だ。急ぐ必要もないけど、あんまりゆっくりしてる場合でもないからな」

「はい、分かってます先生」


 出来ればシャル達のところに戻してやりたいが、流石にそんな時間はないからな。


「大丈夫じゃ。サニーちゃんはワシが守るでの。お主らは存分に戦うがいい」

「ああ、頼んだよ爺さん」


 そうと決まればあとはやるだけだ。


「よし、じゃあアラン、イガさん、サニー、爺さん、俺の順番で行こう」

「全く、コウはまた一番後ろか。あの時を思い出すな」


 そうだな、確か前に来たときもアランを先頭にして、俺が一番後ろだったもんな。


「いや別に怖いからとかじゃないぞ? あの時もそうだったけど……」

「分かってるさ。奇襲を受けるとすれば後ろだからな。コウがいてくれた方が万が一の時も安心出来る」


 説明は不要だったようだ。いや、説明するのもちょっと恥ずかしいから助かるけどね。


「さあ、それじゃ最後だ。みんな、気を引き締めていこうか」

「おうよ、やっと暴れられんぜ」

「ああ、これで最後にしよう」


 別に俺達は世界を救うためにここまで来たんじゃない。自分の家族と、仲間と、そして子供らの未来のために。


 --アランがその扉を開く。


 目の前には何もない、ただ広い空間。そして奥には玉座。以前はヴィエラがあそこに座って、俺達を迎えたんだよな。


 だが、今俺達の目の前で座っているそれはもちろんヴィエラではない。そして。


 --フラッグじゃ、ない?


「フン、やっと来たか人間ども。あの方が気にしていると聞いて、どんな奴等かと思えばなんのことはない。ただのガキどもではないか」

「そういうお前は誰だ? フラッグのクソ野郎はどこにいる」


 恐らくは魔族。玉座に腰かけているということは、アイツが今の魔王なんだろう。


「あの方をクソ呼ばわりとは、威勢だけは良いらしい。喜べ、あの方の手を煩わせる必要もない。私が貴様らを葬ってやろう」

「ハッ! 偉そうなのはどっちだこの鱗野郎が。テメェみたいな雑魚に用はねえ。とっとと失せろ」


 イガさんが魔王を挑発する。うーん、この人に口で勝つのって難しいよなぁ。大体相手が怒るだろうけど。


「良かろう。ならば希望通り殺してやろう」


 そう言って魔王が玉座から腰を上げようとして--


「随分偉くなったもんじゃの。ガロンよ」


 魔王がビクッと腰を上げようとした体制で止まる。


「そのお声は……まさか、まさか!?」

「そのまさかじゃよ。全く、堕神なんぞに見入られおってからに。どうせ安易な力に惹かれたんじゃろうが。バカもんが」


 レイン爺さんが魔王を説教してる。しかも魔王は立とうとした体勢のままだから、腰が引けたような変な格好になっている。


「……貴方には分かりますまい。最強の剣士であった貴方には。私の息子達も相変わらず貴方を目指すと言って聞かないのです。父である私には見向きもせず、ね」

「ダロンとバロンか……誰に憧れるかは子供の勝手じゃろう。親はその生き様で子らを導いて行けば良い。じゃが今の貴様にその資格はなかろう。堕神の力を譲り受け、仮初めの魔王となった、今の貴様には、の」


 あらやだ手厳しい。しかしそうか、あのガロンとかいう魔族はフラッグから力を与えられて魔王になったってことか。元々を知らないからよく分からんけど。


「仮初め……なら、ならば何故っ!! ヴィエラを、あの娘を次期魔王に!! 貴方の側近として仕えて来た私ではなく、何故あの娘だったのですか!?」


 ガロンが声を荒げる。あー、さっき爺さんが言ってた頭の固い側近ってコイツのことか。確かにクソ真面目そうだ。


「貴様を魔王になんぞしたら人間を滅ぼそうとするじゃろう。ヴィエラにはそれがなかった。ただそれだけのことじゃよ」

「理解出来ませぬ……何故魔族が人間を滅ぼそうとしてはならぬのですか!!」


 確かに、これは爺さんの言ってることの方がおかしいような気がする。あくまで魔族側の視点だったら、ってことだけど。


「ふん、結局肝心なことは何も聞いてはおらんようじゃの。フラッグよ。いい加減姿を現せ。どうせ近くで聞いとるんじゃろう?」


 爺さんが虚空に向かって声をかける。


「もー、全くレインは余計なこと喋りすぎだよ。何も言わずに殺しあえば良かったのにー」

「相変わらずクソみたいな奴じゃの。ワシら全員の共通認識じゃろうが」


 ですよね。アイツクソ、マジでクソ。


「貴様、魔王になるものには真実を話していたはずじゃろう。そもそも貴様が介入するのはバランスが崩れかけた時だけだったはずじゃ。何故今、ガロンを魔王に仕立て上げ、人間を滅ぼそうとさせた。答えろ堕神よ」

「真実……レイン様、それはどういう……」


 いや、敵に様つけちゃダメでしょうガロンさん。


「んー、もうめんどくさいしいいかなって。ボクもいい加減疲れたんだよ。この世界を維持するのもね」

「やっぱお前クソだな」


 思わず口を挟んでしまった。だってアイツ腹立つもの。


「この数百年間、ただ表に出ることもなく、バランスを保ってきたけどさ。ほら、誰もボクのことなんて見やしない。ちょうど退屈で死にそうだったところに、ようやくボクを滅ぼしかねない存在が出てきてくれた。そのおかげで吹っ切れたんだよ。最後くらい楽しませてもらおうってね」

「つまりなんだ、ボウズと戦うのが楽しいからなりふり構わなくなったってか?」


 うわめっちゃ最悪な理由だった!!


