勇者VS魔王 前編
さて、ちょっと改行少な目にしてみました。どっちが読みやすいのかなぁ。
目の前で激しい剣戟が繰り広げられている。
--勇者VS魔王
正しく最終決戦といった様相だが、なんだろう。初代魔王、二代目魔王が身内にいるからか、そこまで緊張感がないと言えばそうかもしれない。
俺達にとって倒すべき相手はフラッグだ。これは全員の共通認識として間違いない。
だから、と言うのもなんとも失礼な話だが、さっきの話もあって前哨戦のような雰囲気になってしまうのも無理はないだろう。
当然当人達からすれば相手はどちらにとっても強敵には違いない。
アランは俺達の、何より自分の愛する妻の子の未来のために負けるわけにはいかない。正に決死の覚悟で挑んでいると言えるだろう。
けれど相対する魔王、ガロンはどうだろうか?
フラッグに騙され、尊敬する初代魔王であるレインは既にこちらの陣営にいる。
更には自分の知らなかった真実を知らされ、実質魔王の役割を知らないまま、ただ肩書きだけがついてしまった様な状態だ。
正直に感想を言えば、もうやけになってるとしか思えない。もはやフラッグに忠誠を誓う理由もないし、かといってこちらの陣営に下るワケにもいかないだろうし。
この戦いの意味はあるんだろうか。どうしてもそんなことを考えてしまう。
「風刃!!」
「そのような児戯、私には通用せんわ!!」
そんな失礼なことを考えている最中ではあるが、やはり当人達は全力で戦っている。
今もアランの風刃を剣で弾き飛ばしたガロンが反撃をしようとアランに向かっていく。つかあれ弾き返せんのか。
見ているところでは、実力ではほぼ互角。流石にスピードではアランが勝っていると思う。ファルコの加護もあるし。
対してガロンはパワー、魔力ともに上と言ったところか。まあ当たらなければどうということはないわけですよ。
徐々にアランがスピードを上げていく。時々残像が見えているような気がするのは、きっと俺の気のせいじゃないだろう。
というかほとんど見えない。そういえばアランが自分の師匠のところで修行してくると別れてから、アイツの本気を見るのは初めてか。
恐らく魔王城までの道中では全員本気なんて出してなかっただろうし。
「イガさん、アランの動き見える?」
「見える。が、見えたところで反応が間に合うかはわかんねえな。あの野郎前からはええとは思っちゃいたが、また速くなってやがる」
と、イガさんでも対処が難しいことを匂わせるコメントである。ということはガロンの実力もかくや、と言うことか。
「まあある程度動きを先読みして対処するしかねえだろうな。勝てるかどうかはやってみなけりゃわかんねえ」
いや、別に勝敗までは聞いてないんですけどね。
ただアランのあの速度はファルコの加護あってのものなのは間違いない。ということは身体に魔力を纏っているわけだから、上手く魔力の流れを感知することが出来れば、目で見えなくても対処は可能だろう。
とは言え、先ほどイガさんが言っていたように、見えたからと言って反応が追い付くかは別問題だ。それに魔力感知なんてそれなりに魔法が得意な人であれば自然と出来るようになるが、あえてそれを鍛えようという人はそうそういないんじゃないだろうか。
魔力感知イコール魔素の流れなわけだし、「あ、コイツ大量に魔素取り込み始めたな」と思ったら大きい魔法が来ることくらいは容易に推測出来る。
だけど魔素を身体に纏わせるという発想は一部にしか浸透していないだろうし、ほとんどの魔法使いが放出を重視している。だからこの世界においては、魔素の流れを読む技術はそれほど重要じゃない。
と、思っていたからきっと死ぬ前の俺は中級魔法師止まりだったんだろうな。
ビゼンと正式に契約してからというもの、かなり魔素の流れには敏感になった。
特に精霊という存在を知ってからは、どれくらい魔素を取り込んで、どの精霊が寄って来るのか、である程度使う魔法の規模、属性が分かるようになっていた。
元々精霊は目に見えない存在だから、これはあくまで俺の例えからだが、簡単に言えば精霊の属性によって色がある。
炎なら赤、水なら青……と、まあお約束ではあるんだけども。
なので今アランを纏っている魔力は緑、風属性だ。しかもファルコのおかげか、緑と言っても限りなくエメラルドに近い、そりゃもう綺麗な色である。
対してガロンの魔力は黒。闇だな。まあ魔族だから当然っちゃ当然なんだろうが、こっちの色はドス黒い。
それにアランの魔力は身体を覆うという表現がピッタリだが、ガロンの魔力は内側から漏れ出ているような感じで、魔力維持の精度は明らかにアランの方が上だろう。
だが魔力自体の量はガロンの方が上、となればある程度無駄があってもそれほど影響はないのかもしれない。
「ファルコ、暴風剣!」
おや、初めて見る魔法だな。というかアランの魔法はもはや技と言った方がいいか。
勇者と呼ばれ続けているが、見も蓋もない言い方をしてしまえば、勇者とは肩書き、役職に過ぎない。
アランの本質としては魔法剣士と呼ぶべきだろう。いや、アクリスには魔法剣士なんてクラスはないから、便宜上呼ぶのであれば、だけど。
アランの持つ魔剣ファルコンを風が覆う。そしてそのまま維綺麗に維持され……いや違うな、あれ綺麗に維持なんてしてないぞ。
めちゃくちゃ凝縮して剣に纏わせたなアレ。今までのアランからはちょっと想像つかない荒業だ。
「フン、ならばこちらもだ。暗黒剣」
まんまだった。いや、別に捻りが欲しかったわけではないんだけど。
しかもこっちは魔力垂れ流し、もうなんか刀身見えないくらいまで真っ黒な魔力が剣を握る手から吹き出している。
さてどちらが上か……
双方の魔力を纏わせた剣が交差する。
と、同時にアランの持つファルコンが爆発したかのように風の魔力を炸裂させ、周囲に無数の真空刃を生み出した。あそこに近付いたら一瞬で細切れになってしまうことは間違いない。
だがガロンは身体に擦り傷こそ出来ていたものの、闇の魔力で周囲の魔力を減衰させ、自分への影響を少なくしたようだ。
これは闇属性の特性の賜物だと思う。多分他の属性だったら今ので勝負がついてたかもしれないな。
「チッ、今のが防がれたか」
「なかなかやるが、あの程度では私を倒せるなどと思わないことだな」
珍しくアランが舌打ちをする。あまり見たことがないが、それだけ余裕がないということか。
それとも本気を出す機会がなかっただけで、これがアランの本質なのかもしれない。
「心配するな。まだまだとっておきはたくさんあるさ」
「出し惜しみして私に勝てるなどと思うな!」
二人の戦いは徐々に激しさを増していく。
ついでに言うと既に肉眼では動きが捉えられなくなっていたので、魔力の流れで動きを把握することにしました。見えないもんは仕方ないよね!!
なんだかんだでもうすぐ100話なのか。
とは言っても文字数がまちまちだから意味あるのかはアレですが。