「じゃからガロンには真実を伝えず、人間を滅ぼそうとさせたと?」

「正確には人間が滅ぼうが、魔族が滅ぼうがどっちでもよかったんだけどねー。ただ単にガロン君がそういう思考の持ち主だっただけだからね」


 ガロン立場ないなこれ。なんかたまたま選ばれた感が半端ない。


「で、真実ってのは一体なんなんだ?」

「そ、そうですレイン様、一体その真実とはなんなのですか!」


 勇者と魔王が揃って同じことを質問する。なんだこれ、またこのノリなのか?


「ふむ、いいじゃろ。ワシが話そう」


 一呼吸置いて、爺さんが話し始める。


「ちょうどここには魔族と人間がおる。じゃから双方に理解出来るじゃろうが、ワシら生物は魔素を取り込み、魔法を使用している。それは誰しも理解出来ることじゃな?」


 一同が頷く。


「そして魔法として使用された魔素は生物の魔力器官と反応し、魔精素と呼ばれる精霊のエネルギー源に変換されるんじゃ。魔法は魔精素を目当てに集まってくる精霊が、魔素を取り込んだ生物に協力し、魔精素を発生させるための取引みたいなもんじゃからの。お互いの利害が一致した結果、と言うところじゃろう」


 そういえばビゼンがそんなこと言ってたな。確か砂はウ○コとも言ってたか。


「精霊は空腹になればなるほど、なりふり構わなくなる。それこそ人や魔族を直接喰らうほどにの」

「直接……ということはまさか……!?」


 ガロンが驚き、声を上げる。まあこれって要はそういうことだよなぁ……


「うむ、もう感付いてはいるじゃろうが、魔精素を取り込めんかった精霊のなれの果てが、魔物じゃよ。じゃからほれ、魔物からとれる皮や骨には魔力が宿っていることがあるじゃろう? あれは元々精霊だったことの表れじゃよ」


 そういや確かに、ベヒモスの外皮が異様に硬かったのもそういうことなんだろうか。原理はよく分からんけど。


「人間にしろ、魔族にしろ、お互いがお互いを殺し続ければ、その絶対数は減少していく。そうなれば魔精素を作り出す素体がどんどん減っていくことによって、魔物と堕ちる精霊は今よりも増えるじゃろう」

「しかし!! 魔物が増えるだけであれば魔族にとっては有益ではありませんか!!」


 うん、確かに人間にとってはいい迷惑だけどな。


「話は最後まで聞けい。魔物が増えるだけであればまだいい。じゃがもうひとつ、魔素を取り込む素体がなくなるということは、魔素が永遠に増え続けるということになる。魔素が発生する原因はよく分かっておらんがな。恐らくこれは木々などの自然に由来するものじゃろうとは思うておる」

「大体合ってるよー。続けて続けて」


 フラッグが爺さんを煽る。あいつうぜえ。


「今は人間、魔族ともに戦うことにより、あるいは日常の生活において魔法を使用し、魔素を消化しきれているから良い。じゃがそれが消化しきれんようになった時、魔素が世界に充満し、暴発すると聞いておる」


 うわぁ……魔力爆発(マテリアルバースト)って本当にあるのか……


「魔族に比べ、人間の繁殖力は凄いからの。そうそう滅びることはないじゃろうが、それでも魔族が本気で滅ぼそうとすれば可能かもしれぬ。ここにいるコウ達のような存在がいればそうとは限らんがの」


 でもこの話ってアレだよな。要は魔族側が人間を間引いてるっていうか……


「人間側から聞けば気持ちの良い話ではないじゃろう。じゃがの、これが真実じゃ。フラッグめは再び神となるために、魔素の状況を見ながら魔族と人間の調整をするために、時には魔族に味方し、時には人間の味方をする、いわば調律者じゃの。性格はクソ極まりないが、残念ながら世界はこやつに守られていたと言っても過言ではない。もっとも、今までは、じゃが」


 つまり今は責任放棄して好き放題やってる破壊神に過ぎない、と。


「さて、説明は十分じゃろう。ガロンよ、これでもフラッグに与するか?」

「レイン様……」


 今すっごい複雑な気持ちだろうな、人間を滅ぼそうと思ったら初代魔王に人間滅ぼしちゃダメ! って言われてるんだし。


「レイン様……話は理解致しました。が、私も所詮は俗物。このままでは下がれませぬ」

「ふむ、そうか、ならば」


 本当に頭固いなあの魔族。気持ちはわかるけどさ。


「いや、俺が相手になろう」

「アラン?」


 アランが爺さんの前に出る。またなんで?


「レインさんはフラッグと戦ったことがあるんだろう? だったらコウの力になってやって欲しい。露払いは俺に任せてくれ」

「しかし、のう」

「それに」


 爺さんが何か言おうとしたところにアランが口を挟む。


「魔王の相手は勇者に決まってる、だろ?」

「アラン……そうか」


 アランは勇者だ、と。それを言い続けていたのは俺だったな。


「ならやっぱり俺なんだよ。レインさんは昔の側近を斬る必要なんてない。ここは俺に任せてくれ」

「ふん、貴様が勇者だと? ならば」


 二人が剣を抜き放つ。どちらも流れるように、自然な動作で。


 ーーギィンッ! という鋼と鋼がぶつかる音が部屋に響き渡る。


「行くぞ魔王!!」

「来い!! 勇者よ!!」


 最終決戦の火蓋が今、切って落とされた。


ようやくこっからラストスパートー

なんか文章面白くなくなったとかは遠慮なく感想へどうぞ。

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